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夜の闇に包まれた工業地帯。
人気のない一角に建つ巨大な倉庫の前で、熊田の車がゆっくりと停車した。
エンジンが止まると同時に、倉庫の大きなシャッターがゆっくりと開いていく。
中には、黒いスーツ姿の男たちがずらりと並んでいた。
その数、およそ五十人。
全員が赤羽を待っていたかのように、一斉に頭を下げる。
「お帰りなさい、赤羽さん!」
赤羽は満足そうに両手を広げる。
「あらぁ、みんな、た・だ・い・ま♡」
嬉しそうに笑ったその直後、表情がすっと冷えた。
「なんだか分かんないんだけどぉ」
赤羽は肩をすくめながら後方を振り返る。
「鬱陶しい連中があたしたちを尾行してきてるのよねぇ」
男たちの視線が一斉に道路の先へ向く。
赤羽は妖しく微笑んだ。
「だからぁ――」
指先で軽く合図を送る。
「一人残らず始末しちゃって♡」
「はい!」
部下たちの返事が夜の倉庫に響き渡る。
熊田は咄嗟に車から降り、赤羽の方へ向かっていく。
「赤羽! てめぇ――」
乾いた破裂音が響く。
パンっ!!!!
熊田は苦しそうに片膝をおさえ、その場に倒れ込んだ。
「熊田さ…!」
麗華は思わず叫ぶ。
そのまま熊田にかけよろうとした、その時。
赤羽が麗華の腕を強引につかむ。
「大丈夫よぉ」
口元に笑みを浮かべたまま囁く。
「死んじゃいないわ♡さぁ、大堂ちゃん。奥でゆっくりお話ししましょう」
麗華は抵抗する間もなく、倉庫の奥へと連れて行かれてしまう。
その時――。
黒崎の車が倉庫の前へ急停止した。
タイヤが甲高い音を立てる。
黒崎と、麗華の姿となった大堂は同時に車を飛び出す。
目の前には、倒れ込む熊田。
そして、倉庫の中へ消えていく赤羽と麗華の姿。
「まて!!!」
黒崎が駆け出そうとした、その瞬間。
倉庫の前に並んでいた男たちが一斉に前へ出る。
行く手を遮るように、二人を取り囲んだ。
「弱そうな男と、可愛らしいお嬢ちゃんがここに何しに来たんだ?」
一人の男が低く笑う。
「何者かは知らねぇが、ここから先には行かせねぇ」
続いて、周囲の男たちもじりじりと距離を詰めてくる。
黒崎は静かにネクタイを緩める。
その隣で、大堂も拳をゆっくりと握り締めた。
二人は言葉を交わさない。
しかし、その視線だけで互いの考えは一致していた。
――ここを突破する。
夜の倉庫に、張り詰めた空気が流れる。
次の瞬間、五十人の男たちが一斉に襲いかかった。




