13
「赤羽……」
桐谷は一歩前へ出る。
「お前の指示どおり、若頭を連れてきた」
赤羽はにんまりと笑い
「ありがと♡」
と髪をかきあげた。
桐谷は赤羽を真っ直ぐ見据える。
「約束だ。新垣を解放してくれ」
その声には焦りが滲んでいた。
「頼む……」
縄で縛られた新垣が、ゆっくりと顔を上げる。
「きり……や……さん……。わか…がしら…」
血の混じった涙を浮かべながら、かすれた声を絞り出した。
その姿に、桐谷は唇を強く噛み締める。
赤羽は二人を見比べると、肩をすくめて微笑んだ。
「いいわよぉ♡」
軽い口調で言う。
「お互い、せーので交換しましょ」
赤羽は新垣の胸ぐらを乱暴につかむと、椅子ごと引きずるように前へ押し出した。
「はい、どうぞ♡」
勢いよく手を離された新垣は、椅子ごと床へ倒れ込む。
「がっ……!」
桐谷は反射的に駆け寄った。
「新垣!」
急いで縄をほどこうと身をかがめる。
――その瞬間だった。
「もらったわ♡」
赤羽の姿が一瞬で麗華の目の前へ迫る。
「え――」
細い首に、冷たい手が絡みついた。
「うっ……!」
赤羽は片手だけで麗華の身体を引き寄せる。
鋭い指が首へ食い込み、麗華は苦しそうに顔をゆがめた。
「かはっ……!」
息ができない。
赤羽は麗華の耳元へ顔を寄せ、妖しく微笑む。
「あらぁ、大堂ちゃん」
血走った瞳が細く歪む。
「話し合いで解決するなんてあたし、一言も言ってないわよぉ♡」
「赤羽ッ!!」
桐谷が振り返る。
しかし、その腕の中には傷だらけの新垣がいる。
赤羽は麗華を盾にするように抱き寄せ、楽しそうに笑った。
「うふふっ♡こうなった方が、交渉って盛り上がるじゃなぁい?」
その狂気に満ちた笑い声が、静まり返った部屋に響き渡った。




