26 出迎え
『擬態には2種類の目的が存在する。それは敵から身を守る為のものと餌食を捕食する為のものだ。グールの場合は勿論、後者だ。彼らはいつの間にか集団の中に紛れ込む。高い知性のお陰でそれを見破る事は困難を極める。そして一人、また一人と彼らの餌食になっていくのだ』
俺は外に居たモーゼスと合流する。
どうやら少しは頭を冷やせた様だ。
「あのペテン師とは話終えたか?」
「ああ。必要な情報を得られた」
「そうか。では、俺達もお嬢ちゃんと合流しよう」
モーゼスは懐からは信号拳銃を取り出すと空に向かって発射する。
暫くすると俺達を送り出したバーテンダーの男が操縦するヘリコプターがやってくる。
多少、開けている場所ではあるものの、こんな森の中に着陸するとは流石はモーゼスの選りすぐりだ。
着陸するやいなや俺達は早速乗り込む。
プロペラが放つ高音の中、バーテンダーの男が俺達に語りかける。
「大佐!それにヨエル殿!おかえりなさい!」
「出迎え御苦労である!少佐!」
「して、成果の程は?」
「やられたよ、あそこの長は化け物だ!」
「御冗談を!大佐が負けるはずないでしょう!」
「上には上がいるもんだ!少佐!」
少佐と呼ばれるバーテンダーの男はモーゼスの言葉に驚きを隠せないでいた。
誰よりも身近でモーゼスを見てきた男だ。
その彼が自分では歯が立たないとハッキリと言うのだ。
少佐は軽くショック状態に陥る。
「落ち込むな少佐!やりようはある!次に会った時は同じ様にはいかねぇ!」
「ハハッそうですとも!」
「問題は件の犯人の事だ!」
「彼らじゃなかったのですか?」
「いいや、グールだ!」
グールですか⋯と少佐は嫌な顔をする。
彼もグールの事は知っている様だ。
まぁ、グールを知る者ならば全員そういう顔にはなるだろう。
「以前に相対した事があります!」
「そういやあの集落の件は少佐が指揮をしたんだったな!」
「はい!大きな損害を被りました!」
少佐は言葉に少しの怒りと、少しばかりの後悔を滲ませる。
彼にとってはあまり良い思い出では無いようだ。
モーゼスはそんな彼に言葉をかける。
「あれは少佐のせいではない!」
「全ての責任は上の物です!」
「出来る事はやったはずだ!」
「出来なかった事もすべきでした!」
少佐の肩が僅かに震える。
強い自負の念が彼を襲う。
暫くの沈黙の後、少佐は何かを決心したように再度、口を開く。
「大佐!今回のグールの件、是非参加させて下さい!」
「応!元より少佐程の男を頼らないつもりはない!」
「お任せください!グール共には鉛の弾をプレゼントさせて頂きます!」
それは素敵だ!とモーゼスは笑う。
それを聞いた少佐も一緒に笑い出す。
まったく、頼もしい限りだ。
「しかし、奴らの擬態能力が厄介です!」
「心配ご無用!エコーのお嬢ちゃんが対策をする!」
「それはそれは!若い世代は粒ぞろいですな!」
実際の所、グールの変身能力は厄介極まりない。
それを無効化出来るのなら相手の戦力を大きく落とせる事になる。
エコーには感謝しかないな。
「それではまもなく街に到着します!」
「御苦労!着き次第、早速準備に取り掛かるぞ!」
ヘリコプターが少佐が所有するバーの屋上に着陸する。
「さぁ!野郎とも!グール退治だ!」
モーゼスは高らかに宣言する。




