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6

夕暮れの石階段。

オレンジ色に染まる街を見渡しながら、黒崎と大堂(麗華の身体に入った青年)は身体が入れ替わった現場へ戻ってきていた。


大堂は周囲を鋭い目で見回す。


「……いない」

低く呟く。


「どこへ行った?」


黒崎も辺りを見渡すが人通りはまばらで、大堂の身体となった麗華の姿はどこにも見当たらなかった。

重苦しい沈黙が流れる。

やがて黒崎が口を開く。


「あなたの知人に連絡をとれば、なにかわかるかもしれない」


大堂は黒崎へ視線を向ける。


「仲間の携帯番号は覚えている」


「でしたら――」


「スマホを貸せ」


黒崎は自身のスマートフォンを差し出した。

大堂は慣れた手つきで番号を入力し、耳へ当てる。

数回の呼び出し音。

やがて電話がつながった。


「……もしもし」


大堂は短く息を吐く。


「俺だ。大堂だ」


電話の向こうは沈黙している。


「こんな声だから信じられねぇのも分かる」


大堂は苦笑するように続けた。


「だが、本当に俺だ。

お前も驚いてるとは思うが、これから俺が指示する場所まで戻ってきてくれ」


しばらく相手は何も答えなかった。

やがて、聞き慣れた桐谷の落ち着いた声が響く。


『……若頭』


その一言には、戸惑いと苦しさが入り混じっていた。


『事情は、お察しします』


大堂は安堵しかける。

だが、次の言葉がその希望を打ち砕いた。


『ですが……それはできません』


「何!?」


『こちらは今、仲間を…、新垣(あらがき)を人質に取られています』


大堂の表情が一変する。


『一刻も早く、相手の頭と話をつけなければならないんです』


電話越しに桐谷は静かに続ける。


『若頭と姿が入れ替わった者が誰であろうと……今は若頭として連れて行くしかありません。

約束の時間に間に合わなければ、新垣は赤羽(あかばね)に殺されます』


「桐谷、待て!」


『申し訳ありません』


短くそう告げると、通話は一方的に切れた。

ツー、ツー、ツー――。

無機質な電子音だけが耳に残る。


大堂はゆっくりとスマートフォンを下ろした。

悔しさを押し殺すように拳を握り締め、深くうつむく。

黒崎はその様子を見つめ、静かに問いかけた。


「……どういうことですか?」


その一言に、大堂はゆっくりと顔を上げる。



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