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5-15


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 エレベーターが地下の暗闇に潜る。数秒経って、はるか遠くの暗闇に、一粒白いものが浮いているのが見えた。が、瞬きの間に、その粒は人ほどの大きさ変わっていた。いや、大きさが変わったのではない。自分達が近付いたのだ。エレベータはそれほどのスピードで移動していた。

膨大な数の白いマユのようなものが暗闇に浮かんでいる。

「これは何だ」と圭司は聞いた。

「この中で人は眠っています」

「こんなところで」

 言葉を失う光景だった。暗闇の中にただ雑然と広がる白いマユ。この中で人間達が夢を見ている。それぞれの世界を持って。

 エレベーターは景色が歪むほどのスピードでその中を突進していった。マユは道を開けるように左右へ退いた。やがてマユの群れを抜け暗闇が広がった。その中心に一粒、また白い点が見えてきた。

「危険なので、周りのマユは移動させました」

 エレベーターは溶けて消えた。目の前には、たった一つのマユが浮かんでいた。

「これに杉浦が入っているはずです」と相川が言った。「圭司さん、迂闊に近づかないでください。今マユを解きます」

 マユの正面に縦の筋が出来てゆっくりと左右に開きだした。内側から人間の肌が現れてくる。

 圭司は息を飲んだ。

 その男の顔は正面を向いていたが、一つ一つの眼球が独立した生物かのようにあらぬ方向を見て震えている。しかし、右の目が一瞬圭司の視線と交錯すると、次第に眼球の震えが収まっていき、二つの視線は中央に収まり、圭司のことを見ていた。

 圭司はその目に引き込まれた。無意識に「杉浦」と声が漏れた。その時、相川が圭司の肩を掴んで鋭く叫んだ。圭司はハッと我に返った。「バグです」相川の声が続いて響いた。

 マユは全て開いていた。そして、男の首から下の空間は歪んでいた。胴がねじ曲がり黒い渦になっていき、周囲の空間を飲み込んでいく。圭司の体が、その渦の中へと引きずられる。

 相川が圭司の腕を掴んで叫んだ。「逃げます」

「まだだ」と圭司は怒鳴った。

 圭司は相川を振り払い、勢いに任せ、杉浦に飛びかかった。杉浦の二つの目が近付く。その目の中にも、バグが宿っていた。

 圭司は必死に手を伸ばした。相川の声が遥か遠くで聞こえた気がした。


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