第15章
藤代と櫻井は長い時間、唇を重ね続けた。ようやく藤代が唇を離す頃には、櫻井はとろんとした表情に変わっていた。
「ズルいよ、ゆみちゃん⋯いきなりは。」
「ごめんね。キスしたくて。」
「私も。」
今度は櫻井から藤代にキスをした。お互いがお互いの顔を手で触れた。櫻井がそっと顔を離すと、藤代は笑顔になった。
「私達、キス上手になったよね。」
「恥ずかしいから⋯そんな事言わないでよ⋯。」
「あははは。」
藤代は立ち上がると、ベッドに腰掛けた。
「こっち来て?ちーちゃん。」
櫻井の心臓は破裂しそうな程に脈打っていた。彼女はゆっくりと立ち上がり、藤代の横に並んで腰掛けた。お互い見つめ合い、また唇を重ねた。そのまま藤代が櫻井の背中に両腕を回し、2人でベッドの上へと転がった。櫻井は藤代に押し倒されたような状態になった。藤代に見下ろされ、櫻井は顔を真っ赤にした。すると藤代は右手を櫻井の腹部に優しく置いた。
「えっ⋯。」
櫻井は思わず声が漏れた。
「⋯ゆみちゃん?」
「ちーちゃん⋯触ってもいい?」
「触るって⋯何処を⋯?」
「胸。」
そう言うも藤代は右手をゆっくりと胸部に移動させてきた。
「ちょっ⋯ちょっと待って⋯!」
櫻井が体を起こした。呼吸が荒く、涙を浮かべているようにも見えた。
「ちーちゃん?」
「こ⋯心の準備がまだ⋯その⋯。」
「えっ。」
「私⋯今顔真っ赤でしょ?真っ赤だよね?ああ⋯ごめんね⋯その⋯私⋯こういうのよく分かんなくて⋯その⋯緊張で⋯頭が破裂して⋯心臓が⋯口から飛び出そうで⋯その⋯。」
「あっはっはっ!ちょっと、ちーちゃん落ち着いて。嫌じゃ無かったの?」
「嫌じゃないよ⋯ただ私の羞恥心が先に限界が来た⋯ごめん⋯ごめんね。」
藤代はベッドの横に立つと、制服を脱ぎ始めた。
「えっ、ちょっと、ゆみちゃん?」
一体何が起こっているのか。櫻井はただ藤代を見つめる事しか出来なかった。藤代は制服を床に落とし、下着姿になった。彼女の抜群のプロポーションに、櫻井は目を奪われた。
「⋯どうかな、下着。紫色なんだけど⋯ちーちゃん紫色好きでしょう?」
「ゆみちゃん⋯。」
藤代は櫻井に近付くと、またゆっくりと櫻井をベッドに押し倒した。
「私、ちーちゃんの事、触りたい。」
「⋯学校だったし⋯汚いよ⋯?」
「それは私もだよ。でも本当に嫌なら何もしない。」
「⋯嫌じゃ⋯ないよ⋯ゆみちゃん。」
藤代は櫻井にキスをすると、彼女の胸に手を置き、優しく触り始めた。
「私も⋯脱ぐよ。」
2人はぎこちないながらも、初めて体を重ねた。
初めての情事が終わり、裸体のまま2人はベッドの上で倒れ込んでいた。櫻井は藤代の方を向いて、彼女の腕に寄り添っていた。
「ごめんね、ゆみちゃん。私⋯上手く出来なくて⋯。」
「全然。」
「全然?」
「全然、気持ち良かったよ、私。」
「本当?」
「嘘つかないよ。ちーちゃん、上手。」
「⋯上手じゃないもん⋯!」
「本当に初めて?」
「初めてだよ!」
「私はどうかな。上手く出来てた?」
「⋯気持ち良かったよ⋯とっても。」
「浅い知識しか無いから、どうしたらいいのかまだよく分からなくて。触る所は分かるんだけど。」
「ゆみちゃん、経験あるのかと思ってた。」
「何言ってるの。キスだって、ちーちゃんとが初めてだって言ったじゃん。」
「⋯うん。じゃあ私が⋯ゆみちゃんの、初めての人って事だよね?」
「そうだよ。そして私の初めての人が、ちーちゃん。」
2人はまた唇を重ね合わせた。抱擁し、深いキスを交わす。そして唇を離すと、2人は見つめ合った。
「ふっ。」
次の瞬間、藤代が高笑いを上げた。
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」
その大きな笑い声に櫻井は驚き、瞬発的に藤代から離れた。
「ゆみちゃん?」
「ああ、ごめんね。でも⋯あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!無理だ、我慢出来ない⋯あっはっはっはっはっはっはっ!」
よく見ると藤代は涙を流していた。
「ちょっとゆみちゃん⋯どうしたの⋯。」
「いやぁごめんね。ほんと。驚かせちゃって。はははははははは。私、嬉しいの。ちーちゃんと⋯女性とセックスが出来て。ずっとしたかったんだよ、セックス。」
「そ、そうなんだ。」
「はぁ⋯そうか。これが⋯これが女性とのセックスなんだ⋯。へぇ⋯そっかぁ⋯。」
藤代の様子は明らかにいつもとは異なっていた。櫻井は初めて彼女に対して、ほんの少しの恐怖を感じた。藤代は起き上がり、涙を拭ったかと思うと、櫻井に覆い被さった。
「ちーちゃん。もう1回、しよ?」
「も、もう1回?」
「うん。ちーちゃん大好き。」
そう言うと、藤代は櫻井の下半身へと体を動かし始めた。この状態に興奮しているだけなのか、明らかに藤代の態度が変化した。それでも良い。これ以上の幸せがある訳がない。櫻井は藤代の全てを受け入れ、体を彼女に預けた。藤代は先程よりも、より激しく櫻井を求めた。
気が付けば、時間は午後6時前になっていた。
「ゆみちゃん、私もう帰らないと。」
「⋯帰らないで。」
2人はベッドの上に座り、掛け布団を被って寄り添い合っていた。
「親に連絡してないし。泊まるのは難しいよ⋯。」
「明日学校休みだよ?お父さんもいないし。こんなチャンスないよ。」
「それはそうだけど⋯。私、お泊まりなんかした事ないから、親がびっくりしちゃう。」
「お願い、ちーちゃん。」
「⋯分かった。親に聞いてみるよ。」
「本当!?やった!」
藤代が櫻井に強く抱き着いた。藤代はベッドから降りると、テーブルに置いてあったスマートフォンを手に取り、母親の朋子に電話をかけた。櫻井は裸だったが、もはや情事の後では、恥ずかしさなど消えていた。
電話を始めた櫻井の後ろ姿を、藤代は静かに見守っていた。彼女は藤代のスタイルの良さをいつも褒めるが、櫻井もスタイルが良いと、藤代は常日頃から思っていた。櫻井が裸のまま、手でジェスチャーをし始めると、藤代は思わず笑い出しそうになった。
「⋯お待たせ。」
「お母さん、どうだった?」
「うん、大丈夫。」
「大丈夫じゃなさそうな顔してるよ?」
「大丈夫。」
「じゃあ泊まれるの?」
「泊まれる。」
「何かロボットみたいだよ?」
藤代と櫻井はリビングに降り、櫻井はダイニングテーブルのイスへと腰掛けた。藤代の部屋着を貸して貰った櫻井は、少し大きめのシャツとズボンを履いていた。そして藤代は、夕食を作るためにキッチンへと入った。
「先にシャワーでもいいんだけど、お腹空いたよね。」
「お腹空いた。ごめんね、晩御飯まで。」
「ううん、ちーちゃんは楽にしてて。簡単ですぐ出来るから、焼きそば作るね。」
「ありがとう、ゆみちゃん。」
櫻井はまた仏壇の方に視線をやった。また先程の藤代の言葉が頭に浮かんで来た。
「気になる?」
野菜を切りながら、藤代が声を掛けた。
「気になるよね。」
「⋯気に⋯なるかな。でもその⋯別に。」
「いいの。話すよ。」
藤代が切った野菜をフライパンで炒め始めた。
「その代わり、一緒にお風呂入ってくれる?」
「そ、そ、それは⋯ちょっと⋯。」
「えっ、まさか断られたの?私。」
「お風呂は⋯は、恥ずかしいよ⋯さすがに。」
「ええっ。さっきまで、あんな事やこんな事をした仲じゃない。」
「それはそうだけど⋯何か⋯体洗う所を見られるのは⋯。」
「聞きたくないの?」
「⋯。」
「ちーちゃん。」
「分かった⋯。私、ゆみちゃんに勝てないよ⋯。」




