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15

夜の街を、二台の車が猛スピードで駆け抜ける。

前方には、熊田と赤羽、麗華が乗った車。

その後ろを、黒崎が運転する車がぴたりと追走していた。


大堂はフロントガラスの向こうを睨みつける。


「黒崎!」


怒鳴るように叫ぶ。


「もっとスピードを上げて、あの車にぶつけろ!」


黒崎は返事をしない。

ただ、アクセルをさらに深く踏み込んだ。

エンジンが低く唸りを上げ、車は一気に加速する。


「聞いてるのか!?このままじゃ逃げられるぞ!」


大堂は苛立ちを隠せず、黒崎の肩を掴む。


「お前っ――!」


その瞬間、言葉を失った。

黒崎の瞳。

バックミラー越しに映るその眼差しには、今まで見たことのない感情が宿っていた。

穏やかさも、冷静さもない。

あるのは、凍てつくような殺意だけ。

獲物を逃がすまいとする猛獣のような眼差しだった。


大堂は思わず息をのむ。


「……」


黒崎は前だけを見据えたまま、低い声で呟く。


「少し黙っていてください…」


その一言には、押し殺した怒りが滲んでいた。

大堂は思わず視線を逸らす。


――この男は、本気だ。

先ほどまで執事として穏やかに振る舞っていた男と、今ハンドルを握る男はまるで別人だった。

大堂は無意識に拳を握る。


車内には、エンジン音だけが重く響き続けていた。





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