49 逆探知
『もう数十年も前の話だ。一人の狂った魔術師が魔人を呼び出す為に大規模な火災を起こした。己の家族までも燃やし、その外道な召喚が成功したかどうかは記録に残ってない。いや、建物もその周辺もなにも残されていなかった、全てが灰になっていた』
俺はエコーとモーゼス、少佐、そして薔薇とザフラに向かって言う。
「敵は分かったが彼らの居場所が分からない」
俺の問いに対してモーゼスが彼に任せるようにと答える。
「エコーのお嬢ちゃんには範囲は劣るが、俺も探知魔術を使える。まぁ、俺のは魔術の逆探知だがな」
モーゼスは俺と少佐にグールの遺灰を集めるように言う。
そしてエコーの水と大きな器を調達するように頼む。
そしてモーゼスはそこら辺から、小さな木の枝を二つ程調達する。
それらの準備が整うとモーゼスは魔術の準備に入る。
「あり合わせの物しかねぇが、まぁ、なんとかなるだろう」
モーゼスはエコーが調達した水の入った大きなバケツにグールの遺灰を入れてかき混ぜる。
そしてその水に適当に小さな木の枝を落とす。
木の枝は水に浮かび不思議な動きを見せ、水の中央まで動くと十字の様に重なる。
それからその十字の形をした木の枝がグルグルと回転し始める。
俺はその古い術を見ると思わず感想をこぼす。
「古い技だ。呪いの探知の術だな?」
「俺の専門分野じゃねぇ、だから精度は期待するなよ」
「なら補佐官の出番だな。いや、そうだな」
俺は少佐を近くに呼び寄せる。
少佐は突然呼ばれて困惑を示す。
俺は少佐に魔術の手解きをする。
「少佐は戦場では敵の探知に長けてると聞く」
「ええ、まぁ。でも魔術に関しては素人ですよ」
「魔術とはなんだ?少佐」
俺の問いに少佐が暫く考える姿勢に入る。
そして彼なりに一つの結論に至る。
俺はその答えを聞く。
「エネルギーの操作、でしょうか?」
「ああ。その通りだ。これをあそこに。あれをこちらに。エネルギーの移動と変化が主だ」
「そんな事は自分には出来ませんよ、ヨエル殿」
「人間は誰しもが出来る。意識的に行うか、無意識に行ってるかだ。その違いが魔術師かどうかの違いだ」
俺は水を少し汲むと少佐の手に溢し、濡らす。
そして彼に目を閉じ、集中するように伝える。
それから詠唱に入る。
『ジブリール、あるいはガブリエル。
貴方の名を冠する者に力を貸してくれ。
我が子を守ってくれ。
我が子の敵を示せ。
汝の力を今一度、ここに!』
俺が詠唱を唱え終わると少佐の肩が飛び上がる。
そして少佐の頭の中に一つのヴィジョンが浮かぶ。
彼は困惑しながらもその映像を口にする。
「黒いマントに、髑髏のマーク、老人が見えます。…高い所に居ます。」
「周りにはなにが見える?」
「うっ…頭が痛む!寒気もします!」
「集中しろ!その力を振り払え!」
「死を感じます!悪意が、押し寄せてくる!」
「それはお前の物じゃない!飲み込まれるな!」
少佐は感じた事のない負の感情に心を乱される。
ここでザフラが少佐に向かって言う。
「その負の感情はこの街に向けられているわ、ジブリール。貴方が頼りなのよ。貴方が街を守るのよ」
その言葉を聞いた少佐はルビーの首飾りをぎゅっと握り締める。
そして深呼吸を始める。
「もう、大丈夫です。…周りにはハイタワー、オメガビル、聖堂が見えます」
「よくやった、少佐。さぁ、戻ってこい」
俺が少佐の肩を叩くと彼はトランス状態から戻ってくる。
彼は少しばかり息が上がっている。
モーゼスも己の部下を褒める。
「おう、少佐!やるじゃねぇか!そんなもんが出来るなら戦場でも楽が出来たのによ」
「無茶言わないでくださいよ、大佐」
初めての魔術にしては上出来だ。
これで敵のおおよその居場所は分かった。
反撃開始だ。




