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「お嬢様、失礼します」


黒崎は麗華をそっと抱き上げる。


「黒崎……!」


「ここを出ます」


短く言い切ると、黒崎は迷うことなく部屋の出口へ駆け出した。

あと数歩で外へ出られる――。


その瞬間だった。


鋭い衝撃が背中を貫いた。


「――っ!」


黒崎の身体がわずかによろめく。

背後には、妖しく微笑む赤羽の姿があった。


「うふふ♡」


赤羽は黒崎の背中に突き立てたナイフを、ゆっくりと引き抜く。


「背中ががら空きよぉ」


黒崎は麗華を床へ降ろすと、その場に片膝をついた。


「黒崎!」


麗華は悲鳴にも似た声を上げ、黒崎に手を伸ばす。


「離れてください!」


黒崎は苦しげな表情のまま麗華を制した。


赤羽は腹を抱えて笑う。


「あははははっ!敵に背中を見せたら終わりよぉ?」


血の付いたナイフを指先でくるりと回しながら、愉快そうに続ける。


「どう?すっごく苦しいでしょぉ?」


赤羽の笑みがさらに深くなる。


「そのナイフには、アタシ特製の毒を塗ってあるの♡

普通の人間なら、とっくに動けなくなってる頃よ。

残念だけど……あんたはもう死ぬ」


部屋は静まり返る。

黒崎はうつむいたまま、ゆっくりと息を整える。

そして――。

静かに立ち上がった。


「……なっ」


赤羽の笑みが凍りつく。


「何……?」


黒崎は赤羽を真っ直ぐ見据える。

その瞳に揺らぎはない。


「私に毒は効きません。刃物による傷も、じきに塞がるでしょう」


赤羽は目を見開く。


「はぁ!?」


黒崎は淡々と告げる。


「過去の訓練で、さまざまな毒への耐性を身につけた。

見てのとおり、なんともありません」


赤羽はしばらく言葉を失っていた。

やがて額に手を当て、呆れたように笑い出す。


「あんた……」


肩を震わせながら、信じられないという表情を浮かべる。


「頭、おかしいんじゃないのぉ?」


黒崎は無言のまま一歩前へ踏み出す。

その眼差しは、ただ麗華を守るという強い意志だけを宿していた。






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