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夕暮れの石階段。
オレンジ色に染まる街を見渡しながら、黒崎と大堂(麗華の身体に入った青年)は身体が入れ替わった現場へ戻ってきていた。
大堂は周囲を鋭い目で見回す。
「……いない」
低く呟く。
「どこへ行った?」
黒崎も辺りを見渡すが人通りはまばらで、大堂の身体となった麗華の姿はどこにも見当たらなかった。
重苦しい沈黙が流れる。
やがて黒崎が口を開く。
「あなたの知人に連絡をとれば、なにかわかるかもしれない」
大堂は黒崎へ視線を向ける。
「仲間の携帯番号は覚えている」
「でしたら――」
「スマホを貸せ」
黒崎は自身のスマートフォンを差し出した。
大堂は慣れた手つきで番号を入力し、耳へ当てる。
数回の呼び出し音。
やがて電話がつながった。
「……もしもし」
大堂は短く息を吐く。
「俺だ。大堂だ」
電話の向こうは沈黙している。
「こんな声だから信じられねぇのも分かる」
大堂は苦笑するように続けた。
「だが、本当に俺だ。
お前も驚いてるとは思うが、これから俺が指示する場所まで戻ってきてくれ」
しばらく相手は何も答えなかった。
やがて、聞き慣れた桐谷の落ち着いた声が響く。
『……若頭』
その一言には、戸惑いと苦しさが入り混じっていた。
『事情は、お察しします』
大堂は安堵しかける。
だが、次の言葉がその希望を打ち砕いた。
『ですが……それはできません』
「何!?」
『こちらは今、仲間を…、新垣を人質に取られています』
大堂の表情が一変する。
『一刻も早く、相手の頭と話をつけなければならないんです』
電話越しに桐谷は静かに続ける。
『若頭と姿が入れ替わった者が誰であろうと……今は若頭として連れて行くしかありません。
約束の時間に間に合わなければ、新垣は赤羽に殺されます』
「桐谷、待て!」
『申し訳ありません』
短くそう告げると、通話は一方的に切れた。
ツー、ツー、ツー――。
無機質な電子音だけが耳に残る。
大堂はゆっくりとスマートフォンを下ろした。
悔しさを押し殺すように拳を握り締め、深くうつむく。
黒崎はその様子を見つめ、静かに問いかけた。
「……どういうことですか?」
その一言に、大堂はゆっくりと顔を上げる。




