魔法アーニス習得!
ーそれからの数日、雪乃フルエレ(雪布留)は魔法アーニスの修行を続けたので御座います。
「蝋燭の炎を揺らさずに歌を歌うのデ~ス」
「アーーーーッ」
ふっ
蝋燭の炎はいきなり消えた。
ペシッ
「消しちゃダメでーす、それじゃ立派な演歌歌手にはなれまセ~ン」
「え?」
疑問を持ちながらもフルエレは妖しい修行を続けたので御座います。
「テーブルクロス引き!」
「はい!!」
しゅっっ
「新聞紙の下においた割りばしを折る!」
「はい!!」
ぺしっ
「豆腐を包丁を使わずに手のひらで斬る!」
「は? はいっ!!」
ぐしゃっ
フルエレの白魚の様な指先の上で白い豆腐はぐしゃぐしゃに潰れた……
「う~ん、まだまだですな~~~」
「コーチ、もう一週間の期限が今日で終わりです。お願いします、ぶっつけ本番で最終試験を行ってください!!」
貴城乃シューネに連れてこられた時、確か一週間の修行とか言われていた事をフルエレは覚えていた。今後どうなるのか彼女には全く分からない。
「良いデショー、んなら私がやったみたいにこの高級カップを魔法アーニスでスパッとやったんさい?」
ずずい
バレエの先生は最初に自ら切り裂いて、雪乃フルエレの責任にして、フルエレがめちゃめちゃ怒られたのと同じ様に高級カップを置いた。
カチャッ
「……い、いやお豆腐で良くないですか?」
「豆腐じゃダメでーす。高級カップをスパッと斬るからカッコ良いんデスワ」
「ですわって。いいわ、やってみます、はぁあああああああああ」
フルエレは目を閉じて精神を集中した。
(身体全体に魔力を鎧の様にまとって……爪先に魔力を集中……)
シュイーーーンッ
フルエレの指先が光り輝く。
「シャウッッ!!!」
スパッッ
フルエレは思い切り腕を振ったが……
「何も起きまセ~ン」
「あ、あれもう一度やって……」
ピシッ
スパッ!
次の瞬間、ティーカップは割れた。
「おお、いや?」
「え?」
ピーーーーッ
次の瞬間、さらにティーカップを置いていた高級テーブルまで切れた。
ドタッ
真っ二つに切れて真ん中から倒れたテーブルを見て、二人は顔を見合わせた。
「きゃーーーっ!?」
「これ全部アンタの責任デース、わしゃ知りマセ~ン」
「えぇ!?」
などという騒動もありつつ、意外な事に雪乃フルエレは試験を一発合格した。
「よく数日で魔法アーニスを習得したやんか凄いんちゃうん?」
「エヘヘ、先生の教えのお陰デス」
チャリン!
バレエの先生は金色の古びたメダルを取り出した。
「雪布留さん、あんたを大変気に入りました。卒業の記念にこのメダルをやりましょう」
「こ、これは?」
「これは古代の闇ギルドで流通していた金のメダルで~す、大変貴重な骨董品ヤデー?」
「え、こんな凄そうな物を私に!?」
先生の手から雪布留の掌に黄金のメダルが渡された。
「大切にしてクダサーイ」
「……お菓子代に売っちゃダメですか?」
先生はコケた。
ガチャッ
「ちょっと……今度はカップだけじゃなくてテーブルまで斬れてる、一体これがいくらすると思っているんだい?」
ふり返ると乳母が恐ろしい形相で立っていた。
「全部全部、雪布留さんがやりました、ワシャシリマセ~ン」
「……私が全部ノコギリで斬り倒しました。乳母さんへの反抗心です!」
「へぇ~~?」
ーその後、雪布留は泣くまで怒られ続けたので御座います……
ー次の日
妖しい館に貴城乃シューネがやって来た。
「雪布留、どうやら真面目にレイディになる修行にいそしんでいたようだな?」
「はい」
雪布留は強くなった事を隠す様に無表情で彼を見た。
「ふふ乳母から聞いたぞ、カップを割ったりテーブルをのこぎりで斬ったりして、かなり荒れていた様だな」
「申し訳ありません、望郷の念をノコギリを振るう事でしか表現出来なくて、ううぅ」
雪布留は泣き真似をした。
「ふっ、私は過激な所がある女は嫌いでは無い。あれから一週間が経ったな、そろそろご褒美第二弾と行こうか」
チラリ
雪布留の目が輝いた。
「と、言いますと?」
「ふふ、隠していた表情が出て来たな。まあ良い、次はいよいよ登城をしてもらおう」
「遂に姫乃ソラーレさんとして!?」
「いや、まだまだ雪布留貴方は反抗心がある。姫乃としてでは無く謎の仮面淑女として淑女のサロンに出てもらおう」




