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25

夜風が吹き抜ける倉庫の外。

黒崎、麗華、大堂の三人は、車のそばで待つ熊田のもとへ戻ってきた。

三人の姿を見つけた熊田は、安堵したように顔をほころばせる。


「若頭!」


足を引きずりながら駆け寄ると、麗華へ飛びつくように抱きついた。


「ご無事でよかった!」


「きゃっ!?」


突然のことに麗華は目を丸くする。

その直後、熊田の肩をぐいっと引き離す者がいた。


「失礼します」


黒崎だった。


「お二人とも、元のお身体に戻られました」


黒崎は穏やかな表情で熊田を見つめる。


「こちらは西園寺麗華お嬢様です」


「あ……」


熊田は固まったまま数秒間瞬きを繰り返す。


「す、すみません!」


耳まで真っ赤にしながら勢いよく麗華に頭を下げた。


麗華は思わず小さく笑う。


「お気になさらないでください」


その優しい笑顔に、熊田も照れくさそうに頭をかいた。


「あ、そうだ!」


何かを思い出したように声を上げる。


「さっき桐谷さんから連絡がありました!

新垣さんも無事で、二人とも組の事務所で待ってるそうです」


大堂は静かに息を吐いた。


「……そうか」


張り詰めていた表情が、ようやく少しだけ和らぐ。


「分かった」


熊田へ視線を向ける。


「迷惑かけたな、熊田。お前にも怪我を負わせちまった」


「俺は大丈夫です!」


熊田は力強く首を振った。


「皆さんが無事なら、俺はそれで十分です」


大堂は小さく笑うと、今度は黒崎と麗華へ向き直った。

ゆっくりと頭を下げる。


「黒崎。お嬢さん。俺達の問題にあんたたちまで巻き込んじまった。本当に…」


短く息を吐く。


「……すまなかった」


麗華は首を横に振る。

瞳には涙が浮かんでいた。


「謝らないでくださいませ」


声を震わせながら続ける。


「わたくしを助けてくださって……本当にありがとうございました」


大堂と熊田を交互に見つめる。


「お二人とも、本当にありがとうございました」


ぽろり、と涙が頬を伝う。

その涙は、恐怖から解放された安堵の涙だった。

大堂は麗華の頭を優しくなでる。


「よく頑張った…」


そう言うと、黒崎の前まで歩み寄った。

しばらく無言で見つめ合う二人。

やがて大堂は静かに右手を差し出す。


「黒崎、世話になった。ありがとう」


黒崎は一瞬だけ目を見開いた。

そして、静かに微笑む。


「こちらこそ」


差し出された手を、力強く握り返した。


「痛い痛い痛い!!!黒崎、お前!」


「気安くお嬢様の頭に触れた罰です」


固く交わされた握手。

敵として出会った二人は、この夜を越え、互いを認め合う仲となった。

その様子を見つめる麗華は、涙を拭いながら優しく微笑む。


夜空には雲ひとつなく、満月が静かに黒崎達を照らしていた。

長く、不思議な一日は、こうして幕を閉じた。


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