20 手段
『ドンの許可が得られた。後はこの場所もろとも根っこを破壊するだけだ。これで邪神の脅威をこの地から取り除く事が出来れば良いが、それはやってみなければ分からない事だ』
俺はサンを自分の所に呼び戻し、作戦を伝える。
サンは俺に向かって正気か問うが、この地に根付く根を化身の攻撃を捌きながら掘り返す訳には行かないだろう。
俺はサンに問い返す。
「他に良い案があるか?兄弟よ」
「いや、ないね。この街の市民はさぞ驚くことだろうね」
「そうでもない、残念ながらこの街ではよくある事だ」
サンは呆れ気味にそうかと返事をする。
俺はシノビの兄妹にゴミ処理場の周辺に市民がいないかを確認するように頼む。
シノビの兄妹は直ぐ様にそれに取り掛かる。
化身の方を見ると先程よりも少し成長しており、その触手の届く範囲も広くなっている。
先程化身から大きく距離を開けたのにも関わらず、触手達が妖精軍団まで届いている。
妖精達も奮戦をしてくれているが、その数は減る一方だ。
早い内になんとかしなければならないな。
サンは俺に問う。
「それで?どうするんだい?兄弟」
「大規模な魔術か、爆弾のような兵器を使うか」
「この規模の広さの地面を大きく抉る兵器か。戦略兵器でも使う気かい?」
「大佐のツテを頼ればなんとか調達出来るが時間も掛かるだろう」
「そうなると魔術か?人数を集めなければならないし、行使には時間が掛かる。必ず妨害されるだろうね」
実際に打てる手が無かった。
いや、無いこともないが時間が圧倒的に足りないのだ。
こうしている内に化身は成長を続ける。
彼の根がこのゴミ処理場から外へ出れば終わりだ。
この作戦も使えなくなる。
俺とサンがなんとか考えを捻り出そうとしているとシノビの兄妹が戻ってくる。
周りの市民は避難済みとの事だ。
良し、後はこっちがなんとか作戦を実行に移せるようにするだけだ。
しかし、後何か一つ、ピースが足りないのだ。
そう考えていると左近が俺に通信機を手渡す。
相手はこの街のドンだ。
彼の威圧的な声が通信機から聞こえてくる。
「久しぶりに声を聞くな、ヨエル補佐官」
「積もる話もあるが、取り込み中だ。要件を言ってくれ」
「相変わらず無愛想な男だ。市長、いや、個人的な友人として力を貸そうと思ってな」
「元はお前からの依頼だろう、借りは無しだ」
「政治家に借りを作るのは怖いか?賢明だ」
「早くその力とやらを貸してくれないか?」
「そうだったな。ゴミ処理場の破壊方法は思いついたか?」
「あるにはあるが、時間も人も足りない」
「そこで、だ。神の目を使おう」
それは衛星軌道上に設置された宇宙兵器の通称だ。
俺も詳しくは知らないが、この街の遥か上に設置されており、レーザーの出力を調整することにより破壊の規模を選ばるというものだ。
確か前市長が完璧な監視社会の設立の為に軍部と秘密裏に開発したと聞いている。
しかし、実際に使われたかどうかの記録は残されていない。
しかし、この未知の兵器に頼る以外は道が残されていないだろう。




