Re:第一話「再びの目覚めと困惑」
誰かの独白。
「正直、私は田中大地が嫌いです。」
もっと自己中心的でもいいんだよ?
もっと好きに生きて良いんだよ?
何故そこまで頑固なの?
「チャンスをあげる!度はちゃんと好きに生きてね!」
田中大地は目が覚めた。
揺れている。馬車の中だ。
身体が小さい。
(……馬車?それに鉄の匂い?この状況は!?)
田中大地——元34歳、男、サラリーマン——は、二度目の異世界に目覚めた瞬間、ため息をついた。
◇
大地は冷静に状況を確認した。
馬車の中。揺れている。外から剣戟の音。悲鳴。床に広がる血。
隣に女性が座っている。淡い金の髪。青ざめた顔。
(この顔、オパリアの母親⋯⋯だな)
大地は自身の記憶を探る、生前⋯⋯日本での記憶はある。やはり初出勤した日の電柱に止まった鳩の数まで正確に覚えている。オパリアとして10年過ごした日々の記憶、オパリアの事、レオンの事、禁忌魔法の事も。
オパリアとして最後に見た、庭の白い花の数まで全部覚えている。
(馬車の外が騒がしい。例の襲撃直後か?)
賊に偽装した刺客に襲われている。
父親が重傷を負う。
母親もオパリアも共に重症を負い、母親が魂繋ぎを発動させて大地を呼び込んだ——そういう経緯だったな。
しかし今回は、既に大地がここにいる。
(つまり術式は既に発動済みなのか?それとも別の——)
母親が大地を見た。
「オパリア、気がついた?大丈夫——」
その瞬間、大地は母親の手を取った。
(死なせる訳にはいかないな。生きた状態で聞きたいことがある。……アメリアに叩き込まれた治癒魔法。使えるはずだ)
大地は意識を集中した。
記憶の中の感覚を頼りに魔力が、流れた。
(思ったより素直に出たな)
母親の傷が光を帯び、塞がっていく。深い傷だがこれでしばらくもつだろう。
母親の顔が、驚愕で固まった。
「これは——今、あなたが?」
「説明は後でする。今はもう一人の方を先に対処する」
大地は立ち上がった。オパリアの小さな身体でドアに手をかけた。
「ちょっと、オパリア!?」
◇
「馬車を戻せ」
大地は御者に言った。
「オパリアの父親の元へ」
「え!?し、しかし賊が——」
「いいから戻せ。早くしろ!」
「は、はいぃ!」
5歳の少女とは思えない怒号が飛び。御者は震え上がりながら馬を急かした。
母親が大地を掴んだ。
「これは一体、どういうことなの?あなたは一体?今魔法を——魔法を使えるなんて——」
「後で全部話す」
「後でって——」
「今は急ぐ」
◇
馬車が止まった。
大地はドアを蹴り開けた。
馬車から降り立った大地は、足元の地面に転がった剣に気が付く。それを拾い上げた。
前方に、男が一人。振り上げた剣。その下に、倒れた人間。
(父親だな。間に合う)
大地は走った。
五歳の身体だ。歩幅が小さい。しかし——記憶と経験から身につけた動作は、身体の大きさには関係ない。
速度が出た。
男が気づき驚いた様子で振り返った。
あまりの速さに男は反応はできなかった。
大地は飛び込みながら渾身の力で剣を振り抜いた。
――!!
男の剣が粉々に砕け。腕が関節から逆に曲がり。大柄な身体が吹き飛んだ。
途端に周囲は静かになった。
◇
少女は、自身の手を握ったり開いたりしながら動作確認をするように眺めていた。
「は?」
地面に伏した男性が言った。
倒れたまま、唖然とした表情で大地を見上げていた。金色の目が、大きく見開かれている。
大地の目が、金髪の男性へ向いた。
(オパリアに似た髪色。生きて会うのは初めてだな)
「急ぎ過ぎて加減を忘れたな」
大地は言った。
「まぁいい。間に合ったから問題はないな」
「き、君は一体——オパリアは——」
「話は後だ。さっさと帰るぞ」
大地は父親の腕を掴み。強く引っ張った。
「――痛っ!ちょ、ちょっと待てくれ」
「待てない。立てるか?」
「立てるが——」
「なら早く立て」
父親がなんとか立ち上がった。大地に引っ張られながら、馬車へ向かってよろめきながら歩き出す。
母親が馬車から降りかけていた。夫の顔を見て、大地の顔を見て、吹き飛んだ男を見て——固まった。
「——説明を、お願いできるかしら?」
「正直な所。俺が聞きたいところなんだが?」
◇
馬車が走り始めた。
揺れの中で、四人が向かい合っていた。
父親。母親。使用人の女性。そして大地。
全員が大地を見ていた。
(さて、どう説明するか。まずは状況確認が先か?)
大地は少し考えた。
前は記憶喪失のふりをした。声が出ないふりをした。何もわからなかったからだ。時間をかけて情報を集め、じっくりと信頼を積み上げた。
今回は——どう動く?
(バルトゥスはどうとでもなる。ヴィクトルも対応可能だ。禁忌魔法の件も既に知識として把握済み、母親が存命だから尚の事、早急に処理できるだろう)
大地はゆっくりと息を吸い、ため息を吐いた。
「わからないことが多すぎるな」
独り言のような声だった。
「説明するが——少し待ってくれ。まず状況を整理する」
母親が夫を見た。夫が妻を見た。
使用人の女性が、小さく「お嬢様……?」と呟いた。
馬車の揺れだけが時間の流れを伝えていた。
【Re: 第2話へ続く】
前書きの独白。
一体誰なんでしょうね?笑
作者にもわかりません。
という訳で!
始まってしまいました!
蛇足に尾ひれに毛まで生やした勢い任せのやりなおし!
いきなりやらかしてます




