12 一服
『地下室で見つかったのは狂気の残骸だった。まぁ、元々あの連中のやる事だ。期待なぞそもそもしていないが相変わらず余計なことをしてくれる。それに例の硫黄も気になる。なにが召喚されたのか知らないが俺の直感に従うのなら問題が一つ増えた事になる。しかし、古き時代の島国で使われていた良い言葉がある。捨てる神あれば拾う神ありだ。俺にも頼れる相棒がいる。こんな狂った世の中での人生さえも遊び場とのたまうあの伊達男だ。頼りにさせてもらうぞジョセフよ』
「なぁヨエル」
「どうした?」
彼はほらっと言って地下室の天井にふわりと浮いているものを指さす。
それは紙を折って作られた鳥のようなものだった。
あれは確か…
「あれは折紙というやつか」
「おりかみ?紙なのか?」
「ああ。アレはなんらかの術が込められてるな。いわゆる式神というやつか」
東洋の神秘術だ。
そういうのは専門外だが話には聞いたことがある。
知人から聞いた話では紙や人形に術式を施して操るらしい。
斥候などにも向いているし俺もいずれは覚えてみたいものだ。
「誰かが使役してんのか?」
「本来はそうだろう。しかし行き場を見失ってるように見える」
「術師との繋がりを絶たれたのか」
たまたまこんな所に紛れた訳じゃないだろう。
これはメメント・モリの術師のものか?
まったく次から次へと色々出てくるものだ。
思わず溜息を零すとジョセフに笑われる。
「落ち着けよ兄弟。皺が増えるぞ」
「まったくだ」
「まぁ、ほれ。一本でも吸ってリラックスしな」
そう言ってジョセフは懐から煙草を取り出し一本勧めてくる。
気遣いは嬉しいが彼とは煙草の趣味が合わない。
俺は自分の自家製の煙草を取り出し口に咥える。
お互い煙草に火を点けて一吸いをする。
「なんだよ、俺のは口にあわねぇのか?」
「お前は何故その質の悪い安煙草を吸うんだ?」
「これはこれで味わい深いもんだぜ?」
彼の吸う安い煙草はまるで品質管理という概念をしらない。
同じ箱でも1本ごとに味が異なる。
いくら遊び人だろうが煙草までギャンブルする必要はあるのか?
眉間に皺を寄せながら煙草を吸う彼を見るとまたもや笑われてしまった。
「運試しは嫌いか?」
「道具には信頼と安定性を求める」
「ハハハ!甘いなヨエル!」
彼はこれは道具じゃなくて俺の愛人だと言いながら彼はウィンクをする。
そうかお前の言い分は良くわかったよ。
しかしジョセフよ。
「俺のタイプは素直な子だ」
「皆違って皆いいじゃねぇか」
「浮気性な男だな」
「器が大きいのさ」
彼は笑いながら煙草を口から離し指で式神に向かって弾き飛ばす。
煙草が回転しながら宙を舞い、式神に命中する。
当たった瞬間に式神が空中で燃え、そのまま落下をする。
彼はこちらを向き、得意げな顔を見せる。
「ジョセフ…」
「中々の腕だろ?」
「あんな可燃性の高いもの吸っていると早死するぞ」
「火遊びをしない男なんかつまらんだろ?」
俺は真面目に心配だ。
帰ったらマザーに報告して彼に健康診断を受けさせよう。
もしかしてこいつも死にたがりなのか?
「さぁ、兄弟!さっさとこの一件片付けようぜ!」
「ああ。終わったらお前を健康診断に連れて行こう」
「余計なお世話だ」
しかし憎めない男だ。




