第17章
神谷と鈴村は後藤に案内され、ある家へと向かっていた。電車を乗り継ぎ、駅から歩くこと約10分。2人は目的地へと辿り着いた。薄茶色の外壁と、煙突のようなオブジェが屋根に付いている、温かみを感じられる一軒家だった。
「よろしいですか?」
後藤が確認するように2人に尋ねた。
「勿論です。」
神谷が答えると、後藤は玄関まで案内し、ゆっくりとドアを開けた。その瞬間、神谷はその場で立ち止まった。
「神谷さん?どうかしまし⋯。」
神谷から遅れて、鈴村も言葉を止め、家の中を見た。屋内から流れ出る瘴気が、立ち止まった理由を物語っていた。後藤は何故2人が立ち止まったのか、まるで分からなかった。
「あの、どうかされましたか?」
「後藤さんは、今もこちらの家で生活を?」
「⋯はい。」
「そうですか。」
「何か?」
「いえ、後程お伝えします。では、お邪魔致します。」
「お邪魔します。」
玄関を上がり、リビングへと通された2人は、これから激しい闘いが始まる事を、薄っすらと察知していた。特に会話も無く、各々が心を落ち着かせていた。部屋の中は、洋服が床に放置されていたり、テーブルの上に食器が置いたままであったりはしたが、清潔さが保たれていた。
「上の階にいます。」
「はい。感じます。」
「そうなんですか?」
「後藤さん。我々が良いと言うまで、この家にいない方がいいです。大変かもしれませんが、何処か違う所で寝泊まりを。」
「⋯そう⋯ですか。」
神谷と後藤が会話をしている最中、鈴村は無言のまま背負ってきたリュックサックを開き、既に敵との面会に備えていた。そして次の瞬間、上の階からまるで猛獣のような大きな唸り声が鳴り響いた。あまりの声の大きさと、その声の通りに3人は驚愕した。
「どうやら、向こうも分かっているようです。」
「神谷さん、私、行けます。」
「それでは後藤さんはここでお待ち頂くか、外出されても構いません。どうされますか?出来れば、外出をオススメしますが。」
「ここで待たせて下さい。お願いします⋯。」
「分かりました。」
階段を登り、目的のドアが見える。神谷は先程と同じ様に、また立ち止まった。
「どうしました?」
「こっちを見てる。」
「えっ。」
「ドアの前に立ってる。ドア越しにこっちを見てる。」
鈴村はドアを見たが、視線は感じない。神谷にしか分からない感覚だった。
「⋯ドアから離れた。」
「私には分かりませんでした。」
「その内分かる。」
神谷はドアの目の前まで歩みを進めた。
「鈴村。」
「はい。」
「多分、忙しくなるぞ。」
「インセンティブとかボーナス出ますかね。」
「多分⋯。」
「⋯。」
「出ない。」
神谷はドアを開けた。




