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非承認ヒロイン  作者: 稲川ひそぐ
第1章 革命編
10/25

第10話 ライバル

「えっ、何ここ…」

 ボクたちが次に目覚めたのは、空中だった。いや、正確には木に縛りつけられ、ぶら下げられている巨大な鳥カゴの中だ。両腕は体の前で手錠によって繋ぎ止められ、胸のあたりには、何か紙が貼ってあった。頑張って下を見て読んでみると、そこには『ボクは愚かにも国に反抗した大バカ者です』と書いてあった。ご丁寧に、一人称までそのまま再現されている。

「…えっ…これって?」

「…見ればわかるだろう。晒し者だ」

 サクが隣でぼそっと言った。その手首には、輪の部分に『封』と赤い文字が刻まれている手錠がつけられていた。

「でも、なんで晒し者にされてるの?」

「…心当たりがあるだろう。2つも3つもな」

 城でテロとも言える発言をしたり、大暴れしたり、騎士や剣士たちの精鋭部隊をぶっ飛ばしたり…

「…うん、心当たりしかない」

 答えつつ、ボクは羞恥に顔が赤くなるのを感じた。さっきから周りの目線が嫌というほど体に突き刺さっている。国から支給されたボクの戦闘服はまあ…知っての通りだからかなり無防備である。客観的に見ると、それがボロボロに破れた服を着た少女(男)がカゴに入れられて木に吊るされているという、なんともアレな光景なのである。主に男衆からの熱い目線は、嫌というほどボクの体に注がれていた。

「うっ……」

 …そしてボクには、もう一つどうしても心配なことがあった。風が少しでも吹いたら、慣れないひらひらした布が持ち上がってしまいそうなのだ。ただでさえこんな格好をさせられて恥ずかしいのに、公衆の前で下着公開なんて事件が起きてしまったら?ボクはその時点で死ねる自信がある………!というか第一、死ぬ直前下はトランクスだった。スカートが持ち上がってそれが見られると、相当まずいことになる……!ばれる、大騒ぎになる、もれなく処刑されるの3連コンボだ。…頼む、それだけは勘弁してくれ………!ボクが風が吹かないことを必死で祈っていると、サクが嘲笑気味の声で言った。

「それより、呑気に話をしている場合か?」

「えっ?」

「自分たちの状況のまずさを自覚した方がいい」

 彼が唯一動かせる顔をさっと上に向ける。ボクがつられて上を見ると、そこには周りにルーン文字が刻まれた、光りながら回る円のようなものがあった。起きた時から明るかったのはこのせいか。

「な、何なの?これ…」

 キーラが、恐ろしそうに魔法陣を見上げていた。明るい彼女の表情はなく、恐怖に慄く一人の女の子の表情がそこにあった。

「攻撃魔法陣だな。何もしなければここで死ぬ」

 サクは冷たくそう言い、興味深そうに眺めてくる国民たちをぼんやりと眺めていた。…いや、観察しているのかもしれない。ボクには、サクが観察しているときの目とただぼんやりしているときの目の区別がつかなかった。ちょっとだけそんなことをしてから、サクがボクの方を見た。

「…晒し上げられているその格好が妙に似合っているのが困るな」

 サク、それは褒めてるのか貶してるのかどっちなんだ?

と、そんなことをしていると、王様が歩いてきた。…数人の転生勇者を連れて。

「…国民たちよ、聞くがいい!」

 王様は広場に声を轟かせた。

「この者たちは我が国に反抗するだけではなく、我々の管轄する組織までをも辱めた不届きものだ!そのような者どもには、どのような刑罰を与えるのが妥当だと考えるか、言ってみせよ!」

 いや、現状辱めを受けているのはボクたちなんだけどね?

「処刑だー!」「そうだ!王様、そんな奴ら、やっちまえー!」「死刑、死刑だー!」

 国民たちは、どこか軽薄な声でそう言った。

「さよう。奴らには死んでもらわねばならない。ということで、転生勇者3人を連れてきた。さあ、転生勇者よ、お前たちの出番だ。死こそ救済。悪魔に魂を売り渡した奴らを処刑するのだ!ここにレバーがある。そのレバーを引けば、そこに対応する魔法陣から火の玉が出て、奴らは木っ端微塵になることだろう」

「…了解しました」

 ぼそっと、口々に似たような内容を言いながら転生勇者3人はボクたちの目の前に立った。なるほど、そこには地面に刺さっているレバーがある。ボクの前に立っているのは、細身で背が高く、目つきが悪い気が強そうな男の子だった。ロイヤルブルーの短い直毛が目を引く。マントのついた鎧付き青色ジャケットを纏っていてその容貌は先ほど見たものだった。…仮面を外した姿のヤマトだ。おそらく、仮面はサクのレゾナンスエッジで破壊されたのだろう。

「…困惑してる?」

 ボクがボソッと聞くと、ヤマトは有無を言わせぬ瞳でこちらを見た。

「まさか。害悪は殺すだけだ」

 …この反応、流暢に喋っているしどうやら仮面が洗脳を完成させるデバイスだと見て良さそうだ。

「…それはそうと、仮面はどうしたの?」

「あれは戦闘の時以外は基本着けないように命令されてるんだよ。どっかの誰かさん方のお陰で、今は修理中だがな。…というか、お前悪魔の手先だろ。何堂々と俺に話しかけてるんだ?」

 気を取り直したように、こちらを睨んでくる。

「ボクは悪魔の手先じゃないって!証拠がどこにあるの?」

「…諦めろ、証拠しかない」

 サクが隣で呟くように言った。

「転生勇者とはいえ、同じ世界から転生してきた同級生なのになんでこんな差があるかな。…ここも結局クソゲーかよ…」

 気に食わないことがあるたびに口にする、クソゲーって口癖……まさかこいつ…

「…ねえ、ひょっとして、慧?」

 …皇衣慧(すめらぎけい)。前世でボクのクラスメイトだった人物だ。高校に少し通いはじめたあたりの頃に接点があったので、異様に覚えていたらしい。

「…おい、手前…まさか今まで俺を忘れてたなんて言わねえよな?」

 あ、この反応はおそらくビンゴだ。…だとしたら、こんなに様変わりしたボクの容姿を見てよくボクだってわかったな。

「なんで手前がこんなところにいるんだよ!ある日突然死にましたなんていう奴じゃねえだろ!?」

「それはこっちのセリフだよ!なんで慧がこんなところにいるんだよ!?」

 …そして接点というのは、高校に通い始めたあたりで『お前はぼっちだ』などと言ってウザ絡みされ、ボクが不快だという意思を伝えるとさらにウザ絡みが加速。我慢しきれずに教師に相談し、後日二者面談することになったというものだった。

 そしてなぜか剣道、フェンシング、居合道、西洋剣術の教室全てで一緒で、しかもなぜか全ての試合がボクたちの戦いになっていた。正真正銘のライバルだ。地元でも実力者同士の戦いみたいな感じで、賭け事も裏で行われていたらしい。

「…お前、この世界に来てまで力をひけらかしたいのかよ?恥ずかしいと思わねえのか?」

「それこそこっちのセリフだってば!慧こそ、こんな国家に従ってて恥ずかしくないの?」

 ボクはイライラしながら慧を睨みつけた。

「その体裁でよく言えるな。あと前世の名前で呼ぶんじゃねえ!今の俺はヤマトだ!」

 ヤマトは、前世でも承認欲求が異常に強かった。戦いの際にも常に真剣で、認められなければ本気で怒った。徒競走でいい成績を出して認められなかった時、夜通しテスト勉強してもいい成績が出なかった時、練習でボクに負けた時、自分から突っ掛かったくせに相手が悪いという自分の主張が通らなかった時……本当に、ことの大小は関係なしに怒ったんだ。だからボクは、正直慧のことがあまり好きではなかった。印象最悪な人物、というランキングを作ったらワースト1位に君臨するやつだったと思う。…そのくせイケメンだし剣は異常に強くて、大会でも何度も優勝しているのが悔しいところだった。いわゆる残念イケメンっていうやつだ。

「この国家に従う理由?認められるからに決まってるだろ。ここなら、前世みたいに馬鹿にされることもない。金のために人にせびる必要もない。劣等感に苛まれることも…ない。どんなものが犠牲になったって、従う他はねえわけだ」

「ヤマトは変わってないんだね。そういう卑怯な環境に頼るから本当に人に認めてもらえないんだよ」

 ヤマトの表情が、途端に暗いものに変わった。…決して、落ち込んでいるとかそういうニュアンスじゃない。音が全くしない夜みたいに、怖い暗さがある。暗い怒り…そんな感じに形容できそうな表情だった。

「…あ?お説教は間に合ってるんだよ。綺麗事しか並べられねえボンクラ野郎が」

 …ああ、やっぱりこいつは嫌なやつ奴だ。変わってない。人に認められるためならなんだってするし、どんな犠牲も惜しくないんだ。

「ボクだって、君と顔は合わせたくないよ」

「…顔はともかく、手合わせは一回していただきたかったんだがな。前世でのうらみつらみ全部、手前にぶつけて勝って認めさせてやりたかったよ」

「死ぬ前提で話を進めるな!」

 ヤマトは鼻で笑った。

「じゃあ、この状況から逃げられるとでも思ってるのか?ここから逃げ出したら王様よりも先に男どもが黙ってないと思うぜ?…絶対、使える(・・・)だろうからな」

「〜〜!」

 怒りと嫌悪感で声にならない叫びを押し殺し、ボクは結果的に黙るしかなかった。

「どうしたんだ?正論攻撃でぐうの音も出ないか?」

 悔しいけど、全部その通りだった。この状況からボクの力だけで逃げ出すことはまず不可能だ。ヤマトは荒々しくため息をついた。

「…ったく、『ミッドナイトイーグル』もかたなしになっちまってたし、一体どうなってるんだよ…」

「…ミッドナイトイーグル?」

 確か、城の剣士たちが話していた転生者狩りリザレクサースレイヤーなるものの集まりだったはずだ。

「しらばっくれんじゃねえ!お前らが暴れたせいで『ミッドナイトイーグル』のメンバーが3人も無駄に負傷したんだぞ」

 負傷?彼の口ぶりからすると、ボクたちを気絶させたのが『ミッドナイトイーグル』のメンバーと考えて良いだろう。

「…それってボロマントの人たち?」

 苦虫を噛み潰したような顔でヤマトは言った。

「ああ。…わかりきってるくせに」

 …ならおかしい。ボクたちはそいつらに気絶させられたはずだ。突然のことで対応は追いつかなかった。…にもかかわらず、あのボロマントたちは一人残らず伸びていたという。これは一体全体、どういうことだろう。

「…ならおかしい。だって、ボクたちはそいつらに気絶させられたんだから」

「は?何言ってるんだ?」

 ヤマトがこちらを睨んだ。

「ミッドナイトイーグルのメンバーを倒したのは誰なんだろう?奇襲をかけられて、ボクたちは防戦に入ることさえできなかったんだ」

「んなわけ…じゃあ誰がやったって言うんだよ?」

 ヤマトが呆れた目でこちらを見ながら言った。

「…わからない」

 ボクは正直に答えた。ヤマトは鼻でせせら笑った。

「はっ、やっぱり証拠も何もねえんじゃねえか」

 こちらがギスギスした雰囲気になっている一方で、サクは目の前に立つ王様に連れてこられたフェードに話しかけていた。

「…また会ったな」

「……………」

 サクが話しかけても、フェードはぼうっとしたまま、動かない。その目はとろんとしていて、眠たそうにも見えた。でも、まるで狂ったかのように口元に浮かべている笑みはゾンビのようだった。目が、ぼうっと青く光っていた。

「…34・7・7・7・8・92・1・18・1」

 サクが、聞き取れないほどの声で何かをボソボソと下に向かって呟いた。

「……」

 ややあって、フェードがほんの僅かにこくりと頷いた。集中していないと見逃すレベルの、最低限を突き詰めた動作だったのでサクを除く周りには気づかれていないようだ。

「…頼む」

 小声でそう言ったサクから一瞬、水のようなゆらめく不思議な気配が漂った。

「…おい、国王」

 その直後、サクの声が王様に向けられて凍りついた。

「何だ?命乞いか?」

 王様は偉そうにふんぞり返りながら言った。

「いや、違う」

 サクがゆっくりと、王様を見下ろしながら言った。その顔には、威圧するかのような笑みが浮かんでいた。…正直、格好を差し置いたとしてもかなり怖い。

「だとしたらなんだ。傲慢にも国に反抗しようというのか?」

 王様がサクを睨み上げながら言った。

「…ああ。俺たちは誇りを捨てない。こんな薄汚い国家の王に処刑されるなんて真平ごめんだな。ただ、あの塔のダンジョンに落とすのだけは勘弁して欲しいよ。何せ、レベル100の魔王クラスのダンジョンマスターがいるそうじゃないか。あそこへ落とされたら、なんて想像もしたくない。何せ、レベルは3人とも一桁だしな」

 王様の顔が、勝利を確信したものになった。みるみるうちにその目尻が笑いを浮かべ、口元にはニタニタとした笑顔を隠そうとしている感じが丸わかりの変化が現れた。そしてサクに向かって、煽るように、言った。

「なるほど、貴様、あの60階層にいるダンジョンマスターが怖いのか?」

「…ああ。レベルが低い奴らにとってはあんな化け物、恐怖の対象でしかないだろう。立身出世を重ねたお偉いさん方には、到底理解できないだろうがな」

 王様は、ねたりと笑った。

「では、貴様らは全員あのダンジョンマスターの生贄にしてやるとしよう。国民たちよ、それでいいな?」

「おうともよ!」「ダンジョンマスターがいかにかっこよくこいつらを殺してくれるか楽しみだぜ!」「王様、敵が最も嫌がることをして殺そうとするとは素晴らしいお考えですよ!」「ここから見られないのが残念だなぁ」

 依然として観衆は棒読みだが、ボクたちはどうやら、レベル100の魔王相手に戦うことになってしまったらしい。しかし、サク本人はそれで満足そうに口端に薄笑いを浮かべていた。なんでだ!?サクが王様に向かって言った。

「…ただ、俺たちの武器、装備の返却、および俺たちの武器の購入、そしてパーティー編成を行う許可を出していただきたい。…それをするための一週間の準備期間を与えて欲しい」

 王様は、少し考えてるみたいだった。サクが小声でボクに言った。

「…おそらくあいつは、こいつらが少しでも苦しんだほうが楽しめるだろう、などという浅はかな考えで許可してくれるはずだ」

 サクの読み通り、王様はあっさりとボクたちの武器購入を許可してくれた。ただし、晒し者にされたときの貼り紙付きで、全員魔力を封じる手錠をつけたままっていう条件付きだけど。

 サクは鬱陶しそうに張り紙と手錠を見ながら、ボクたちに言った。

「…まずは買い物だな。リンネは、直剣を購入してくれ。今購入できる中で一番上質なものだ」

「いいけど、なんで?」

「…お前は力が強いだろうし、多少重い武器でも使えるだろう。スキル取得も忘れずに頼む」

 スキルとか気になるところはあるけど、今はそれを聞くタイミングではなさそうだ。サクがボクの方を向いた。

「…それで、お前が現時点で使えるスキルはなんだ?」

「スキルとか全然分からないよ?」

 ボクが応答すると、サクはうなずいた。

「…だろうな。まあひとまず、パワープレーが可能ということでいいな?」

「言い方は非常に不本意だけど、まあそうなると思うよ」

「…キーラ、お前は?」

 キーラは考え込んだ。

「うーん…縛られてたし、そこからリンちゃんに助けられるまでの記憶があまりないんだよね…」

 …記憶がない間彼女は山賊の男の腕にかぶりついていたが、そのことについては深く掘り下げないことにする。ボクの思考をよそに、サクは顎に手を当てた。

「なるほど、体力は?」

「自信あるよ」

 キーラがふんっ、と腕を曲げて力瘤を作ってみせる。あ、意外に筋肉ある。ちなみに、チェーンはそこそこ長さがあったので多少であれば腕を動かしても問題はなかった。

「…どれぐらいもつ?」

「1キロ全力疾走しても、息切れしない程度にはもつわよ」

「…化け物か何かか?」

 もしもこれが事実だとしたら、完全にステータスがイカれている。何か、身体強化系のユニークスキルでも持っているのだろうか。サクは目を瞑って少し考えるようなそぶりを見せた後、すぐに目を開いて町の方に体を向けた。

「…問題は山積みだが、リンネたちへのスキルやオーダーの説明は後回しにした方が建設的か……。よし、急いで武器屋に行くぞ」

 そういうことで、ボクたちは武器屋で買い物をすることになった。武器屋のおじさんはさっきの経緯を見ていたらしく…いや、見ていなくても胸にこんなみっともないこと書かれた紙を貼り付けてるんだから、何があったかは気付くだろうけど、気の毒そうな表情をした。

「…よう、まあ、なんだ。大変だな。まけてくから、好きな武器購入してくれ」

 人の良さそうなおじさんは、武器を紹介してくれた。ボクはサクの指示通り、一番上質な直剣を購入した。まあどっち道、今のボクじゃギフトを使いこなせないしな。ボクが購入したのは、黒い刃有する直剣のパルスエッジだった。バスタードソードに近い形である。刃渡り80センチ、剣幅は5センチ、重さは7kg(小さめの柴犬)ほど。感情の起伏に応じて特殊な効果を発動することができるらしい。

「それじゃあ、幸運を祈ってるよ」

 おじさんがそう言ったところで、サクが手をあげた。

「あの、よかったらあの塔のダンジョンの各フロアのボスについて教えてもらえませんか。手強かったやつ一体だけでもいいので」

「ああ。もちろんいいとも。あのダンジョンの3階層にいるあのボスは強かった。わしもその場所に居合わせたが、危うく殺されるところだった。ダンジョンボスについては情報が先にディバインパネルに出るのだが、その情報が『体が変化しないフロアボス』だったんだ」

 ボクは質問した。

「それって、状況に合わせて体が変形しない……ってことですか?」

「そう思うだろう?だが、我々は少しもダメージを与えられないどころか返り討ちにされたんだ」

 キーラがううんと唸った。

「3階層のボスでさえこれなのに、60階層のダンジョンマスターなんて、本当に倒せるの?」

「…大丈夫っていう自信がないと、サクだってこんな無謀なことしないと思う。今はひとまず、彼を信じよう」

 ボクはキーラに言うと同時に、自分も不安になっていた。若干、自分に言い聞かせてる雰囲気もあったかもしれない。サクはキーラとボクを見た。迷いのない瞳だった。

「…俺に任せろ。一から十まで完璧に(・・・)練り上げてやる」

 サクはそう言ってさっさと次の場所へと歩いて行ってしまい、20分足らずで戻ってきた。

「…情報は集まった。作戦も大筋だけは考えた。ただ、ひとつだけ大きな問題が出現した」

 もう作戦を考えたのか…?って言うか、足りないものって?サクと話していると、ボクの頭の中はすぐさま疑問で一杯になる。それはキーラも同じなのか、大きな目をぱちくりしている。ボクとキーラは、ほぼ同時に口にする。

「「…それはつまり……?」」

 サクが少し黙ってから、口を開いた。

「…欠員だ。どう考えても、この人数とこのメンバーではまかないきれない」

「どうするつもりなの?」

 キーラが深刻そうな顔をする。

 サクは腕を組んでから言った。

「…協力してくれるアテは、一つだけある。ひとまずは、彼女を頼ってみようと思う」

「つまり、欠員は埋まりそうなの?」

 ボクの問いに、サクは小さく頷いた。

「ああ。うまくことが運べば、な。アイテムクラフトができる人員と、近接の戦闘ができる人員、何より回復に特化している人員が欲しいところだ」

 サクなりに考えがあるらしい。

「なんでアイテムをクラフトできる人を入れるの?」

「…俺たちでは、確実にステータスが足りない。だから、状況に合わせたアイテムを作成できる人に協力を求めたい、というわけだ」

 サクの言葉は、非常に説得力があった。なるほど、それならこの編成になったことも納得だ。

 ボクと近接戦闘ができる人が突っ込んで、回復できる人が支援をして、サクとキーラがボクの援護射撃をする構成だ。でも確かに、これじゃ誰かにヘイトが向いた時に守りきれるとも限らない。何かアイテムがあった方が生存確率は上がる。強力なボスモンスターともなれば尚更だ。ボクが前世でネットゲームをやっていた時も、クラフターを入れなかったせいで潰れていくパーティーを何回も目にしていた。やっぱり元を固めてくれる人が重要になってくるのだ。

「…その前に、俺たち自身も準備する必要がある。とにかく戦闘の練習をして、実践的な経験を積んでおくぞ」

「ああ……なるほど」

 どれだけメンバーを揃えても、全員が本番で動けなかったら意味がないからね。

「戦闘システムについてはある程度調べてきたから、ひとまずはそのシステムの基本形に沿って戦っていくとしよう。…そしてリンネ、練習が終わったらお前に頼みたいことがある」

「うん。わかった」

 ボクは笑顔と共に快諾した。

「…よし、始めるぞ」

 サクがそう言うと、ボクたちは体を動かすために街の外れへと移動した。

7キログラムの身近なものってなかなかないんだよね・・・

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