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ある日、嫌な夢を見て、その後結局眠れずに朝を迎え暇つぶしにリビングでゲームをしていた。その時、家ではVRを禁じられていて自分は旧式の古いゲームをするのにはまっていた。
ロボトミー手術を受ける主人公を見て、ふと自分の頭はどこをいじったのだろうと、遠い記憶だったあのクリスマスの日をこと思い出した。
眠そうに起きてきた母に聞いてみた。
「俺の頭を弄ったの?」
「なんのこと」
「あのクリスマスの日」
「何言っているの?」
自分は続けて聞いてみた
「母さんは俺の本当の母親?」
「どういうこと」母は笑った。「どうしたの、やめてよ」
AIは人の真剣な問いに嘘を付けない。人に害成す行動をとれない。先日学校で習ったことをふと思い出した。
頭の中で虫が「その人は、あのクリスマスの日に入れ替わったのだ」と言った。「あの日以降お前は変わったか。いや変わっていない。確かにビクビク人の顔色を見て怯え、人を不快にさせないよう従順になった。しかし性根は変わっていない。いつも頭には俺がいる。本当に頭を弄っていたら、そもそも俺が存在するわけないだろう。だからお前は俺を嫌っている。恐れている。目を背けるために。あの日から急に変わったのは母さんのほうさ。そうだろ?」虫はせせら笑った。
結局、虫の言っていたことは正しかった。
優しくなった母と会い、それが違うものだと気づかず過ごしてきた。本当の母が消えたと気づいた時にはもう随分と時間は流れてしまっていた。
今にして思えば、自分の人生では、大切なものは気づかぬ内に無くなっていた。それゆえに、失ったことを深く悲しんだことはない。過ぎてしまった現実に温かみは残っておらず、何を感じどう振舞えばいいかのか、そういう時にはいつも分からなかった。




