14
「それじゃあ、大堂ちゃん」
赤羽は麗華の首から手を離すことなく、不敵な笑みを浮かべた。
「あたしと一緒に来てもらうわよぉ♡」
「っ……!」
麗華は抵抗しようとするが、赤羽の力は想像以上に強い。
腕を強引につかまれ、そのまま部屋の外へ連れ出されてしまう。
「赤羽!!!!」
桐谷が立ち上がる。
「どこへ行くつもりだ!」
部屋を出て追いかけようとした、その時。
「桐谷!」
大堂の姿をした麗華が鋭く叫んだ。
桐谷の足が止まる。
「追うな」
麗華は傷だらけの新垣へ視線を向ける。
「それより新垣を頼む」
「だが……!」
「今は仲間を優先しろ」
短く、それでいて迷いのない言葉だった。
桐谷は拳を強く握り締める。
歯を食いしばりながら、ゆっくりとうなずいた。
「……分かった」
そして再び新垣のもとへ駆け寄る。
「新垣!しっかりしろ!」
その様子を横目に、赤羽は満足そうに笑った。
◇
エレベーターが一階に到着する。
赤羽は麗華の腕をつかんだまま、ビルの外へ出た。
夜風が二人の間を吹き抜ける。
赤羽は辺りを見回しながら首をかしげる。
「あらぁ……車はどこかしら?」
その時だった。
少し離れた場所に停められた黒い車が目に入る。
運転席には熊田が座っている。
赤羽は妖しく微笑んだ。
「見つけたわ♡」
そのまま麗華を引っ張り、熊田の車へ歩いていく。
「なっ……赤羽!?」
熊田が驚いてドアを開けようとした瞬間、赤羽は素早く後部座席へ麗華を押し込み、自分も隣へ乗り込んだ。
赤羽はジャケットの内側から拳銃を取り出し、熊田の後頭部へ静かに突きつける。
「変な真似はしないこと」
甘い口調とは裏腹に、その声は氷のように冷たい。
「この近くにあたしの倉庫があるの」
赤羽は麗華を見つめ、妖しく微笑む。
「そこで、ゆっくりお話ししましょう♡」
熊田は悔しそうに奥歯を噛み締めた。
「……くそっ」
「ほら、早く発進」
銃口がわずかに押しつけられる。
熊田は静かにエンジンをかけた。
車は夜の街へ走り出していく。
その直後だった。
一台の黒い高級セダンがビルの前へ滑り込む。
急ブレーキとともに停車すると、運転席の黒崎が鋭く前方を見据えた。
「……いた」
後部座席の大堂も前方を凝視する。
走り去る車の後部座席。
そこには、自分の身体――麗華の姿が見えた。
「赤羽……!」
大堂の拳に力が入る。
黒崎は何も言わずアクセルを踏み込んだ。
エンジンが唸りを上げ、黒崎の車は前方の車を追うように勢いよく走り出す。




