42 制御
『魔人の力と己の信仰を組み合わせる事によりエコーは黒神の力に目覚めた。その力は強大の一言に尽きる。しかし、性格、態度が豹変したのは神の力ではなくあの魔人の素質のせいだろう。一瞬でもザフラに好意を覚えた自分が愚かに感じる』
俺が険しい顔付きで煙草をふかしているとエコーが馬鹿なことを口走る。
「何を苛立ってるのですか?もしかしてヤキモチですか?もしかしてヨエルもして欲しいですか?」
異常な程にご機嫌なエコーが俺の顔に手を添えようとするが、俺はその手を払う。
「今度やったらその腕を切り落とすぞ」
「若い子のアプローチに対してオトナ気ないですね?」
俺の警告にエコーはふざけて見せる。
ザフラはそれをニヤニヤとした顔で見つめ、薔薇は何時ものように無愛想に傍観していた。
俺は一層深く煙草を吸うと地面に投げ捨て、足で煙草を踏み潰して火を消す。
これからの展開によってはこの煙草みたくあの魔人の火を消し潰してやろうかという考えが脳裏をよぎる。
そんな俺の敵意を感じ取ったザフラが獰猛な笑顔を向けて俺に挑発を行う。
「出来ない事を考えるもんじゃないわよ?」
「出来ないかどうか、試してみるか?魔人」
ザフラは残った腕で小さな火球を創り出し、俺に向けて放つ。
害意の籠もったそれを俺は正面から向き合い、人には理解出来ない言葉で迎え撃つ。
「■■■■■」
俺が素早くそれを唱えると魔人の火球は跡形も無く消滅する。
ザフラは酷く驚き、何時ものふざけた態度をやめる。
「お前…なるほどね、厄介だわ」
「察したか?言うまでもないだろうが、一度だけ忠告をしよう。俺の正体を口にすればお前は滅ぶ」
「ふん、そんな野暮な事はしないわよ?階級を聞いても?」
「駄目だ」
俺はザフラの追求をきっぱりと断つ。
それから俺はエコーに向かって忠告をする。
「神の力は偉大だ。そしてその魔人の影響も強大だろう。しかし自分を見失うな、エコーよ」
「ヨエル…」
「力が欲しいのだろう?ならば使いこなして見せてくれ」
俺がそう言うとエコーは膝を付いて己が神に祈り始める。
『偉大なる黒き神よ。
その星々が人の世を照らすようにこの貴方の娘の
行く道も照らしてください。
この火が私欲の為ではなく人々の助けとなるよう
に導いてください。
それは貴方が示した御手本なのだから』
祈り終わるとエコーの腕を支配していた黒き力が消える。
過ぎた力は要らない。
自分と周りを救えるだけの火を彼女が求めたのだ。
顔の月の模様は消えていないが、神の力と魔人の影響はこれで多少は軽減出来たのだろう。
エコーは先程の自分の態度を改める。
「すいません。もう大丈夫です」
「それは助かる。お前に接吻されたら俺がジョナサンに殺されてしまう」
「アハハ、パパならありえますね!」
取り敢えずこれで何時もエコーに戻った。
ザフラは残念そうにそれを見つめているが、知った事ではない。
俺はいい加減にモーゼス達の所へ向かうように促す。
ここからはそう遠くない、急いで向かおう。




