15 盾と黄衣
『ゴブリンナイトは大盾を召喚してみせた。ナイトの能力といえばそうかもしれないが、俺は別の視点を提案したい。それは彼の心の在り方によるものだ。彼の理想の騎士としての在り方だ。皆を守れるような騎士になりたかったのだろう。だからこそ鎧は変化したものの、剣はそのままなのもそれが理由だろう。悪戯好きのゴブリンにしては随分と変わっているが、俺はそれを大変に気に入っている。彼の征く騎士の道が栄光に溢れんことを』
獰猛な触手攻撃を受けたのにも関わらず、ゴブリンナイトの盾は傷一つ付いてない。
その盾に描かれた黄金の子鬼の紋章も綺麗に輝いている。
あの盾は恐らくだが、妖精界の物質で出来ているのだろう。
詳しい事は分からないが、妖精王直々に認められたのだ、並大抵の盾では無いことは確かだ。
ゴブリンナイトが俺に高らかに叫ぶ。
「サー!血を流さなければ良いのだな!」
「ああ!それが出来ればベストだ!」
「了解した!」
ゴブリンナイトが大盾を手放して巡礼者達に向かって駆け出す。
彼が大盾を手放すと大盾は光の粒子となって消える。
代わりにゴブリンナイトの手に小型の盾、バックラーと呼ばれるタイプの物が召喚される。
彼は巡礼者の一人に近付くとそれを巡礼者に向かって振るう。
シールドバッシュと呼ばれる技だ。
大きくなったとはいえ、小柄な妖精種であるゴブリンからは想像できない威力を見せる。
巡礼者の一人が大きくふっ飛ばされる。
巡礼者が地面に転がるとそこに素早くサンが駆け寄る。
「でかした、団長!」
サンは素早く倒れている巡礼者の身体に触れると呪文を唱える。
「■■■」
瞬く間に巡礼者の身体が燃え上がり、灰になる。
良し、これで一人減らすことが出来た。
そんなサンの呪文にゴブリンナイトが感想を漏らす。
「人の技とも妖精のスペルとも違う。面白い男だ!ギャギャ!」
「詮索は無しだ、団長!」
ゴブリンナイトは頷くとそれ以上言う事無く残った巡礼者から距離を取る。
しかし、それがまずかった。
巡礼者は虚ろな目をしたまま懐から歪に歪んた雷を思わせるような短剣を取り出す。
そしてそのまま、自分の胸に突き刺す。
更には己の崇拝する邪神を称える呪文を唱える。
「イア!フングル!ナイアラ!イア!」
巡礼者は口から多量の黒い血を流しながらその場に倒れる。
俺はサンに早く俺達の元に戻るように叫ぶ。
「不味い!早く戻れ!」
巡礼者の身体は妖しく蠢く。
身体が内から変形し、それは遂に表面にまで現れる。
巡礼者の背中からはグロテスクな羽がローブを突き破って生える。
巡礼者だった者がゆっくりと立ち上がると顔だったものが内側にめり込み、虚空を顕現していた。
これは非常に不味いぞ!
俺はサンに問いかける。
「サン!これは本人か!」
「いや、化身だ!所詮は劣化コピーだ!」
サンは劣化体と呼ぶが、それは人類にとってはこれ以上無い程の脅威を秘めていた。
現れたのは小さき黄衣の者。
悪意と狂気をばらまく悪の化身の出現だった。




