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非承認ヒロイン  作者: 稲川ひそぐ
第1章 革命編
11/25

第11話 スキルオーダーとステータス

 開けていて人気のない場所にボクたちは並び、すぐに戦闘システムについての勉強と実践的な体の動きを学習し始めた。主に武器の扱い方やポジションチェンジ、支援スキル、攻撃スキルの使用のタイミングなどについてだった。ボクは最初に、サクからステータスについて教えてもらった。

「リンネは、レベル上げについてどれぐらい知っている?」

「れ、レベル上げ…?」

 ボクがサクの言葉に困惑していると、サクが言った。

「ディバインパネルはちゃんと見ているか?」

「いや、全然。転生する直前以降、さっぱり」

 確かに今の今まで、武器を取り出す以外に使用はしなかった。

「なるほどな。そうであれば、ステータス画面は俺のものを見てもらった方が早そうだ」

 サクは自分の黒いディバインパネルの画面をボクに見せた。そこに光が並び、映像を作り出す。文字には次のような文言が書かれていた。

〈サク Lv5〉

役職……………銃士

ランク…………D

所有ポイント…1

取得スキル数…5

腕力……………43

防御力…………58

速度……………50

精神力…………90

知力……………400

◇ユニークスキル

 ・《本人の意思により、ユニークスキルの開示は行われていません》


「…?え、何このステータス」

「…何って、俺のステータスだが」

「いや、下の方の項目おかしくない?」

 何、知力400って。

「…知らない。あの胡散臭い男がそうしたらしい。知力や精神力に関しては…本人の元から備わっているものが反映されるのだろうな。レベルが上がったらポイントが取得できて、それでスキルを手に入れられる。適性がある者は魔法も取得できるな。魔法の能力は精神力の高さに依存するらしい。…リンネもスキルぐらい取得しておいたほうがいい。この世界で、スキルなしは99.9%死ぬ」

 ボクはその言葉に、さすがに恐ろしさを覚えて自分のディバインパネルを手に持った。…って、これどうやって立ち上げるんだろ。

「これ、どうやって起動するの?」

 サクは丁寧に説明してくれた。

「…体の中から力を解放する感覚でいい。深呼吸して、ストレス発散する感じだ」

「うーん、ストレス発散で深呼吸したりしないからなあ…感覚がわかんない」

「…確かに、ストレス発散に竹刀で人を殴っていそうだな」

 サクがぼそっと言うのを、ボクは聞き逃さなかった。

「人を勝手にチンピラにするな!」

 うーん、でもまあ、今まで結構脳筋な戦い方をしているし、そう言われても仕方がないと言えば仕方ないのかもしれない。

 パーカーのポケットに手を突っ込みながらサクは言った。

「では、普段はどうしている?」

 えー…

「ぶっちゃけてもいい?」

「いいよ」

「嫌いにならない?友達でいてくれる?」

 ボクが念を押すと、彼は今までにないほど力強くうなずいた。

「安心しろ。別に俺はお前のことが好きでもないし、友達とも思っていない」

「ひどいよ!?」

 ボクがネタっぽく言うと、サクは若干声を和らげながら言った。

「……紛れもない事実だろう。出会って一日の人間をそこまで信用できない。……殺されかけたところを救済されたことに関しては感謝している」

 ……まあ、そりゃそうか。サクは警戒心強いしね。

「……話を戻すが、普段どのようにストレス解消を行っている?」

「実は、ストレスが溜まることがそんなにないんだよね」

 これは事実だ。ボクはストレスが溜まる前に勝手に忘れるか、あるいは解決してしまえる。それに、ストレス自体にも結構耐性がある方だ。溜まったそばから勝手に消滅していくのだから、ボクはストレス解消の必要がそもそもなかった。

 結局どうすればいいかわからなかったので、仕方なく適当に力を解放する感覚でディバインパネルを握った。光がディバインパネルにともり、画面が映し出された。〈メール〉〈カメラ〉〈ステータス〉〈ストレージ〉〈装備〉〈スキル〉の6つの項目が、神秘的な緑色の光を放ちながら円形に並んで画面に表示されていた。サクが横から画面を覗き込んでくる。

「あとはスマートフォンと同じ要領だ。スワイプすれば画面が飛ぶし、タップすれば選択できる」

 ボクはステータスの項目を選択した。すると、画面が文字の浮かんでいるものに切り替わった。

「これは…?」

 映し出されたのは、次のような文言だった。


〈リンネ Lv3〉

役職……………転生者(剣士の素質あり)

ランク…………E

所有ポイント…15

取得スキル数…0

腕力……………93

防御力…………45

速度……………70

精神力…………352

知力……………85

◇ユニークスキル

 ・ヒロイン


「ふーん…まあ、納得だな」

「…精神力か……そうだね。納得と言えば納得だ。」

 ボクは何回か頷いた。確かに、剣の鍛錬を続けていれば自ずと精神力は身についてくるものだろう。

 ボクはサクに言った。

「…それにしてもこの役職のところ、転生者のままだね。素質について書かれているけど……」

「…レベル5から役職選択ができるから、それまでは転生者のままだ」

「役職かぁ…なんだかワクワクしてきたかも。それってどんなのがあるの?」

 キーラの質問に、サクは答える。

「俺が確認できた限りでは、剣士、盗賊、銃士、弓使い、魔導師の5種類があった。上位互換が全てに存在していて、一定のレベルやスキル数を獲得すれば昇級できるらしい」

「圧倒的に魔導師が人気そうだね…」

 ボクの言葉に、サクはため息をついた。

「……だろうな。射程が長くかつ威力も高い。ファンタジーの定番だし、実際お前の想像通り人気は一位だ。だが、やはり適正がない人の方が比率は高いから相対的に銃士や剣士が多くなっているのが現状だ」

 なるほど…。まあ、ボクが選べそうなのはこれしかない。

「じゃあボク、剣士になるよ」

「…それがいいと思う。一番シンプルだし、技も覚えやすいしな」

「なるほど……」

 と言いつつ、ボクは3割がた理解できていなかった。

「ところでスキルなしは死ぬって言ってたけど……スキルはどうやって取得するの?」

「うまく話題を逸らしたと思ったんだがな」

 サクは苦笑混じりに言った。

「えっ、話題を逸らしたって……?」

 サクが黒い笑顔を浮かべた。

「果たして非スキル所持者がモンスターのいるダンジョンに出たらどうなるか、少し試してみたくならないか?」

「勝手に人の命を危険に晒すな!」

 発想がマッドすぎる。まさに、狂人と天才は紙一重と言ったところだろうか。

「冗談だ。ディバインパネルを起動して〈スキル〉の項目をタップ、そこから、取得可能なスキルが並ぶから好きなものを取得すればいい」

「オッケー」

 ボクは自分のディバインパネルを取り出すと、トップ画面から〈スキル〉をタップして、スキル一覧と思しき場所の画面を開いた。

〈シュート〉           5P

〈ブレードウィング〉       5P

〈ラッシュ〉           5P

〈アクロバット〉        10P

〈カウンター〉             2P

〈パワーエンハンスメント〉       3P

〈スピードエンハンスメント〉      3P

〈ディフェンスエンハンスメント〉    3P

〈ヒーリング〉          3P

 ボクの眼前に広がっているスキルは、こんな感じだった。

「なんか、名前が地味なやつ多いね」

「…名前が地味でもスキルは使いようによってはそこらの上級スキルより格段に高い威力を発揮するはずだ。実のところ、俺がアロガン王との戦闘で使っていたのもこの中にあるアクロバットだけだ」

 驚いた。スキル一つであそこまで動きが変わるのか。ボクは、この世界におけるスキルが持つ意味の大きさがなんとなく理解できた。サクは説明を続けた。

「名前の派手さや効果については心配いらない。スキルを取得すると、次にそのスキルの派閥に位置する上位のスキルが解放されたりする。逆に言うと、計画的にポイントを使わないと大変なことになるということだ」

「ずいぶん詳しいね」

「…俺がスキルについて知った経緯がどうであれ、リンネはスキルを早く取得した方がいいだろうな」

 サクはあからさまに話題を逸らし、ボクはなんとなくこの辺の話題に触れてほしくはないんだな、と思って話を進めることにした。

「それじゃ、どれを取得した方がいいかな?」

 サクは少し目を細めてから、言った。

「…お前の戦闘でのポジションは前線に出て敵を攻撃するアタッカーだ。となると、後方支援の回復だけだとまかないきれない可能性があるから、自己回復の手段も兼ねて〈ヒーリング〉は絶対に必要だ」

「ああ、なるほど…って、なんでボクが前線に出ること前提なの!?」

 納得しかけ、すんでのところでおかしい部分に気がつく。

「…俺の武器はなんだ?」

 サクが冷静に聞いてきたので、ボクも冷静になって返す。

「…拳銃」

「強いモンスター相手に真正面からは?」

 あ、そういうことか。ボクはようやくサクの言いたいことを理解した。

「戦えません」

「理解してもらえたか?…攻撃力を高めておくためにも攻撃系スキルの〈ラッシュ〉と〈ブレードウィング〉は覚えておいた方がいい。ついでに〈カウンター〉を覚えて守りを固めるか、あるいは〈アクロバット〉を覚えて回避率を上げておくのもいいかもしれないな」

「スキルの性能は見られないの?」

「タップしたら詳細が見られるぞ」

〈ブレードウィング〉

 ◇攻撃スキル

 ◇連続使用可能回数  5回

 ◇連続使用ペナルティ 移動速度低下

 ◇クールダウン    10分

 説明

ダメージを重視した斬撃を放つ。敵に向けて剣を振りかぶる重い一撃。隙が大きいがダメージは絶大である。振り上げながら発動すると、自分の身長の五倍の高さまで跳躍して空中戦に持ち込むことができ、空中で一撃を当てると地上戦に戻る。スイングするスピード、ダメージは腕力に依存する。3回以上他のスキルを挟まずに連続使用すると、クールダウンに入ったときにスピードが落ちる。


〈ラッシュ〉

 ◇攻撃スキル

 ◇連続使用可能回数 10回

 ◇連続使用ペナルティ 防御力低下

 ◇クールダウン    5分

 説明

威力をある程度分散させた素早い連続攻撃を放つ。巻き込める攻撃範囲が広いが、威力が落ちやすいために至近距離で使う必要がある。連続使用によるクールダウン中のペナルティは防御力低下。


 キリがないので要約すると、〈シュート〉は何か手に持っているアイテムを打ち出すスキル、〈アクロバット〉は名前の通りアクロバットをすることによって攻撃を回避するスキル、〈パワーエンハンスメント〉は自分の攻撃力を上げるスキル、〈スピードエンハンスメント〉は自分の移動速度を上げるスキル、〈ディフェンスエンハンスメント〉は自分の防御力を上げるスキル、〈カウンター〉は今自分が受け止めている攻撃を打ち返した上で、相手に反撃で切り込むスキル、〈ヒーリング〉は自分の傷と体力を回復するスキルだった。全部に連続使用可能回数と連続使用ペナルティみたいなのが書いてるけど、これってなんだろう?サクは少し待っているような雰囲気だし、早く決めよう。とりあえず、サクの意見に合わせて〈ヒーリング〉を選択した。

『このスキルを取得しますか?』

  【はい】      【いいえ】


 ボクが【はい】を選んだ瞬間、ディバインパネルの画面からエメラルドグリーンの光が一つ飛び出し、ボクの周りを足元から頭までを上昇しながらぐるぐる回ってから、ボクの左胸に向けて飛び込んできた。…体に熱い感触がある。

『ヒーリングを取得しました』

 ボクがスキル一覧、と言うディバインパネル画面に目を戻すと、取得済みスキルという項目ができて、そこに1と表示されていた。

「…ヒーリングだけか?」

 サクに言われて、ボクはスキル取得に戻った。結果、ボクが取ったのは全部で四つとなった。〈ブレードウィング〉〈ラッシュ〉〈カウンター〉〈ヒーリング〉だ。

 攻撃スキルの時は赤色、防御スキルの時は青色、強化スキルの場合は緑色の光が出てくるらしかった。そのあとサクに聞いた話によると、魔法は属性によって色が変わるらしい。

一度にスキルを取りすぎたせいか、頭がホワホワしている。慣れない感覚だけど、嫌な気分ではない。

 感覚に慣れると、ボクは気になっていることを質問することにした。

「サク、このスキルに書いている連続使用可能回数と連続使用ペナルティって何?」

「アクロバットやカウンターなどのオーダーなしに使用できるスキル、パワーエンハンスメントなどの自己強化のスキルという一部例外を除く全てのスキルに連続使用可能回数、連続使用ペナルティ、そしてクールダウンというものが存在する。

 連続使用可能回数は、文字通り連続で何回そのスキルが使用できるかを表す。連続使用可能回数は、最後にスキルを使用した時から始まるクールダウンが終了するたびに全回復する。その際、指定された回数以上他のスキルを挟まずに連続して同じスキルを使用した場合、連続使用ペナルティというものが発生する。ある種のデバフだから、何度スキルを使ったかは覚えておくほうがいい」

 サクは一息つくと続けた。

「それを踏まえた上で、スキルを使用するにはオーダー、またはスキルオーダーとも言われるアクションが必要だ」

「オーダー?よく見る戦闘アニメみたいにスキル名をいちいち口にするってこと?」

「まあ、そういうことだな」

 ええ…ちょっと恥ずかしいかもしれない。

「アクロバットなどの緊急回避系のスキルは頭に思い浮かべるだけでいちいちオーダーする必要がないが、カウンターやラッシュなどはオーダーが必要だ。そのスキルを使おうと意図してスキル名を言うことにより、オーダーしたことになる」

 キーラが数度頷いた。

「つまり、取得したスキルについて話すときにスキル名を話しても、それはスキルを使おうとして口にしたわけではないからオーダーしたカウントにはならないってこと?」

「そういうことだ。…今から練習するぞ。キーラ、お前のスキル取得は終わっているか?」

「うん、ある程度は…」

 サクはキーラのディバインパネルを覗き込み、頷いた。

「…何があるかわからないからな。上出来だ」

 どんなスキルが並んでいたかはわからないが、きっと実用的なスキルだったのだろう。

 3時間ほど練習すると、もう日が暮れてきた。

「…よし、今日はここまでにしよう。明日からは人員募集と並行してやるぞ」

「わかった」

 ここまででわかったのは、サクはやはり凄腕の拳銃使いだと言うこと、スキルの扱い方だった。

「ところで、協力してくれそうな人のアテって誰?」

「…アポは取っているから、彼女がその気になったら来てくれるだろう。いずれにしても、話した時は半信半疑といった感じだったからな」

「そんな人、本当に協力してくれるの?」

 ボクは、かなり不安だった。

「…確証はない。彼女は気まぐれなものでな」

 サクはため息をついた。あまり期待できそうな反応ではない。

「おーっと、手が滑っちまったなあ!」

 突然そんな野太い声が聞こえて、ボクの頭上から水の塊が降ってきた。

「!?」

 とんでもない悪臭のするその水は、ボクに吐き気を催させた。

「ゴキブリを煎じた子供が近所にいてなぁ、片付けに行こうと思ったら、たまたまあんたにぶっかけちまった。悪いな」

 バケツを持った豚のように太った男は下卑た笑みを浮かべながらそう言った。

「…そうですか、お気をつけて」

 ボクは言い返したくなる衝動を堪えた。

「…チッ」

 明らかに、今豚の方から舌打ちが聞こえた。

「それじゃあ失礼する…よ!」

 言葉と共に、思いっきり足を踏まれた。

「っ…」

 体重100キロ以上はあろうかという豚に足を踏まれたのだ。痛くないわけがなかった。

「うーん、()()()()踏んでしまったなぁ」

 そう言いつつ、靴の踵でぐりぐりと足の甲を踏み躙られる。こいつがわざとボクの足を踏んでいるのは明白だった。

「…あの、足を退けてもらえますか?」

「虫けら風情が上層貴族のボクちんには向かうなんて…少々、たたき込んでやる必要があるようだな」

「がっ!」

 その直後、ボクの視界に火花が散った。少し下に目を向けると、豚の短くも丸太より太い脚がボクの腹に突き刺さっていた。臓器に響く衝撃がボクを襲い、なすすべなく後ろに倒れこんでしまう。でも、剣の鍛錬を長年積んできたせいか豚の方から目を逸らすことはなかった。

「はあ、腹が立つんだよなぁ。倒しても倒しても目を逸らしてこない、挑戦的でクソ生意気なやつ。ほら、もっと鳴けよ!」

 豚はボクの腹の上にドスンと足を乗せ、そのまま何度も踏んづけた。服がゾウみたいなデカさの靴跡だらけになるのに、そう時間はかからなかった。吐き気がしたし、何より重かった。四輪バギーを乗せられても、ここまで重いとは思わないだろう。臭いとダメージのダブルパンチはかなり効く。姉さんが確か、そんな精神攻撃の方法もあると言っていた気がする。

「…おい、リンネから離れろ」

 サクが鋭い目で睨むと、今度は豚がサクの方を見た。

「お前は俺に向かって何様だッ!」

 ドスッ、と鈍い音がして、サクの体が後ろに吹っ飛んだ。

「ふんっ、王子様気取りが。ざまあないな」

 サクはうめきながら立ち上がろうとしていたが、豚がそれを放っておくはずもなかった。豚はサクの頭の近くに来ると、思いっきりその頭を蹴り飛ばしたのだ。一度では飽き足らず、何度も、何度も彼の頭を蹴り飛ばした。

「…あんた…いい加減にしなさい!」

 キーラは堪忍袋の緒が切れたのか、突進した。

「痛いなあ…尼はせいぜい、ベッドでアンアン喘いでればいいんだよ!」

 豚はキーラの攻撃を脂肪で防ぎ、キーラを張り倒した。豚はのしのしと、キーラの方に歩み寄った。髪を掴んで立ち上がらせ、腹にパンチを入れる。まるで棒切れのようにキーラを投げ捨てると、サクの方を向いて今度は顔にパンチを入れた。

 …蹂躙される仲間を見て。ボクは我慢に限界があることを悟った。

「……ボクは、人を傷つけないと決めている。この手は、人を殺す手じゃない」

「あん?」

 豚は、興味なさそうにこちらを見た。

「家畜以下のクズは黙れと…」

「だが、仲間を蹂躙するというなら話は別だ!」

 ボクは一喝し、男の方に詰め寄った。豚が、びくりと肩を震わせる。

「…今に見てろ。地獄の底まで突き落としてやる!」

「貴様ら、何をしている!」

 ボクが言い放ったその時、剣士が飛んできた。

「ああ、痛い、痛い…」

 それを見届けた豚が、突然横腹を抑えてうめき始めた。

「おい、転生者リンネ、サク、キーラ!これは一体全体どういうつもりだ!上層貴族に暴行を加えるなど…!」

「違う、ボクたちはやってません!ボクたちの格好を見ればわかるでしょう!?」

 しかし、豚は嬉々として言った。

「そうだ!殴る蹴る、罵詈雑言を浴びせるなど、ひどい有様だ!どうなっている!」

 剣士はチラリと訝しげにこちらを見た。

「…ドブくさい奴の証言は信用できない。とにかく、貴様らが貴族を貶めたことは確実なのだ。それが何を意味するかはわかるな?」

「おい待て、確かな証言もまだ…ゲホッ、ゲホッ…」

 サクは頭から血を流しながら何かを訴えていたが、剣士は聞く気もさらさらないようだった。

「……」

 キーラは黙り込んでしまっていた。その顔に、いつもの笑顔はない。剣士は、豚と同じ笑みを浮かべた。

「…さて、パーティーを編成する時間もなかったなぁ。残念だが、ダンジョンへ向かうまでの期間、貴様らにはこの世の地獄とも呼べる場所で暮らしてもらうぞ」

 そうか、ボクたちははめられたんだな。ボクはそんなことに、今更気づくのだった。

 ボクたちは剣士に引っ立てられて、街の中を連行された。街の人々は、皆ぼんやりとした目でこちらを見ている。痩せこけた顔からは、憐れみの感情が見てとれた。

「…ここだ」

 剣士はそう言って、目の前にある地獄の門のようなものを指差した。上には有刺鉄線が巻かれ、この門自体も金属製だ。剣士が門の鍵を巨大な南京錠に挿し、門が音もなくすうっと開く。

「さあ、入れ」

 ボクたちが蹴り入れられたのは、罪人が集う場所……すなわち罪人街と呼ばれる場所だった。

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