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「……なるほどな」
熊田の話を聞き終えた大堂は、小さく息を吐いた。
「桐谷はいま、赤羽の事務所にいるのか…、おそらく新垣もそこに…」
熊田は悔しそうに拳を握る。
「すみません……若頭」
大堂は首を横に振った。
「お前のせいじゃねぇ」
少し考え込むように目を閉じる。
「赤羽にはまだ、バレてないんだよな?身体が入れ替わったこと」
「はい……おそらく」
熊田は苦しそうに頷いた。
大堂はゆっくりと倉庫の奥へ視線を向ける。
「赤羽と……お嬢さんは、あの奥か」
その呟きには焦りが滲んでいた。
その時だった。
倉庫の外から、慌ただしい足音が響く。
「いたぞ!赤羽さんを援護しろ!」
怒号とともに、三十人ほどの男たちが倉庫へ駆け込んでくる。
全員が赤羽組の構成員だった。
熊田の顔から血の気が引く。
「もう……おしまいだ」
大堂はゆっくりと立ち上がる。
麗華の華奢な身体を見下ろし、小さくため息をついた。
「まったく……」
そして、男たちの前へ数歩歩み出る。
にこりと微笑み、片手を優雅に振った。
「ヤクザの皆さん」
組員たちが一斉に足を止める。
「ごきげんよう!」
夜の倉庫に、お嬢様らしい澄んだ声が響き渡る。
「……誰だ?」
「お嬢ちゃん、危ねぇから引っ込んでな」
「ここは遊び場じゃねぇぞ」
組員たちは互いに顔を見合わせ、目の前の少女に戸惑いを隠せない。
その異様な空気を切り裂くように、遠くからエンジン音が響いてきた。
一台、また一台と黒塗りの車が倉庫の前へ滑り込む。
急ブレーキとともに車が止まり、ドアが一斉に開いた。
「若頭を探せ!!!」
「若頭を援護するんだ!」
屈強な男たちが次々と車から降りてくる。
大堂組の構成員たちだった。
その姿を見た熊田は、とまどいの表情を浮かべる。
「みんな……どうして…ここに」
その中の一人が、大切そうに何かを抱えて歩み寄ってくる。
腕の中にいたのは、一匹の黒猫だった。
「見つかったか……」
大堂はほっとした様子でつぶやいた。
組員は赤いリボンをつけた黒猫を大堂に差し出した。
「話は若頭から聞いています、探していたのはこの猫ですよね?」
「そうですわ、ありがとう」
大堂は黒猫をそっと抱き上げる。
黒猫は暴れることなく、大堂の腕の中で静かに「ニャア」と鳴いた。
その小さな鳴き声を聞いた大堂は、ふっと表情を和らげる。
「……もう逃げるなよ?」
黒猫は返事をするように、もう一度静かに鳴いた。




