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5 鼓舞

『士気は大事なものだ。いくら戦力があってもやる気が大事だ。根性論に思えるがそうなのだからしょうがない。敵と合う前から戦は始まっているのだ。それを知っているから大佐は数々の戦いに勝ち続けたのである。戦とは何処まで行っても人と人の戦いだ。相手に勝つ前に己に打ち勝たなければいけないのである』


決してこの二人の煽りに乗ったわけではない。

しかしこの強引な二人に意見をしてもどうせ通じないだろう。

ならばせめて作戦をしっかり練ろう。


「補佐官殿は話が通じて助かる」

「はい!ヨエルは単純ですね!」

「もう分かったから話を勧めてくれ」


二人の茶化しを無視する。

これも重圧を逃す為のものだろう。

しかし、俺にはそんなものは必要ない。


「俺は知っての通り人とは戦えない」

「問題なし。ヨエルの補佐は充分に戦力になる」

「それで?俺はどちらを補佐すれば?」

「俺の方をサポートして頂こうか」


これは意外だ。

この超人なら一人でも難なく任務を遂行できるはずだ。


「アサシン共は山に本部を構えてる。お嬢ちゃんには周囲の山で張ってもらう」

「了解です!」

「よろしい。では、噂のメカビーストの性能を見せてもらおう」

「⋯それは誰から聞いたのですか?」


エコーの眼が鋭くなる。

相変わらず笑みを浮かべてはいるが、眼が笑ってない。

それに対してモーゼスは余裕の表情だ。


「おっと。そんな眼を向けないでくれ。俺は地獄耳なんだ」

「耳が遠くなってるんじゃないんですか?」

「そうだったな」


モーゼスは更に笑みを深める。

凄いな。

エコーを手玉に取っている、年の功というやつか。


「なに、変な意図はない。エコーの名声は遠くまで届いている。それこそ木霊のようにな」

「そうですか」

「なんだ?手の内がバレて不安か?」

「一応狩人なのでね」

「ふん、青いな」


エコーの表情が少し険しくなる。

もう笑みも浮かべてはいなかった。

目前の老人の脅威度を図ろうとしているのだ。


「お嬢ちゃん。笑みを忘れちゃいかんよ。常に笑いたまえ。自分の手の内がバレた?そんなもん遅かれ早かれバレるもんだろ」

「強者の常だな」

「然り。其の上で相手を打ち負かすのが策略である!強さである!」


エコーは黙って話を聞き受け入れる。

彼女は立派な狩人で戦士だがまだ若い。

歳を重ねる事で得られる精神的な強さが足りていない。


「打ち負かす、ですか」

「おうとも!是非、全盛期のグレートファルコンを見せてあげたかった!」

「お祖父ちゃんですか?」

「ああ!まさに偉大な戦士!偉大な鷹!決して動じない!あれこそ空と地の間に生きる王なる獣ぞ!」


エコーの表情が警戒から徐々に高揚に満ちたものに変わっていく。

モーゼスの鼓舞が効いている。

流石は大佐だ。


「先の大戦では森の翁と相対すると聞いた時には流石の俺も震え上がったものだ!」

「⋯お祖父ちゃんはそんなに凄いんですか!」

「翁だけじゃないぞ!森の部族は誰もが屈強な戦士だ!」

「はい!最強です!」

「今回の任務で森の部族と共にすることは戦士として誉である!」

「おおっ!うおおお!!!」


エコーがウォークライを上げる。

もう士気は充分に上がっている。


「森はお嬢ちゃんの一存に任せる!存分に暴れたまえ!」

「はい!任せて下さい!」

「クククッ、クハハハ!森、戦場のプロにかの高名な補佐官殿!相手が可哀想ではないか!」

「相手方が可哀想です!」

「よろしい!作戦を変更する!これは蹂躙である!」

「アイアイサー!」


鼓舞はいいが、あまりうら若き娘に変な影響を与えないでくれ、大佐。

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