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『俺とサンが扱う魔術。それは魔術という名が付く前から存在していたものなのだが、聖なる存在達の言語を介してこの地に変容をもたらすものだ。神の言語をそのまま使うことにより、わずか一部、取るに足らない程の一部だか主の力をお借りできる。しかし、長い時を生きて、俺の耳も遠くなったようだ。サンはそれをもってしても手応えが無いという。悪い冗談だと願いたい』


サンが警戒を解かないまま、地面に落ちている薄汚れた黄衣のローブを見つめる。

ゴブリンの一人が終わったと油断し、そのまま黄衣に手をかけようとする。

それをサンが必死に止めようとするが、既に遅かった。

黄衣から、いや、その下の地面から触手が生え、そのままゴブリンを貫く。

貫かれたゴブリンはみるみるやせ細っていき、絶命し、灰になる。

そのまま黄衣の下から大量の触手が生えると餌を欲しがるかのように周りの妖精達を貫き始める。

一本の触手がサンに向かうが、彼は高周波ブレードの一振りでそれを切断する。

そしてそのまま周りの妖精達に黄衣から距離を取るようにと叫ぶ。

周りがそれに応えて距離を取るが少しばかり遅かった。

黄衣は膨らみ始め、中から化身が再び姿を表す。

充分な養分を得られなかったのか、その姿は先程より一回り小さい。

そして再び、妖精軍団を触手をもって蹂躙し始める。

サンが俺に向かって叫ぶ。


「ヨエル!こいつは動かないんじゃない!動けないんだ!」

「どういう事だ!」

「こいつは植物みたいなもんだ!これは触手じゃない!根だ!」


サンは軍団全員に化身から距離を取るように伝達する。

化身から大きく距離を開けると化身は微動だにせずにその場に制止する。

サンは俺の所まで駆け寄ると分かった事の詳細を説明してくれる。


「あれは食虫植物みたいなものだ。その場に留まり、近付くものの栄養を取り込んで成長する」

「だから手応えが無かった訳だ」

「本体、コアは恐らく地中にある根っこの部分だ」


サンは顔に浮かんだ汗を拭いながらそのまま続ける。


「それも今のうちだ。根の部分が街全体に広がったらこの街は終わりだ」

「そうはさせない。根を破壊しよう。なにがアイデアはあるか?」

「頭脳担当は君だろ?頼む」


サンは俺に対処法を丸投げするとそのまま、逃げ遅れた妖精達の援護に向かうべく駆け出す。

文句は終わってから言う事にしよう。

今はこの脅威を終わらせなければならない。

俺は大きな声でこの戦場の何処かにいるシノビの兄妹を呼ぶ。


「左近!右京!ちょっと来てくれ!」


俺がそう叫ぶと直ぐ様二つの影が俺の後ろに現れる。

俺は振り向きもせずにそのまま用言を伝える。


「お前達のボス、ドンに伝えてくれ。このゴミ処理場はもう使えなくなる」

「補佐官、意味が理解出来ないです」

「化身もろとも破壊する。街を救うんだ、それぐらい安い投資だろう?そのまま伝えてくれ」


左近はそれ以上を聞くことなく、通信機を使って己の長に報告をする。

そして返事を受け取り、そのまま俺に伝える。


『スマートじゃないな、ヨエル補佐官。まぁ、良い。市民が巻き込まれないようにな』


俺は長年の仲であるドンが常備している胃薬の準備をしながらそう言っている所が脳裏に浮かんだ。

すまんな、ドン。

さぁ、悪夢を終わらせよう。

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