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夜の街を、二台の車が猛スピードで駆け抜ける。
前方には、熊田と赤羽、麗華が乗った車。
その後ろを、黒崎が運転する車がぴたりと追走していた。
大堂はフロントガラスの向こうを睨みつける。
「黒崎!」
怒鳴るように叫ぶ。
「もっとスピードを上げて、あの車にぶつけろ!」
黒崎は返事をしない。
ただ、アクセルをさらに深く踏み込んだ。
エンジンが低く唸りを上げ、車は一気に加速する。
「聞いてるのか!?このままじゃ逃げられるぞ!」
大堂は苛立ちを隠せず、黒崎の肩を掴む。
「お前っ――!」
その瞬間、言葉を失った。
黒崎の瞳。
バックミラー越しに映るその眼差しには、今まで見たことのない感情が宿っていた。
穏やかさも、冷静さもない。
あるのは、凍てつくような殺意だけ。
獲物を逃がすまいとする猛獣のような眼差しだった。
大堂は思わず息をのむ。
「……」
黒崎は前だけを見据えたまま、低い声で呟く。
「少し黙っていてください…」
その一言には、押し殺した怒りが滲んでいた。
大堂は思わず視線を逸らす。
――この男は、本気だ。
先ほどまで執事として穏やかに振る舞っていた男と、今ハンドルを握る男はまるで別人だった。
大堂は無意識に拳を握る。
車内には、エンジン音だけが重く響き続けていた。




