16 森林戦
『森での戦場は他とは異なる。俺もその道の専門ではないから詳しくは語れないが、高低差の激しい地形、穴などを掘ってそれを利用したりもするベテランのゲリラ達などはまるで魔法のように神出鬼没らしい。残念ながらエコーは狩人であって、ゲリラではない』
俺達はモニターを見て、エコーの姿を確認する。
流石にあのバイクでは森を駆けるのは無理と見たのか徒歩で進んでいる。
そんな彼女を見てハサンがコメントをする。
「流石、森の部族ですね。実に慣れてらっしゃる」
エコーは悪路をものともしない勢いでどんどん進んでいく。
様々な装備を携帯しているのにも関わらずに、だ。
突然、彼女が歩を止める。
何が森の異変に気づいた様子だ。
彼女のそんな様子を見て、ハサンが実況を始める。
「動物達が騒がしくなったのを見て異変を察知したようですね。素晴らしい、環境を実に上手く利用出来ています。しかし、相手の場所までは認知出来ていないようですね」
それは俺達もだ。
森の様子をいくつものモニターが映しているが、俺達は暗殺者の姿を確認出来ずにいた。
いや、ハサンと菫は恐らく既に暗殺者を確認出来ているだろう。
俺はハサンに聞いてみる事にした。
「暗殺者は今何処にいる?」
「上から2列目、左から3番目のモニターに居ますよ」
そこに目をやると一瞬、黒い影が通り過ぎたのを確認出来た。
しかし、今ではもう移動してしまって再び、居場所を見失ってしまった。
「ほら、ヨエル。今度はその右斜め下のモニターです」
ハサンが親切に教えてくれる。
しかし、俺は未だに暗殺者の姿を捉えるのに苦労をしていた。
ここで、黙ってモニターを睨んでいたモーゼスが口を開く。
「真っ直ぐ、お嬢ちゃんの所に向かっているな。後、十分ぐらいで対面するな」
「流石はモーゼス大佐!森の全体図は既に把握済みですか?」
「軽く下見はしたさ」
「うちの新人達も、把握するまで時間がかかるんですけどね」
ハサンは良く人を褒める。
しかし、モーゼスはあまり嬉しく無さそうだ。
気持ちは分からなくもないがな。
「エコーちゃんがなにかの準備を始めたみたいですね」
エコーの映ってるモニターを見ると彼女はポケットから取り出した小型の機械のスイッチを入れている。
戦闘態勢に入ったらしい。
「森の空域内に何かが入りましたね。あれは小型の無人機ですね。ドローン、でしょうか?」
ハサンはモニターも見ずに、そう告げる。
モーゼスは信じられないと言った様子でハサンを見つめる。
信じられないのは俺もだ、モーゼスよ。
「そろそろカメラに映りますね。あれは⋯鷹?」
一台のモニターに映ったエコーの無人機を見てハサンが驚愕の声を上げる。
「あれが噂のメカビーストですか!素晴らしい!実に凛々しい!」
どうやらエコーのメカビーストとやらがハサンの機械オタクの心に触れたようだ。
機械の鷹の形をした無人機に心が躍っている。
俺には分からないが機械に詳しい人から見れば凄いのだろう。
「エコーちゃん、ウチに来てくれないかな?」
「勘弁してくれ、神秘協会も人手不足だ」
「やはり何処もそうなんですね」
組織経営も楽じゃないですねっとハサンが呟く。
何故か少しばかりの哀愁をそのシルエット姿に覚える。
化物でも気苦労はするのだな。
「お、エコーちゃんの動きが変わりましたね。うちの者の場所を把握したみたいです」
「ほぉ、お嬢ちゃんの鷹は優秀だな」
「ええ、とても」
ハサンとモーゼスはエコーの腕を褒める。
確かに凄腕のエンジニアではあるけど、それだけじゃない。
「エコーちゃんが腕を変形させました。まさか、この距離から矢を放つのですか?見ものです!」




