23 質問
『俺は自分で思っていたよりも強欲な男だ。
自分の兄弟まで裏切ったのだ。これではかのカインの事も責められないな。』
妖精の軍団が次々と光の粒となって妖精界に還っていく。
彼らには感謝してもしきれない。
人類の危機に共に立ち向かってくれたのだ。
化身を倒す事は叶わなかったが、彼らが居なければ俺達は一瞬の内に全滅していただろう。
彼らも行動理念や考えは、倫理観は違えと俺達の兄弟達だ。
俺は最期の妖精が無事に還るのを見届ける。
これでこれ以上彼らの犠牲も出ないだろう。
最期の妖精が還ると共にシノビの兄妹がサンを抱えてゴミ処理場を出ていくのを確認出来た。
これでなんの憂いも失くなった。
意外な事に化身は黙ってそれを見届けていた。
化身の興味は完全に俺一人に向けられていた。
そうだ。
それで良い。
お前の相手は俺一人だ。
俺が化身に向かって歩み寄ると化身も同事に俺に向かって歩き出す。
お互い手を伸ばせば届く距離まで近付くと止まる。
俺は化身の無貌の頭を見つめる。
本来顔があるはずの場所は内側に抉られており、深い虚空が底にはあった。
数秒間お互いを見つめ合うと、化身が触手を一本伸ばし、俺の腹を抉る。
「ぐっ!!」
俺は強い痛みを感じるが必死に耐える。
俺を養分にしたいのか?
俺は少々、重たいぞ?
胃もたれするなよ。
俺は生気を吸われるものかと思っていたが俺の中から何かが流れるような感じはしない。
むしろ、逆に何かが俺の中に流れ込むのが分かる。
その瞬間、俺の意識は異空間へと飛ばされた。
「ここは何処だ?」
意識体の俺は周りを見渡すとそこは深い暗闇の中に無限に広がる光の粒達があった。
それは星々だった。
「宇宙空間か?」
俺がそう問いかけると俺の前に黄衣の衣を纏った人物が現れる。
顔まで隠されており、衣の下の容貌は確認出来ない。
突然、俺の意識内に声が響き渡る。
それは不思議な感覚だった。
若いような、年老いてるような、男性の声にも聞こえるが女性のような声にも聞こえる。
そんな不思議な声が俺の意識に語りかける。
『始めまして。ヨエルと呼べばいいのかね?』
俺はそれで良いと答える。
俺は前の黄衣の人物に対して問いかける。
「お前が黄衣の王と呼ばれる存在なのか?」
『そう呼ばれてはいるが、私は王ではない』
「では、一体何者だ?」
『お前と一緒だ。より上位の力の下僕だ』
黄衣の王はそう告げる。
俺達は同じような存在だという事を。
そしてそのまま続ける。
『本来、大抵の者は私をみた瞬間に正気を失くすが、お前は特別なようだ』
「それで俺を殺さずにおいたのか?」
『その通りだ。少々、いや、相当に興味を惹かれた』
黄衣の王は俺と語らいたいと言う。
同じ下僕として興味が惹かれたのだろう。
黄衣の王は語りかける。
『お前の目的はなんだ?お前の神の望みとはなんだ?』
黄衣の王は俺が簡単には答えられない質問を投げかけてくるのだった。




