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倉庫の最奥にある一室。
薄暗い照明の下、麗華――大堂の姿となった彼女は壁際へ追い詰められていた。
赤羽はゆっくりと歩み寄る。
「あらぁ……」
妖しく微笑みながら、麗華の前髪を指先でそっとかき上げる。
「そんなに怯えちゃって」
麗華は思わず身を強張らせた。
(怖い……)
逃げようにも、後ろは壁。
赤羽は楽しむように麗華の顔を覗き込む。
その時だった。
赤羽の視線が、麗華の左耳につけたイヤホンに止まる。
「あら?」
細く目を細める。
「…なるほどね」
イヤホンから桐谷の焦った声が漏れる。
『おい!聞こえるか!…大丈夫か!?』
赤羽は口元をゆがめると、イヤホンを乱暴に取り外した。
「大丈夫なわけないでしょーが♡」
そう言って床へ放り投げる。
次の瞬間。
バキっ!!!!
赤羽は靴底でイヤホンを踏み砕いた。
雑音が走り、通信は途絶える。
「なんだか最初から違和感があったのよねぇ」
赤羽は腕を組み、麗華をじっと見つめる。
「大堂」
血走った瞳が細くなる。
「あんた……本当に大堂?」
麗華の心臓が大きく跳ねた。
だが、必死に平静を装う。
「ああ」
低い声を意識して答える。
「何、おかしなこと言ってるんだ」
赤羽から視線を逸らさず続ける。
「どう見ても、俺だろう」
赤羽はしばらく黙っていたが、やがて肩をすくめた。
「あっそ」
そう言うと、不意に麗華の肩を強くつかむ。
「きゃっ!」
思わずお嬢様らしい悲鳴が漏れる。
部屋に一瞬の静寂が流れた。
赤羽の口元がゆっくりとつり上がる。
「あははははっ!」
腹を抱えて笑い出す。
「大堂はそんな悲鳴、絶対に上げないわよぉ♡」
赤羽の瞳から笑みが消えた。
「……あんた、だあれ?」
麗華は言葉を失う。
その瞬間――。
バン!!!!!
部屋の扉が勢いよく開いた。
「お嬢様!」
黒崎だった。
赤羽が振り向くより早く、黒崎は一気に間合いを詰める。
鋭く踏み込み、迷いのない拳を振り抜いた。
「くっ!!!」
赤羽の身体が大きくのけぞり、床へ吹き飛ばされる。
「黒崎!」
麗華の瞳に、安堵の涙が浮かんだ。
黒崎は麗華をかばうように前へ立ち、倒れた赤羽を冷たい眼差しで見据えた。




