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4-2


2


「大丈夫」と丸く黒い瞳が、グラスの向こうからこちらを覗いている。

「ん?」

「ずいぶん長いこと寝ていたよ」

「そうか」

「入ってたの?」

「ゲームをやってた。最悪だったよ」

「あんまりストレス値をあげないほうがいいわよ」

「あぁ」

「寝る?」

「あんなに寝たのにまた寝るの?」女の問いに重なるように、扉の前に立っていた子供が甲高い声で鳴いた。

「お父さんは体調が悪いのよ」と女がそちらを向いて自分をかばった

「あぁ、寝るよ。回復するまで」自分は謝るわけでもなく、了解を取るわけでもなく、ただ子供に対して2度頷いて、そして、またグラスを被った。息子の不満そうな顔が最後に残った。


 スリープモード

 レム睡眠 記憶なし


 そして起きる。窓から夕陽が差し込んでいる。

「起きた?」と今度は子供が最初に自分を見つける。

「おぉ」

「よく寝れるね」

「あぁ。今日はやけに絡むな」

「暇なんだよ。勝負しようぜ」

「ちょっと待ってくれ、なんか食ってから。母さんは?」

「寝てる」

「そうか」

「ご飯、冷蔵庫に入ってるよ」

「うん」

 意味の分からないニュースを流しながら、飯を食べた。

 息子は正面に座ってジッとそれを待っていた。そして食べ終わると「ねぇやろうよ」と自分の腕を引っ張った。

「あぁ、いいよ」

 ソファに座り、互いにヘッドセットをつける。ゲーム世界に意識が潜る。周りの壁が開いて、鬱蒼とした木々が広がる。

「森か」とレーダーを見ながら歩く。しばらく辺りをスコープで観察する。落ち着きのない子供はこちらが何もしなくても、すぐに気配を表す。それをただじっと待っていればよかった。

  

    ※ 


「もう一回やろう」

 3戦の約束だったが、3連敗して、子供はいきり立っていた。

「ん?」

「もうやめときなさい。遅いわよ」女がいつの間にかVR空間に入って来ていた。

「いいじゃん。次で終わらすから」

「ダメ」

「ねぇ早く」

「ダメって言ってるでしょう」

「1回やるのなんて15分くらいしか、かからないじゃん」

「そう言ってるとキリがないでしょ」

「自分達だって、キリなくいつまでも寝ている癖に」


   ※


 夜中、青い水の中の寝室。

「あの子最近言うこと聞かなくなってきたね」

「そうだな。ちょっと面倒だな。少しいじるか?」

「それは」

「あんまりベースメントをいじりたくないんだろ?」

「うん」

 女は小さくため息をつく。

「子供が生まれて。何かが変わるかと思った。でもやっぱり思ってたのと違う。結局、あの子が私達を満たしてくれるわけでもない。そのままずっと続いて、何となく別れていきそうな気がする」

 女は少し顔をこちらに傾ける。

「現実であれば違うのかな。もう逃げ場のない世界であれば、何か変わるのかな」

「どうだろうな」

「移してみる?現実に」

 返事はしなかった。

「あなた、コピーになってる?」

「それは聞かない約束だろう」

「何となく気になって」

「君を愛している。ここにいるのが一番幸福なんだ」

「そう。私がコピーか、聞かなくていいの」

「あぁ、そういう約束だろ」

 その後、生殖行為をして眠った。


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