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 巣造像、決勝当日。キゴウを病院に迎えにいった。キゴウはカプセルに座って、相変わらず時計を眺め固まっていた。その日も、話しかけても何も反応しなかった。あの感情のない薄ら笑いでも、こうなってみるとどこか懐かしかった。

 17時、試合は始まり、17:30に終わった。キゴウは負けた。というより勝負にもなっていなかった。キゴウの攻撃は全て暗闇に呑まれて、それが溶けた時には彼は消えていた。

 その2分後相川が耳打ちした。

「木村さんがGCを破壊して逮捕されました。GCはコピーだったため死傷者はいません」

 杉浦は苦笑いを浮かべた。

 キゴウはそれ以来寝たきりになった。決勝で受けたストレスの影響で彼の脳機能はもう回復しなかった。肉体が機能を停止するまで隔離病棟で眠り続け、2週間後に死んだ。

 木村は懲戒免職になり危険思想保持と認定された。思想矯正か、隔離施設での暮らしが提案されたが、彼はそれを全て断りエリア3に降りた。暗黙の了解としてエリア3では危険思想も放置される。その代り、思想矯正せずにエリア2以内に戻ることは出来ない。そして、彼は管理側にいた人間であったために単純な追放も許可されず、コピーのように脳にアンテナを埋め込まれ常時の精神を監視される事となった。もう彼と会うことも無いだろう。

 社会が恐れていた、あるいは望んでいた変化は何も起こらなかった。呆気なく決勝戦は終わり、それから、以前と同じように呆然と日々が流れた。

 大会から10日後、GCのコピーが自分を訪ねてきた。

「ちょうどコピーに変わったところだったんだ。オリジナル時の契約で破壊されても修復してくれる。でも、ふと思ったんだけどさ。死ねなくなっちゃったよ。私にもう人間の権利はないから、いつまでもオリジナルの権利が優先される。法律が変わるか自然死を迎えるまでは、私は死にたくてもオリジナルの権利のために死ねないってね。面白いね」

 杉浦も苦笑した。


何もない地下洞を車が走る。虚無症の薬の広告が辺りを埋め尽くす。

わずらわしい者達はいなくなった。キゴウも木村も。しばらくまとわりついていた面倒がとれて、杉浦は安堵のため息を吐いた。平穏な日常に帰ってきたのだ。


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