28 探知
『エコーは元々人外れた肺活量を持っていた。それに加えて趣味の機械弄りが功をなしたのか果てには自分の肺や呼吸器、喉などにサイバー手術を施したのだ。サイバー手術を行った者はそれが馴染むまで暫くの間、不便を被る。日常生活すらままならないケースもある。しかし、機械に愛された彼女は大掛かりな手術の後だと言うのに平気な顔で街中を駆けていたと聞く』
少佐と呼ばれる男は何処か呆れた様子で俺に向かって喋りかける。
眼の前の出来事を未だに信じれない様子だ。
「ヨエル殿。彼女は一体何者でしょうか?」
「唯の機械オタクだ」
「ハハッ、御冗談はよして下さいよ」
少佐は困惑した顔でモーゼスに説明を求める。
彼は軍人としては優れているだろう。
しかし神秘の道には疎いと見える。
「大佐、彼女の秘めている神秘とは一体何でしょうか?」
「こっちが聞きたいぐらいだ、まったく」
「大佐程の魔術師でも分からないのですか?」
「俺とは系統が異なるからな」
しかしモーゼスの事だ。
大まかな推測は立てているのだろう。
しかし簡単に言い表せないのが神秘というものだ。
「恐らくは感受、共感、共振などのセンスに長けているのだろう」
「センス、ですか?」
「本来、森の住民達は動物や自然などと言ったものと高い親和性、協調性を持っている」
「はい。噂にはお聞きしております」
「それに加えて彼女は機械に対してもそれらを並外れたレベルで実行出来る」
まさか煙にまでそれを適用できるとはとモーゼスが呟く。
モーゼスの言う通り彼女はシンクロ、エンパスと言うものをあらゆるものに対して実行出来る。
暗殺者と対峙した際に見せた射撃なんかがそれらの応用だ。
山の空気や動物達、機械獣、暗殺者。
それら全てを読み取り、調和をしたのだ。
その結果があの馬鹿げた射撃という訳だ。
非常に高い感受性だ。
逆にハサンはその高すぎる感受性を危険視している。
朱に染まれば赤くなるのだ。
しかし少佐の疑問はまだ残る。
「それは分かりました。しかしこの煙の量、範囲は異常ですよ、大佐」
「彼女の肺活量、煙との調和性、サイバー手術によるインプラントだろうな」
「二人共、あまり若い娘のアレコレを詮索するもんじゃないぞ、さぁ耳を塞ぐんだ」
俺は二人に耳を塞ぐように言い、自分の耳も塞ぐ。
ここからが木霊の本領発揮だ。
エコーは空気を思い切り吸うと、またもや腹部を異常なまでに膨らませる。
そして人から発せられるとは思えない声量で叫ぶ。
「うぉぉぉぉぁ!!!」
空気が震える。
その空気の震えが肌を通して感じる程だ。
彼女が先程噴出した煙が彼女の声に合わせて震えているのが見て取れる。
「さぁ!煙達よ!君達を避ける者の居場所を教えてくれ!」
エコーが煙に語りかける。
そして彼女はしばらく煙をじっと見つめる。
しばらくすると、彼女は一言、分かった。と呟く。
俺は彼女に尋ねる。
「どうだ?場所は把握出来たか?」
「はい!イムレオ通りに5人程います!」
「了解した」
これで敵の場所と人数は把握出来た。
よくやったエコーよ。
しかし、俺の満足とは裏腹に二人の軍人は苦笑いをするのだった。
「…ソナー付き、ですか」
「少佐、神秘協会と関わると退屈という言葉を忘れてしまうぞ」
「勘弁してくださいよ」
そんな二人をよそにエコーは元気良く叫ぶ。
「さぁ!狩りの時間ですよ!!」




