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エレベーターが落ちていく。積み重なった箱の隙間に吸い込まれるように。はるか遠くまで積み上げられた箱の群れ。
こんな風景だったな。
この箱の中に人々が格納されている。ここに出るのはあまりに久しぶり、いつ見てもつまらない。
エレベータが地に着き、そして地下に潜る。地下洞の暗闇の中を行く。腰かけて呆然と過ぎ行く広告を眺める。やがて箱が地表に上がって、身体は地上に吐き出される。
まだ日が明けきらず、薄ら青い。木々が目前でこちらを見下ろしている。
エリア3の境界を抜け、そのまま道を辿っていく。どうやら迷うような道ではなかった。ただ、四時間も歩くのは酷だ。
数十分と歩かぬ内に森に入り、また数十分と歩かぬ内に道幅が狭くなる。木々に結ばれたリボンが目印ということだったので、それを辿っていく。水の音が近くで聞こえる。しばらく歩くとその音は激しさを増した。
崖下に流れが会った。その道を昇ると滝が落ちていた。
滝を通り過ぎてまだ歩いた。もうそろそろどのくらい歩いたか分からなくなってきた。ぼぉっと歩いていた。何を考えるでもなく、ただ進む足に任せて、ひたすら木の根の隙間を縫って歩いた。
そうして、気づいた時にはリボンを見失っていた。
光は木々の葉に遮られ、景色は緑にうす暗い。あたりを見渡す。道と思っていたものが振り返ると無い。逆に言えば、それらしきものが、どこにでもある。迷ったらしい。
物音がした。目を向けると、ふと何かが立ち止まる。鹿だった。鹿がじっとこちらを見ている。暫く眺め合っていたが、鹿は顔を下げて去っていった。
またぼぉっとする。とりあえず滝の音がする方まで引き返すか。
音の方へ歩き出す。リボンを探しながら歩くが見当たらない。
随分と歩いた。常にメンテナンスされて最善の状態である足も流石に重たくなってきた。
不思議なことに滝の音はいつまでも聞こえるが、一向に近づかない。来た道を戻れていないのかもしれない。
止まって、木の根に腰を下ろした。
だんだん、どうでもよくなってきた。ナビを起動させて進もうか。それともAIを迎えによんで帰ろうか。VRのゲームだったらもうやめてる。とっくに。
寝っ転がって天を見上げる。巨大な木々が空を遮っている。風が葉を揺らして光を明滅させる。水面のように光がちらちら流れていく。
帰ったところで何が待っているのだろう。部屋の暗闇を思い出す。別にあそこにいても同じだ。
眠くなってきた。思えば昨日の夜から寝ていなかった。
じっとしていると寒くなってくる。そういえば袋の中にAIが何か詰めていたか。出すと、毛布と上着がある。それを体にかぶせた。ただ、こんな布切れではまだ寒い。体を極力小さくして、膝を抱き込むように丸くなる。
指先と頬を冷たい空気が撫でて、ほとんど感覚がなくなる。とにかく眠りたい。とにかく闇の中で。
AI 眠らせてくれ。
滝の音が次第に静かになっていく。




