47 推測
『今回の首謀者は裏稼業の人間を雇い、街の人々を誘拐させた。それはグールの召喚を隠すための行いだとモーゼスが推測する。しかし、何の為だ?グールを使い、何をしたいのだ?街を混乱に陥れ、何を為したい?色々考えを巡らせても答えは未だに出ないままである』
強い憤怒を見せるモーゼスに少佐が言う。
「大佐、私も同感ですが、未だに敵の正体も目的も不明です」
「ああ。グールを使ってなにがしてぇんだ?」
流石のモーゼスも敵の正体が分からないでいた。
そこで薔薇がモーゼスに問いかける。
「モーゼス殿。何故、今回の件に敵はわざわざグールを選んだ?」
「それが分かれば苦労しねぇよ」
「では視点を変えてみてはどうだ?」
薔薇が聞く。
何故グールじゃなければ行けなかったのか?
グールの生態、本能行動はいかなるものか?
その質問にモーゼスは答える。
「そりゃあ、人を攫い、喰らい、成り代わるんだろ?」
「そうだ。しかも誰にもバレずに、だ」
「バレずに行動出来る神秘を利用し、しかも裏の人間を使い陽動までしやがった」
「その通りだ。軍はその作戦をどう解釈する?」
「囮を使い、本命の部隊を暗躍させ、紛れ込ませる。しかも現地調達で人員の補給まで行う」
自分の中にある戦の記憶を遡り、モーゼスは一つの結論を出す。
それはゲリラ達の戦いだと。
薔薇は頷き、続ける。
「それではゲリラの目的はどういったものだ?」
「そりゃあ色々あるが、主に大きな勢力に抵抗するための手段だ」
「然り。それではこの街で神秘を使い、混乱、あるいは陥れたい者にとっての一番脅威となる戦力は?」
「くそったれ、神秘協会が目的か!」
薔薇は静かに頷く。
やはり、咳き込む薔薇ではあったが、モーゼスの推理に満足そうな表情を示す。
一方、モーゼスは薔薇の考え方に称賛を贈る。
「戦略眼まであるのかよ。暗殺者にしておくには勿体ねぇ男だ」
「それは褒め言葉として受け取っておこう」
「ああ、紛れもねぇ褒め言葉だ」
俺は薔薇の頭脳を称賛したい気持ちと共に神秘協会が狙われてる事に強い危機感を覚える。
何故、もっと早く敵の狙いに気付くことが出来なかったのか。
自責の念が押し寄せてくる。
そんな苦しそうな顔をする俺に薔薇は告げる。
「己を責めるな、ヨエル殿。男は自分の行動に後悔をしてはいけない」
俺もあるイフリーターにそう言われた事があると薔薇は言う。
後悔するよりも出来る事をすべきだとも言う。
薔薇は炎を纏う男にしては何処までも冷静に状況を分析する。
「さぁ、ヨエル殿。彼を知り己を知れば、百戦して殆からず、だ」
「古い言葉を知っているな、薔薇よ」
「知識は場所を取らないからな。して、己の番だ。神秘協会に恨みを持つ者は?」
神秘協会に恨みを持つ者か。
数え出したらキリがない。
それなのに俺の頭を一つの出来事が過ぎる。
少し前に相対した連中の事だ。
俺は一つの名を薔薇に告げる。
「メメント・モリ」
「死を崇拝するという集団か」
「ああ。少し前に彼らがとある屋敷で違法な神秘の召喚を行っているのを阻止した」
「なるほど、動機は充分だな」
薔薇の助力のお陰で敵の予想が付いた。
俺は薔薇と、彼を派遣してくれたハサンに対して大きな感謝の念を覚える。
しかしそんな俺に対して薔薇は告げる。
「この場に誰一人欠けていても駄目だっただろう。感謝ならマザーという者にすると良い」
全ての出会いは彼女から始まっているのだからと薔薇は言う。
「恐ろしさすら覚える能力だ。だからこそ彼女を狙う者は多いだろう」
「彼女には使命がある。彼女を危険に晒すわけにはいかない」
「ああ、善い行いをすれば悪から狙われる」
それが人の世だ。
其の為に暗殺教団が生まれたのだと薔薇は静かに告げるのであった。




