17 招集
『邪神の化身に加えて、巡礼者達まで合流させてしまった。正直な所、積みに近いだろう。何か奇跡でも起きない限りは』
この場に到着した残りの四人の巡礼者達は自分達が崇める邪神の化身、更にその化身を目にする。
四人は直ぐ様に化身を囲み、両手を上げ、化身を崇め始める。
冒涜的な歌を歌い始め、狂気の宴を始める。
中心にいる化身はそれを微動だにせずに眺める。
ゴブリンナイトはそれを見て皆に告げる。
「吾輩は団長失格だ。今、この状況でどうすれば良いのか分からぬ」
その言葉は力なく放たれる。
そしてゴブリンナイトは更に続ける。
「皆と戦えて光栄であった」
彼は皆に逃げるように言う。
ゴブリンナイトはこの場で時間稼ぎをするという。
無茶だ。
もはや一人でどうにかなる状況では無かった。
俺はゴブリンナイトに言う。
「もうこの街に逃げ場はない」
そして俺はゴブリンナイトの横に並び立つ。
ゴブリンナイトは驚いた後、少しばかり口角を上げる。
続けてサンも並び出る。
「新たに出来た兄弟をなくす訳には行かないな」
それを聞いたゴブリンナイトは遂には声を上げて笑う。
そして決意新たに言う。
「何という誉れ高い男達よ!我輩の最期には勿体無いほど栄光だ!ギャギャ!」
「団長には悪いが、ここで最期を迎えるつもりはない」
「俺ら兄弟は諦めが悪いんでね」
出来ればシノビの兄妹だけでも逃してやりたいが、化身達を相手に何処まで持つか。
俺がそんな考えを巡らせていると化身が信じられない行動を起こす。
自分を讃えていた巡礼者達を触手の一振りを持って首を飛ばす。
そしてそのまま、首を振り、嘲笑う。
ゴブリンナイトがそれを見ると怒気を含んで叫ぶ。
「貴様!己を慕う者達を殺めるとは正気か!!」
化身がその怒号を受けても意味が分からないのか首を傾げるだけだった。
そして触手を使って巡礼者の一人の首を拾うと俺達に向けて掲げて見せる。
それは己の信望者すら取るに足らない、ゴミ以下の存在だという事を俺達に示す。
ゴブリンナイトの怒りは度を超えたのか逆に冷静になる。
「なんと醜悪。もはやかける言葉も見つからぬわ」
「あれが邪神だ。団長」
「サー、何としてもここで食い止めるぞ」
勿論、そのつもりだ。
幸いな事に巡礼者達が流した血は新たな異形のものを召喚する事は無かった。
化身は俺達を舐めているのだろう。
癇に障るが、都合が良い。
ゴブリンナイトは剣を地面に刺す。
そして、それから言う。
「もはやこの街、この人間界だけの問題ではない。故に!貴女に請う!妖精王よ!悪を打ちのめす力を吾輩に!」
ゴブリンナイトは自分の持てる全ての力を捧げ、妖精界からの力を召喚する。
眩い光は一面を照らす。
そして妖精の軍団が現れる。
その数は軽く百を超えるだろう。
軍団はゴブリンを始め、オーク、フェアリーから果てには馬に跨る首の無い騎士、デュラハンさえも現れる。
「おお…吾輩と共に戦ってくれるのか…我が戦友達よ…」
ゴブリンナイトは奇跡を起こした。
しかしその代償は大きかった。
ゴブリンナイトの身体は所々黒ずみ、ボロボロになっていた。




