21 神の目
『神の目とは衛星軌道上に設置されている衛星兵器の事だ。指向性エネルギー、いわゆるレーザーと言うやつを地球に向けて発射する事が出来る。それに加えて超高度なシステムを持った人工知能を加えることにより目標に対する誤差は数ミリ単位までに制御出来るとのことだ』
俺は通信機越しのドンに対して疑問を投げかける。
「アレの計画はテスト段階で止まっていた筈だ」
「そうだな。まずコストが高すぎる」
「そんなもの使って良いのか?費用はどうする?まさか増税で賄うつもりじゃないだろうな?」
「バカを言うな、次の市長選挙も狙っている。ポケットマネーだ」
「気前が良いな、ドン」
「街が失くなったらお金を持っていてもしょうがないからな」
良し、これで攻撃手段を得れた。
後は実行に移すのみだ。
妖精軍団に退避の司令を出そうとすると化身に異変が起きる。
無貌の頭をこっちに向けてゆっくりとだがローブから脚を覗かせ、一歩、前進をしたのだ。
一歩、更にもう一歩。
己の脚の動きを確かめるようにゆっくりと地面を踏み鳴らす。
動けるようになった事が嬉しいのか、頭を激しく左右に揺らす。
なんという事だ。
化身は先程の攻防で少しずつだが妖精達から得た養分を持って脚を形成したのだ。
サンは緊張した顔で俺に言う。
「化身は根の部分と切り離された。ここからは化身も仕掛けてくる」
「根は未だに成長を続けているのか?」
「残念ながらね。地中の根を破壊する事は勿論の事、化身も逃してはならない」
神の目を使うことは変わらないが、化身をこの場に留まらせる必要が出来た。
誰かが化身を相手取り、ゴミ処理場、化身と共に神の目を浴びる。
つまりは犠牲だ。
俺は思わず、心の中で悪態をつく。
そんな俺の心中を察しているであろうサンがそれでも構わずに言う。
「兄弟。悩んでる間も次々に妖精達が化身の餌食になっている」
「分かっている」
「地中の根もどんどん成長を続けている」
「分かっている!!」
俺は思わず怒鳴る。
しかしサンは特に気にした様子を見せない。
そしていつもの口調をやめ、二人の時にしか見せない真剣な口調に切り替える。
「言っておくが、兄弟よ。お前が犠牲になる事は許さん」
「それでは誰かの命を差し出せというのか?」
「その通りだ。我ら兄弟の命の使い道は既に主がお考えになられている」
「ああ、主よ。こんな試練を、何故、俺にお与えになられるのだ?」
俺は力なく項垂れる。
サンはそれを無言で見つめる。
しかし俺のそんな様子に否定も肯定の意も示さない。
サンは待っているのだ。
俺の自由意志の実行を。
しかし、サンよ、我が兄弟よ、俺の答えは知っているのだろう?
俺は頭を上げ、俺の目に良く似たサンの目を見つめる。
サンはそれを受け止め、布で覆われた口元に微笑みを浮かべるが、直ぐにそれをやめる。
「言ったはずだ、兄弟。お前が犠牲になる事は許さないとな」
「そうだな。逆だったら俺もお前を止めていただろう」
「ふぅ…頭脳担当が熱くなってどうするのさ?」
サンはいつもの口調に戻る。
そして俺に対して告げる。
「始まりが一緒なら終わりも一緒だ、ヨエル」




