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「頭がおかしいのは、お前だ。赤羽」
響く声とともに、部屋の入口へ一人の少女が姿を現した。
麗華の姿――しかし、その中身は大堂。
腕の中には、一匹の黒猫が静かに抱かれている。
「あなたは…!」
麗華が思わず声を上げる。
赤羽は少女の姿をじっと見つめた。
そして数秒後――。
「あははははっ!」
部屋中に笑い声を響かせる。
「なるほどねぇ♡」
腹を抱えながら肩を震わせる。
「そういうことだったのぉ?」
「……あ?」
大堂は眉をひそめる。
その時だった。
腕の中にいた黒猫が、するりと飛び降りる。
「ニャア」
黒猫は迷うことなく赤羽のもとへ駆け寄り、その足元へ身体を寄せた。
赤羽はしゃがみ込み、優しく黒猫を抱き上げる。
「もう、どこいってたのよ…ほんと勝手な子なんだから」
その表情からは、先ほどまでの狂気が少しだけ消えていた。
「その猫、あんたの飼い猫だろ?」
と大堂が猫を指差し言った。
「そうよ…この子はねぇ」
黒猫の頭を撫でながら、静かに語り始める。
「『曰く付きの猫』なんて呼ばれて、殺処分されそうになってた、可哀想な子なのよ」
麗華は息をのむ。
「その曰く付きの理由は誰も教えてくれなかったわ」
赤羽は黒猫を見つめ、小さく微笑む。
「ずっとわからなかったけど…」
ゆっくりと顔を上げる。
「でも今、ようやく分かったわぁ」
その言葉に、麗華ははっと目を見開いた。
「……あっ!」
全員の視線が麗華へ集まる。
「あの時ですわ!」
麗華は大堂に視線を移す。
「階段から落ちた時、わたくし……その子を抱いていました!」
大堂も静かに頷く。
「ああ。あんたとぶつかる前に見たからわかる。
!まさか…それで、俺たちの身体が入れ替わったってわけか?」
部屋に静寂が訪れる。
大堂は赤羽へ一歩近づいた。
「赤羽」
静かな声だった。
「俺達はもとの身体に戻らなきゃいけない…」
赤羽は黒猫を抱き直し、黙って大堂を見つめる。
「だから、その猫をこっちに渡してくれ」
大堂は真っ直ぐ赤羽の目を見据えた。
「……」
赤羽はしばらく何も言わなかった。
腕の中の黒猫は安心したように目を細め、小さく喉を鳴らしている。
赤羽は黒猫を優しく撫でながら、小さく笑った。
その笑みには、先ほどまでの狂気とは違う色が浮かんでいた。
「さて、どうしようかしらねぇ」




