依世が見たもの……
「ちちちちち違いますよ! 朝まで激しい運動してたんじゃなくて、朝までフルエレを探して野山を走りまわってたんですって!!」
慌ててスナコ姿のままフルエレの部屋で寝てた砂緒は弁解した。
「いや……フルエレさんはあたしらと帰宅したけどな。誰を探してたん?」
シィ~~ン
「……すいません嘘です、ベッドで朝まで激しい運動してました……でも運動と言ってもストレッチとかであってやましい事はしておりません!」
砂緒は泣きながら弁明した。
「弁解の方向性がまとまって無くて余計妖しいわ!! でも……信じるよ」
姫乃はコケかけた。
(こんな無茶な弁解を信じるんですか!?)
「ええ、その通りなのよセレネ。依世さんは大きな白い犬を連れてるから、乱れた事にならないのよ」
キュッルキュルッ
依世の肩でフェレットは小さく鳴いた。
(誰を探してたんだよ、なんか妖しいなあ。じゃあこの目の前にいる女は??)
「それよか依世さんフルエレさんと仲直りしたんかよ?」
ジロリ
セレネはスナコの肩に手を乗せる依世をにらんだ。
「あーあー、コイツ、だれ?」
ルンブレッタは覚えてても、セレネの事は完全欠落している都合の良い野人依世だった。
ジトッ
「ごにょごにょ、今フルエレは依世と壮絶な姉妹ケンカ中なんですよ」ボソッ
「あぁ息が……わかりました」
「目の前で耳打ちするなよ」
「オーーホッホホッ、今わらわはバカ妹とケンカ中なのですわ!」
「急にキャラ変えんなよ」
スナコは冷や汗を掻いた。なんとしてもフルエレを見つけるまでは、セレネの目の前の女が神聖連邦帝国聖帝の娘、姫乃ソラーレである事を隠し通さねばならない、そう考えていた。
「スナコ汗出てる、ペロペロ」
野人化した依世はスナコの冷や汗を舐めた。そのお陰で兎幸が作った完璧なメイクがはがれかかる。
「うげげっキモイことすんなよ。そうだっスナコちょっと来い、依世もついて来い!」
「うわわ離して下さい」
セレネは何を思ったか、スナコの首根っこを掴んだまま洗面所に連れて行った。
ズリズリ
「見てろ依世、これがスナコの正体じゃ!」
ジャババーーッゴシゴシ!
「ひぃい止めて下さい」
セレネは無慈悲にスナコの顔を洗いまくった……どんどんとスナコの分厚い化粧が洗い流されて行く。最後にタオルで滅茶苦茶に拭き倒した。
「ほら完成だよ見よ! これがスナコの不気味な正体さ、砂緒という男なんだぞ」
グインッ
セレネは元に戻った砂緒の首根っこを掴み、依世に押し付けた。
「ひっやめてっ嫌見ないでェ!!」
砂緒は悲痛な涙を流す……
クンクン
しかし依世は何事も無く匂いを嗅いだ。
「この男、顔は不気味だがスナコと同じ匂い、好きだペロペロ」
急に饒舌に話し始めた野人依世は構わず砂緒の頬もペロペロ舐め始めた。
「あん、止めて」
「ちぃいっくそぉおーーーーーっ!!」
セレネはたまらず泣きながら出て行ったという。
タタタ、バタン!
「えらい事になりましたなあ、早くフルエレを見つけねば」
「これ止めなさい汚いですよ雑菌が付いてます!」
ベリッ
姫乃は無理やり依世を剥がした。
「雑菌なんて付いてませんが」
「それよりも何故依世さんがこんな状態になっているのですか、わたくしの事も分から無いようです」
ぺろぺろ
自分の足を器用に舐め続ける依世は猫の様だった。姫乃は依世が帝国に行き、紅蓮アルフォードとまおう抱悶の結婚式を見たなどと言う事は全く知らない。
「実はどこぞで恐ろしい物を見て、それいらい心が壊れた様なのです」
「恐ろしい物……この世の終わりの予言とか、天からの軍隊の来襲とかでしょうか!?」
「姫乃は割とオカルティックなんですなあ」
砂緒はジトッとした目で見た。
「ちちち違います、一例ですよっ」
実はフェレットが全て見て知っているが、彼は彼で独占したい依世を元に戻す気は無かった。
「さ、人通りが多くなるまでに森にお帰り、ここはお前が住む世界じゃないの、ルールル、ルールル」
「あうー、スナコ、また、会う」
トテトテ
依世は肩にフェレットを乗せたままEVホールに向かった。
「行かせていいんですか?」
「さっ次は学校行くまでに姫乃の髪染めですよ」
「髪を染めるのですか?」
「当たり前です」
「フルエレ見つかった?」
気付くと泣きそうな兎幸がたたずんでいた。
ドキーン
姫乃は心が痛む。




