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15 突破

『モーゼスは恋多き男だ。しかし、一時的に良い関係を築いたと思ったら、自ら、それを手放す。自分は何時死んでも可笑しくない身。それ故に、安定した関係性を嫌う。大事な誰かを見送る様な真似はさせたくない。その役は散々してきた身だから。モーゼスが言うには、勝利の女神というのは嫉妬深くってな、他の女が居るのが許せねぇんだよ、との事らしい』


「さて、この階も終わりか?」

「はい、モーゼス大佐。ここは私一人です」


モーゼスの問いに(すみれ)が答える。

若干、距離が近い気もするが、気の所為だろう。

俺はハサンに向けて喋りだす。


「さぁ、月下美人よ。これで全階突破でいいか?」

「本当なら地下もあるけど、あまり友人に見せたくない場所ですからね。取り敢えずこれで終了です!」

「それは良かった」

「さて、エコーちゃんはどうなってるのかな?」


そうだ、今の最優先はエコーの安否だ。

今までの暗殺者達を見ていると俺達が思っている以上に手強い存在だ。

大佐と違い、殺し合いの世界に生きていない彼女だ。

命のやり取りでは分が悪い。


「さぁ、お二人さんも気になっている様子なのでカメラの映像でチェックしましょうか!」

「映像があるのか?」


俺はハサンの言葉に驚きを覚える。

こんな広い森をどうやってカバーしているんだ?

俺の表情を読み取ったのか、ハサンは俺の疑問に応える。


「ソナーや振動探知などを利用したものですよ。それをリンクしたカメラに繋げるだけですよ」

「それでは動物などを探知してしまうのでは?」

「そこはAIですよ。動物の形状とそのパターンも覚えさせて動物かどうか、動物になりすましてはいないかどうか、など色々出来ますよ」

「凄いな」


俺は素直に彼らのテクノロジーに驚きを覚える。

隣にいるモーゼスも同じだ。

それを素直に俺等に話す事にも驚きだ。


「気にしないで下さい。あの玩具達はあくまで保険ですよ。真の暗殺者なら森に入った瞬間から察知して欲しいものですね」

「それが出来るのは貴方ぐらいですよ、月下美人」

「あら、修行をもっと厳しくしなくてはいけませんね」


ハサンは本当にそれが出来るのだろう。

この男の力は強大すぎる。

その気になったらヘリコプターの機種さえも言い当てれるだろう。


「自信はないけど、あの機体のベースはN40じゃないかな?あれに外付けのアーマーで防弾加工するとなると、補強が必要になるよね?完全に重量オーバーになるからエンジン類も総取り替えだ!結構調整に苦労したんじゃないですか?」

「⋯お前には酒の一杯でも奢ってやりてぇよ」


またもや、いかなる方法か分からないか俺の考えを読んだハサンが問いに応える。

恐らく、的確に言い当てたのだろう。

モーゼスは感動すら覚えている。


「お!今度是非行きましょう!」

「月下美人、うちはお酒禁止です」

「スミレさん!此処は是非目を瞑って頂きたい!」


菫は己が師に注意をする。

それに対し、ハサンはなんとか口八丁で丸め込もうとする。

シャルラタンの様だ。

俺は話を本題に戻す。


「さぁ、エコーがどうなったか見せてくれ」

「失礼しました。では見ましょうか」


菫が俺達を別室に案内をする。

そこにはいくつものモニターが壁に設置されており、床はなにかの機械達が隙間なく埋め込まれ、その上に強化ガラスが覆っていた。

菫は一台のコンピューターを弄ると俺達の眼の前のモニターにエコーの姿が映される。


「さて、エコーちゃんには是非、頑張って欲しいですね」


ハサンは呑気にそんな言葉を放つ。


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