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35 エルダーグール

『俺達は一体のグールの討伐に成功した。残念ながら被害者は出てしまっていたが、更なる被害者が出るのは止められただろう。しかし、今回はグールの持つ危険性を再認識出来た。彼らは厄介だ。事前に彼らの存在を認識出来たのは良かった。我が友ハサンに感謝をしなくてはならないな』


食堂を出ると一人の老人がエコーのバイクを興味深そうに観察をしていた。

エコーがその老人に言葉をかける。


「こんにちは。どうしましたか?」

「こんにちは。良いバイクですね」

「お爺さんはバイク好きなんですか?」


老人はうんうんと頷く。

それからエコーの機械腕をじーっと眺める。


「お嬢さん、素敵な腕ですね。強そうだ」

「へへ、自信作です。とても強いですよ!」

「成る程!それは厄介ですね」


エコーがえ?と呆気に取られる。

老人はエコーの機械腕を握ると素早く呪文を唱える。

するとエコーの機械腕がバラバラに分解される。


「良し。これで多少はやりやすくなったね」


老人はニコッと笑うとエコーの胸元を掴み、力任せにエコーを投げる。

エコーはそのまま食堂の外壁に打ち当てられる。

背中を強く打った彼女は苦しそうな表情を浮かべる。


「エコー!」


俺は素早く彼女の元に駆ける。

しかし老人はまたもや呪文を唱え、俺に向かって火炎玉を発射する。

俺はうずくまっているエコーを抱えるとその場から大きく跳躍する。

俺達の居た場所に火炎玉が飛来すると大きな爆発が起き、食堂の外壁に大きな穴ができる。


「グールか!その魔術の行使の速さ、上位種か?」

「君達はエルダーなどと呼んでいるが、なに、長生きしてるだけのグールさね」


老人が己をエルダーグールだと名乗る。

長く生きる事により膨大な叡智を持ったグール。

人外な運動能力、狡賢さ、そして魔術の行使。

間違いなく強敵だ。

俺は短剣を取り出し、エルダーグールに投げつける。

しかし彼はそれを片手で掴んでしまう。

祝福された刃を持った手が音を立ててエルダーグールの手を焦がす。

しかしエルダーグールはそれを気にもとめない。


「聖職者の武器か」


エルダーグールは刃を握りしめるとそのままバキッと短剣を折る。

彼の手を見ると火傷の傷が徐々に塞がり始めている。

厄介だ。


「すみません、ヨエル!油断しました!」


エコーは痛みを我慢してなんとか立ち上がる。

しかし顔色が悪い。

痛みもあるだろうか腕を破壊されたのが大きいのだろう。

モーゼスと少佐は他のグールの処理に当たっている。

どうしたものか?


「もう心が折れたのか?」


エルダーグールはつまらなさそうな態度で喋りかける。


「その小娘はもう無理そうだな。しかしコートのお前さんはまだまだ行けるじゃろ?」

「俺は補佐担当だがな。仕方ない、来い」


老人が俺に向かって突進する。

俺に向かって手を差し伸ばすが俺はその手を掴むとそのまま回転を加えて相手の体勢を崩す。

エルダーグールが地面に崩れるとそのまま短剣を取り出し、エルダーグールの首に突き刺す。

俺はそのまま呪文の詠唱を行う。

しかしエルダーグールは素早く短剣を抜くと呪文の相殺を行う。


「祝福あれ!」

「不浄なれ!」


短剣が一瞬光るが、エルダーグールの詠唱により光を失ってしまう。

今ではエルダーグールが掴んでいる短剣は祝福を失い、彼の手を焦がす事は無かった。

むしろ禍々しさすら感じる不浄な冷たい輝きを浴びている。

その魔の短剣を確認するとエルダーグールはそのまま短剣をエコーに向かって投げつける。

短剣はエコーの脚を掠めると鋭い切り傷を彼女の脚に添える。


「くっ!」


彼女は鋭利な痛み、そしてエンチャントされた負の力により、再度その場にうずくまってしまう。

あらゆる負の感情を増幅させられた彼女の身体が小刻みに震える。

残念ながら彼女はもう戦えなくなっていった。


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