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夜風が吹き抜ける倉庫の外。
黒崎、麗華、大堂の三人は、車のそばで待つ熊田のもとへ戻ってきた。
三人の姿を見つけた熊田は、安堵したように顔をほころばせる。
「若頭!」
足を引きずりながら駆け寄ると、麗華へ飛びつくように抱きついた。
「ご無事でよかった!」
「きゃっ!?」
突然のことに麗華は目を丸くする。
その直後、熊田の肩をぐいっと引き離す者がいた。
「失礼します」
黒崎だった。
「お二人とも、元のお身体に戻られました」
黒崎は穏やかな表情で熊田を見つめる。
「こちらは西園寺麗華お嬢様です」
「あ……」
熊田は固まったまま数秒間瞬きを繰り返す。
「す、すみません!」
耳まで真っ赤にしながら勢いよく麗華に頭を下げた。
麗華は思わず小さく笑う。
「お気になさらないでください」
その優しい笑顔に、熊田も照れくさそうに頭をかいた。
「あ、そうだ!」
何かを思い出したように声を上げる。
「さっき桐谷さんから連絡がありました!
新垣さんも無事で、二人とも組の事務所で待ってるそうです」
大堂は静かに息を吐いた。
「……そうか」
張り詰めていた表情が、ようやく少しだけ和らぐ。
「分かった」
熊田へ視線を向ける。
「迷惑かけたな、熊田。お前にも怪我を負わせちまった」
「俺は大丈夫です!」
熊田は力強く首を振った。
「皆さんが無事なら、俺はそれで十分です」
大堂は小さく笑うと、今度は黒崎と麗華へ向き直った。
ゆっくりと頭を下げる。
「黒崎。お嬢さん。俺達の問題にあんたたちまで巻き込んじまった。本当に…」
短く息を吐く。
「……すまなかった」
麗華は首を横に振る。
瞳には涙が浮かんでいた。
「謝らないでくださいませ」
声を震わせながら続ける。
「わたくしを助けてくださって……本当にありがとうございました」
大堂と熊田を交互に見つめる。
「お二人とも、本当にありがとうございました」
ぽろり、と涙が頬を伝う。
その涙は、恐怖から解放された安堵の涙だった。
大堂は麗華の頭を優しくなでる。
「よく頑張った…」
そう言うと、黒崎の前まで歩み寄った。
しばらく無言で見つめ合う二人。
やがて大堂は静かに右手を差し出す。
「黒崎、世話になった。ありがとう」
黒崎は一瞬だけ目を見開いた。
そして、静かに微笑む。
「こちらこそ」
差し出された手を、力強く握り返した。
「痛い痛い痛い!!!黒崎、お前!」
「気安くお嬢様の頭に触れた罰です」
固く交わされた握手。
敵として出会った二人は、この夜を越え、互いを認め合う仲となった。
その様子を見つめる麗華は、涙を拭いながら優しく微笑む。
夜空には雲ひとつなく、満月が静かに黒崎達を照らしていた。
長く、不思議な一日は、こうして幕を閉じた。




