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 妻が入院して五日が経過した。コミュニケーションを取っていい状態になったということで病院に会いに行った。

「やぁ」と部屋に入って手を上げると、彼女も「やぁ」と真似をした。妻はソファに腰かけ、窓からの光を受けて座っている。隣に座って顔を覗いた。表情や仕草は修正され、もとの妻に戻っていた。

「調子はどうだい」

「えぇ、もう大丈夫」

「そうか、よかったよ」

「ごめんね、心配かけて」

「いや、いいんだよ。前は俺が迷惑かけたんだから」

 サキは微笑んで「あの時迷惑だとは思ってなかったよ」と言った。

「今の俺もそうだよ」と、サキの右肩を撫でた。

「分からないものだね。自分がこうなるなんて」

「あぁ、そうだな」

「あなたはよくこういうものを見てきたんでしょう」

「まぁ」

「私はどうだった?」

「変わらないよ。おかしい事でもないさ。いくら医療が進化したと言っても精神の問題を解き明かすにはもう少し時間がかかるよ。解明すること自体に倫理的な問題も付きまとう」

「そうかもね」と妻は関心が無さそうに遠い声で呟いた。「麻未は元気?」

「あぁ。君のこと心配してたよ」

「そう。帰ったら、また一緒にあの世界を作らなないと」

「どの世界?」

「前に話したじゃない。可愛い動物の世界」

「あぁそうかい」

「そうやってまた、鼻で笑って」

 それの手は笑いながら、責めるように自分の脇腹をさすった。自分も調子を合わせて、ふざけた顔をした。すると、それは急に何か思い出したような顔をした。

「そういえば、平松さんがお見舞いに来てくれたよ」

「そうか、悪かったね」

「いや、別にいいの」

「あの人も古い人だし、今は退屈そうだから」

「そうね」とサキは眉を潜め、少し困ったような笑みを浮かべた。そして「なんかそれ置いて行った」と自分の背後を指さした。振り返ってみると窓の脇に多肉植物が置いてあった。歪なこぶが積み重なって塔のようになっている。その歪なこぶはどこか見覚えがあった。

 木村、その名前が蘇った。その時あの違和感の正体にも触れたような気がした。

「どうしたの?」とサキに聞かれた。

「いや、何でもない。変なものだなと思って」

「なんかね。突然変異でそうなっていくんだって。モンストローサっていうらしいよ。怪物みたいになるから」

「へぇ、そうか」とさも初めて聞いたように返事をしたが頭の片隅で思い出していた。平松と木村について話をした時のことを。

「心配してくれてありがとう。それがね。凄く嬉しいの。だから放蕩言うとね。こうなってよかったと少し思っている」

「そうかい」

 医者の話では経過は良好で、もう二日後には退院できるということだった。

 家に帰り、娘に通知を残した。

「明後日の午前中にお母さんは退院することになった。お母さんも長いこと病院にいて寂しかっただろうから、その時は一緒に迎え行こう。10時には起きているようにしてください」


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