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朝の祈り。そして農場へ。一仕事を終え戻ってきて昨日の服を洗い干す。部屋に戻り、束の間を過ごし朝食を取る。また仕事に出て、夕方風呂に入りホームへ戻り、夕食を食べ夜の祈りに聖堂へ向かう。そして毎晩聖書を写生して眠る。徹底したルーティーンが繰り返される。
眠らない夜、風の音が聞こえる。立ち上がって外を見たり、部屋の中を歩いたり。
布団に潜って眠っていても風の音が聞こえる。ふと彼らを思い出す。今何をしているだろうか。今いるのは夢かイメージかゲームか。ログインして聞きたい。自分のステートメントを。
硬いベットに張り付き固まる。少し窓が白んでくる。合わせて部屋も白む。
ノックの音がし、入ってくる人。
「また、眠れなかったか」
農場で地面が傾きだす。グラグラと歪んで、上手く立てなくなる。目を閉じると暗闇の中にイメージが浮かんでいる。そして、それがいつの間にか現実に置き換わる。
「ずいぶん長いことはいっていたね」と丸く黒い瞳がこちらを覗いている。
「あぁ随分、わずらわしい世界だった」
「あの子が心配してたわよ。あなたがいないと心配みたいで」
それを聞いて、この世界を自動操縦にし忘れていたのかと不安に思ったが、思い返してみれば、確かにしていたはずだ。
「あいつは?」
「寝ている」
「あいつは夢を見るのかな?」
「さぁ、見るんじゃない。私たちと同じ機能なら」
「あいつのイメージを覗いてみたいな」
「見て見ればいいじゃない」
「いや、やめとこう」
「めずらしいね」
「何が?」
「何かをしてみたいだなんて」
「あぁ、確かに」
「あの子はあなたを探しているよ。逃げたあなたを、今もずっと。いつも言ってるよ。外に出して。連れて行って」
暗闇になる。冷たい石壁の内で目を覚ます。見慣れた天井。ベッドの脇に女が立って自分を見下ろしていた。集落にいながら自分と同じく何も話さない女だ。
何故ここに?自分は今目が覚めたのだろうか。
ステートメントは?
「うなされていたよ」と女は言った。「あなたの声を初めて聞いた」
「寝ていなさい。看病を任さたの」
眠るのが何となく嫌だった。意識が緩むとまたあの世界に引きずりこまれるような気がした。
「何か」自分の口から、自分の声ではないような掠れた声がする。「何か話してくれ」
「何を」
「なんでもいい」
女は何も話さなかった。しかし、しばらくそこにいた。
その日、自分は向こうの世界の記憶を消去した。




