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29 ガンスリンガー

『役割。それは物事を円滑に進める為のもの。援護する者がいれば戦いは楽になるだろうし、斥候がいれば自分より格上の相手の弱点を探ることも可能になる。一人の猛者よりも連携の取れた集団の方が厄介な事も多々あるのだ』


敵の場所を認知出来た俺達は早速それぞれの役割を決める事にした。

モーゼスとエコーは敵の撃退。

少佐は遠方からの狙撃、又は援護射撃。

俺は何時ものように彼らの補佐をする。

これらはモーゼスの指揮の元に決められた。


「斥候はお嬢ちゃんのメカビーストに頼らせて貰おう」

「はい!お任せください!」

「お嬢ちゃんは軍人としても大成しただろうな」


エコーは機械獣達を使えば一人で色んな役割を自己完結出来る。

これは策略家からしてみれば大変な事である。

実際にその片鱗を先程の山での戦闘でも見せている。

少佐がモーゼスの意見に同意する。


「ええ、間違いないですね。私なんかは射撃しか出来ませんからね」

「少佐は相変わらず謙虚だな!敵から俺よりも恐れられていた人間とは思えないな!」

「ハハハ。超人に並べれるとは思いませんよ」

射撃手(ガンスリンガー)の名を聞いた敵軍の大将は絶望のあまりに小便を漏らしたと聞くぞ?」


モーゼスは豪快に笑う。

ほう、この男がそうなのか。

狙撃手、ガンマン、凶弾、致命的弾丸(フェイタル·バレット)

戦場の都市伝説と化した男がこの少佐なのか。

俺はモーゼスと少佐に喋りかける。


「噂に聞く狙撃手殿とは少佐の事か」

「ヨエルの耳にも入っているんだな!」

「戦場の死神は鎌の代わりに銃弾を用いるようになったと聞く」

「ヨエル殿までにそんな恥ずかしい話が届いているんですか?」


少佐は少し恥ずかしそうに頭を掻く。

本人はあまり名を知らしめたいという欲求はないようだ。

謙虚な死神もいたものだ。


「エコーさん、敵はイムレオ通りですね?正確な場所は分かりますか?」

「大きな交差点にある食堂に一人、路地裏に三人、後はメガビルの屋上に一人居ますね」

「了解しました。お手数ですが煙を退いてもらえますか?」


エコーは分かったと言うといかなる方法かで煙を操り、煙を晴らす。

少佐はビルに入ると、暫くすると大きなケースを持って戻ってくる。

ケースの中から大きな銃を一丁取り出す。

狙撃銃だ。

エコーとモーゼスがその銃に反応を示す。


「ナカイ製遠距離用精密射撃銃、ヨイチですか!」

「久々にコイツを見るな」

「少々時代遅れと言われてもこの子が気に入ってましてね」


少佐は慣れた手付きで素早く屋上の縁に銃を設置する。

スコープを覗くと捉えましたと一言、大佐に報告する。


「大佐、よろしいですか?」

「おう!まずは挨拶代わりにお見舞いしてやりな!」

了解(ラジャー)大佐(カーネル)


少佐は躊躇いもなく引きかねを引く。

高い発砲音が鳴り響く。

モーゼスは少佐に結果を尋ねる。


「どうだ?挨拶は届いたか?」

「ビル屋上の標的の無効化を確認。頭部が吹っ飛んでしまったので返事は無さそうです」

「それは寂しいな」


やり慣れたやり取りなのだろう。

少佐はモーゼスの茶目っ気に付き合う。

同じ射撃を得意とする者としてエコーが驚愕を示す。


「凄い!なんの補佐機能も調整システム無しでこの遠距離を当てるなんて!」

「ヨイチは質素ですからね。私と似たもの同士で相性が良いんですよ」


モーゼスの右腕だけはある。

正確さ、スピード、冷静さ、どれを取っても一流だ。


「エコーのお嬢ちゃんも凄ぇが射撃だけなら少佐の方が上手だな」


エコーはモーゼスの言葉に同意する。

少佐は唯一人、謙虚に笑うだけだった。

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