20 蛇の道
『人心掌握術。有名ではあるが、才を持たぬ者が使えばそれは薄っぺらいお世辞にしか聞こえず、相手の警戒を高める事になる。しかしハサンという怪物は才とはもはや呼べない、一種の神秘的な物を持っていた。長く生きると人間でも化けるようだ。彼がまだ人間である、と仮定した場合だがな』
ハサンとエコーは機械の話に花を咲かせる。
「レガリスちゃんも素晴らしいですけど、あの鷹も凄まじいですね!やはりグレートファルコンにちなんでですか?」
「お祖父ちゃんをご存知ですか?恥ずかしながら彼、あっ、セネクス君と言うんですけど!彼が一緒に居てくれるとお祖父ちゃんに見守られているようで安心するんです!」
「おーそれはそれは!森の翁も祖父冥利に尽きますね!」
ハサンの口車に見事にしてやられるエコー。
隣ではモーゼスに対して猛アタックをする菫をモーゼスがあしらっている。
「モーゼス様。歳の差は気になりますか?」
「いや⋯そうじゃねぇがよ」
「では問題ありませんね。私は束縛しませんよ、最後に戻ってくれればそれで良いです。良い女です」
「⋯菫のお嬢さんは悪い男に引っ掛からない様に気をつけな」
うむ、こっちは仲良くやってるみたいだ。
しかし楽しい時もそろそろ終わりだ。
本題に戻さなければな。
「大佐、連続行方不明の件はどうする?」
「いけねぇ、そうだった」
話の腰を折られた菫が俺を睨むが気にしないでおこう。
ハサンがこちらに振り向き、言葉をかける。
「ああ、それなら心配ご無用です。我々が処理をしました」
「なんだと?」
「ほら、我々と神秘協会は協力する体でしょう。一応それっぽい事をしなければ報告に困るでしょう?」
ハサンがなんの事ないように告げる。
事は終わったと。
やはり暗殺教団は恐るべき。
「先程部下達に頼んでいた依頼はそれですよ。一足先に菫さんが帰ってきたのは予想外でしたけどね」
「月下美人、私が仕事の出来る女だともっとモーゼス様にアピールして下さい」
「はいはい。取り敢えず殺人関連の行方不明者に関して此方で犯人達を処理して置きました」
処理、か。
素直に喜べないがこれも因果応報なのだろう。
自らもたらした結果だ。
「その他はどうなった?」
「拉致、監禁に関しては手足を破損させて警察署の前に放置させました」
「破損、か。そこまでする理由は?」
「窃盗の刑罰は手足と相場が決まっていますので。ご家族から大事な人を盗んだのでそうさせて頂きました」
ふむ、これが彼らの流儀か。
多少、過激だがこれは俺が口を挟む問題じゃないだろう。
「これで全部か?」
「いえ、残り3件に関しては神秘関係です。そちらの出番でしょう」
「そうか、了解した」
暗殺者の出る幕じゃないという事だな。
出過ぎた真似はしないと。
「蛇の道は蛇です。なにかお困り事があれば是非、私にどうぞ。我が友、ヨエル」
そう言うとハサンは恭しく一礼をするのであった。




