まったり5 スライム物語最終回・前編
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」
勇敢なセアは先陣をきって跳ねる。
そんなセアの後を他のスライム達も追いかけて跳ねる。
いじめっ子オーガ三兄弟に向かってぽよぽよぷにょんと皆で跳ねる。
何度も何度も跳ねて跳ねて跳ねて、
「やぁぁぁぁぁぁ・・へぇへぇ、遠い」
「つ、疲れるよぉ」
「うえぇぇぇ~ん、三角石ころ踏んだ~。チョンってしたかった~!」
「オーロ! 大変! 泥がついてる!」
「スラッ!? ま、マズイでスラ! 私の輝かしいゴールドフォルムが!? は、早く拭いてくださいでスラ~!!」
「すぴ~・・・・・・乗ってく?」
「「「「「のるぅ~」」」」」
結局いじめっ子オーガ三兄弟の元に付くまでにかなり距離があったんで、黒影に問われるがままに馬車に乗り込むのだった。
「よしついた! ありがとモロキュー!」
「もろぶきゅ~ん!」
モロキューのおかげで無事いじめっ子オーガ三兄弟の前までこれたセア達は、勢いよく馬車から飛び出す。
「やーやー我こそは! 次期村長スライムのセアなり! いじめっ子オーガ三兄弟! 神妙にイジメるのをやめるのだっ!!」
自分より何十倍も大きな身体のオーガに向かって堂々と宣言した。
ちょこっと怖くてプルプル震えているが、そこは仕方が無い。
誰だって、自分より大きい生物に注意するのは怖いんだから。
「「「・・・・・・・・・」」」
「・・・・・??・・・立ったまま寝てる?」
「凄い! 眠りの大五郎だ!」
「あれ~? けどあれってぜったいどこかで座ってたような・・?」
「そんなのどうでもいいでスラ!」
「セア、セア。もう一回大きな声であいさつした方がいいと思うの」
「そっか、わかった。すぅぅぅぅぅぅ・・・・やーやー! 我こそはー! 次期村長スライーーームのセーアーなーりー! いじめっ子オーガさんきょーーーだーーーいっ! しんみょーーに! イジメるのをーーー! やーめーるーのーだーーーーーっ!!」
「「「・・・ふがっ?」」」
気持ちよさそうに寝ていたいじめっ子オーガ三兄弟に向けて、大声で呼びかけたセア。
その声を聞いていじめっ子オーガ三兄弟は起き始めた。
寝てるなら放っておいた方がいいんだけどねぇ。
「オニ? なんだオニ。このちっこいスライム達は?」
「僕はセア! 次期村長スライムのセアだよ! よろしくーーっ!」
「あっ、僕はヘードです。よろしくです」
「る、ルードだぞ!」
「私は誇り高きゴールド・ゴルドーが娘! ゴールドスライムのオーロでスラ!」
「ら、ら、ら、ら、らららら」
「こっちはルビースライムのライズでスラ! いつか私と一緒にスラコレで優勝する期待のスライムでスラよ! 恐れおののくがいいスラ!」
「黒影~。よろ~・・・・・すぴぴぴぴぃ~」
「ニオ? こりゃあご丁寧にありがとさんだニオ!」
「オガ・・・・・なぁ兄弟! こんなに丁寧にあいさつされたならば! オガ達もとっておきの挨拶をしなくちゃいけねぇんじゃねぇのか?」
「オニオニ! まさしくその通りオニな!」
セア達スライムの挨拶を見て、なぜかいじめっ子オーガ三兄弟はやる気に満ちる。
そうして少しスライム達から離れると、それぞれ立ち位置を確認した後に、土を掴み、
「あの青空よりも青く! 透き通った青のオーガ! その名はオニオ!」
自己紹介を始めた。
男は背中で語るもんだぜと言うように、なぜか全員スライム達に背を向けながら。
「お昼の太陽よりも黄色く輝き、世界を照らす黄色のオーガ! その名はサニオ!」
両手いっぱいに土を抱えながら、未だに背中で語って見せるオーガ達。
ぽろぽろと持ちきれない土が零れているがそんなことは気にしない。
「最後まで夜が来るのを抗い続ける真っ赤な夕焼け! 赤のオーガ! その名はオガーオ!」
チラチラと何かタイミングを伺っているのか、兄弟であるオーガ達に視線を向けている赤オーガ。
いったい何をする気なのかわからないが、最後に、小さな声でせーのとタイミングを合わせたのちに、全員一気に振り返った。
そして
「三人そろって!」
「青・黄色・赤の!」
「天空信号機!」
ババーンッ! と言うように三人は思い思いにポーズを決める。
掴んでいた土も変なポーズを取ると同時に宙へと放り、無意味に土埃を巻き起こす。
空をイメージしたヘンテコなポーズ。
太陽のイメージをイメージした両手を広げるポーズ。
何かを必死に持ち上げるようなよくわからないポーズなどを決めている。
多分必死に持ち上げているよくわからないポーズは、地平線に沈む夕日をイメージしてのポーズなのだろう。
何故沈みゆくポーズではなく、持ち上げるポーズなのかは、夜が来るのを必死に抗っている・・・のだと思う。
「「「「「すご~いっ!!」」」」」
あまりにも迫力ある自己紹介に、スライム達はぽよぽよと跳ねながら称賛する。
こんなに土煙を回せることはスライム達にはできないからね。
「オニオニオニ! まあな! それでオニ。オニ達に何か用オニか?」
「あっ! そうだった! えっとね! もう僕達スライムをイジメないで! あそこのスライムの大きな街のスライム達もイジメないで!」
「オニ? あそこはスライムの街ではなく、スライム王国では無いかオニ?」
「街も王国もどっちも変わらないよ! スライムがいっぱいいるって意味だもん!」
「そうなのかオニ?」
「ぜったい意味は違うと思うニオが、所詮スライムの言うことニオ」
「こいつ等基本頭足りてないオガ」
「「「「あたまたりてない?」」」」」
「失礼すぴぃ~」
酷い事を言われているがよくわかっていないスライム達。
唯一黒影だけがいじめっ子オーガ三兄弟の言葉を理解しているくらいだろう。
「そんなことより! 僕達スライムをイジメるのをやめて!」
「そうだ! そうだ!」
「や、やめてほしいよ」
「やめてくれたら、私が大事にしているゴールド・オーロ作 輝けゴールド! 光無き道を照らせ! のご本見せてあげるよ!」
「そ、それは!? 私の記念すべき5作本! ライズ! 貴方そんなモノも持っていたスラ!?」
「当たり前だよ! 他にも記念すべき6作本の 光差す所にゴールドあり! や 記念すべき7作本の ゴールドと進もう栄光のゴールドロード! とか全部持ってるよ!」
「う、嬉しいでスラーー!」
ひしりとオーロはライズに寄り添い、身体をスリスリと擦り付ける。
スライムによる信頼の証や、最大級の嬉しさを表現する行動に近い。
後は大好き大好きと言った感情である。
「も~! 二人とも今は仲良しこよししている場合じゃないんだよ! いじめっ子オーガさん達を説得しなくちゃいけないんだから!」
「そうだそうだー!」
「な、仲良しはいいことだけど、後の方がいいだよ」
敵・・・敵かどうかは知らんが、オーガ達を前にしてもスライム達は危機感無くマイペースであった。
まぁ、いつもの事である。
「オニ・・・要するに、俺達はお前達スライムと遊ばずに、このまま帰れと言いたいオニか?」
「そうだ・・・そうなんだよね?」
「なんか言い方に棘があるよね」
「酷いこと言ってるみたいで心が痛いよぉ」
まさしく青オーガの言う通りなのだが、基本優しいスライム達は強めの口調で誰かに命令するみたいなことができないのだった。
それでも止めて欲しいので、物凄く申し訳なさそうにしながら帰って貰うようにお願いした。
「う~~~~~~~~~~~~~~~ん・・・・・・・いやオニ!」
「「「「「え~~~~、なんでぇ~?」」」」」
「オニ達は遊びたいオニ!」
「そうニオ! そうニオ! ここまで来たのに遊ばずに帰るなんて嫌に決まっているニオ!」
「ドッチボールするの楽しみにしてたオガ! それを取り上げる何て酷いオガ!」
「ドッチボールなんて止めてよ! あれとっても怖くて、グルグルして、バシンのボシュンで居たいんだから!」
「そうだぞ! 地面とかにドボボンッ! ってぶつかって跳ねるの痛いんだぞ!」
「受け止められるときも怖いよ。形が変わるほどぎゅ~って掴まれるんだもん」
「私の美しいゴールドフォルムが崩れてしまいまスラ!」
「私のルビーフォルムも崩れちゃうのヤダよ!」
だがスライム達の願いは聞き届けられることはなかった。
そしてセア達を無視していじめっ子オーガ三兄弟は動き出す。
スライム王国にいるとっても大きなスライムをボール代わりにしようと。
「もぉ! やめて! やめてったら!・・・・むぅぅぅぅっ!! おこったぞ~! それなら無理やりにでも止めてやるもんねっ!」
十八番と言っていいセアの必殺技。
次期村長スライムと村長スライムしか使えないジャンケンができる、柔らかハンドと言う技を使用した。
スライム達からしたら大きなお手手。
それをつかってオーガ達を止めようと手お伸ばした。
「とりゃああぁぁ!・・・ぺったんぺったんぺったんぺったん」
だが巨体のオーガ達を止める程、大きなお手手は用意できず、結局青オーガの足にへばりつき、山登りをするように登っていくことしかできなかった。
「オニ!? 何だオニ!? これは何だオニ!!」
「面白いニオ! お手手の生えたスライムなんて初めて見たニオ!」
「珍獣オガ! これは珍獣オガッ!!」
「あっ、止まった。ふふん! どんなもんだあぁぁぁぁっ!? やめてよぉぉっ! 引っ張らないでよぉぉぉぉっ!」
「せ、セア!」
見慣れない技を使ったセアに興味を持ったオーガ達は足を止めるが、興味を持たれたが故に、オーガ達はセアのお手手を掴み引っ張ったり、グルグル回したりして遊びだした。
「見るオニ! これがオニオの得意技オニ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? やめてぇぇぇぇっ!」
ヨーヨーのボヨンボヨンという技によって、セアは前後へと何度も振れられる。
「や、やめろーーーっ!」
「あっ! ルード! や、やめてよぉぉ!」
赤スライムのルードがセアを助けようと跳ねだした。
その後を追って青スライムのヘードも続く。
「熱血アターーーク!」
「え、え、まってぇぇっ!」
勢いよくオーガの一人に体当たりを仕掛ける。
体当たりする場所は顔面一択。
顔面に張り付けばどんな生物でも驚くからだ。
だからジャンプしたのだが、残念なことに届くことはなくヘードもルードも重力に逆らえず落下していく。
「くっ、ヘード! プラン2Jだ!」
「ぷらんつーじぇい?」
「いくぞっ!」
「え? う、うん・・・ふぎゅ!?」
だが、即座にルードは新たな策を実行に移した。
一度のジャンプで届かないのであれば、もう一度ジャンプすればいい。
仲間である青スライムのヘードを足場にして。
「どりゃあああああっ!・・・・・・あ」
「ふご?・・ふえ・・ふえ・・ふえぇぇ」
そしてルードはオーガの顔面まで届くことができたのだが、頬っぺた辺りに張り付いてびっくりさせてやろうと思っていたのに、目測を誤り鼻の穴に入ってしまった。
「ふえっくしょん! てやんでぇ! こんちきしょうめい!」
「あぶふっっ!?・・・・・がく」
「る、ルーーーードーーーーーッ!?」
「あ~・・・・・大丈夫ニオ?」
鼻の穴に入ったせいで、思い切りくしゃみをしてしまったサニオ。
流石に勢いよく地面に叩きつけられ、ピクリとも動かないルードが心配してのぞき込む。
いじめっ子オーガ三兄弟と言われているが、彼等も流石に死にかけるまで遊び倒したいわけではない。
まぁ、遊びで夢中になってしまうのでやり過ぎてしまうことは多々あるが。
「ま、まったく! 皆さん頼りになりませんスラね! こうなったらライズ! アレをやりまスラよ!」
「あれ?・・・あぁ! あれやるの!? 今ここで?」
「そうスラ! 今やらずしていつやるでスラ! あの技を使っていじめっ子オーガ達の動きを止めるスラ! 黒影!」
「う~~ん、こしこしこし・・・・準備ばんた~ん」
「いきまスラよ!」
「わかったよ。うぅ、緊張してきちゃったよぉ」
そして未だにオガオにヨーヨー代わりにされているセアを助けるために、オーロとライズがオガオとオガーオの前に飛び出す。
なぜか馬車に入っていた巨大な鏡を黒影は取り出すと、太陽の光をゴールドスライムであるオーロと、ルビースライムであるライズに向けた。
光、太陽の光が二人を照らす。
「「でゅある・おーろら・うぇーぶ!」」
「ライトのスラ! ゴールドスライム!」
「ライトのスラ! ルビースライム!」
「「ふたりはスライム!」」
「しょ、初代が来たオガ! なついオガ!」
「・・・オニ?」
ある有名アニメのセリフをほぼパクっている・・いや、リメイク? したオーロとライズは、びしりとポーズを決めた。
まぁ、ポーズを決めたと言っても手足など無いので、きりりとキメ顔を決めているだけだが。
「・・・・それ何のマネしてるオニ?」
「なんのって・・・あれスラとしか言えないスラ」
「だからなんのマネオニ?」
「だからスラね・・・・ねぇ。ライズ?」
「う、うん、アレだよ」
「だからなんのマネオニ?」
「だから・・・あぅ、そんな目で見ないでよぉ。恥ずかしいよぉ。ぷしゅ~」
「スラーーーッ! ライズが恥ずかしさのあまり気絶したスラー!? 起きるスラ! 起きるスラよ! これじゃあ二人はスライムができないスラ!」
「もっと見たいオガ! 今度は後ろから見たいオガ!」
果たしてキメ顔しかできないスライム達の後姿を見て、何が変わるのかわからないが、それでも一匹のいじめっ子オーガは釣れた。
例え片割れが気絶中でも釣れたので、オーロはオガーオの望むままに、二人はスライム? を行っていくのだった。
「ふぎゃああああああっ、誰か助けてよぉぉぉぉぉっ!」
「・・・セア・・・がんばっ・・・・・・すぴ「黒影! 光!」・・・寝る間もない・・・」
「シオウ、シオウ、セアが、セアが」
「・・・・・・・ぅ」
「のほ~、すんごいぼよぼよしているのじゃ」
「いたそう」
ご飯が食べ終わったので、スライム物語の続きを見るシオウ達。
今回のお話はシオウも見ていない知らない内容なので、ちゃんと眺めてはいるが、いつもの如くぎゅうぎゅう状態で見ている為落ち着かない。
「そりゃポヤよ。次じゃ次! さっさと続きを見せるのじゃ! 気になって仕方が無いのじゃ!」
「うん、うん、続き見たい」
「ぼくもぼくも!」
「ダメですよ。今日はそれでおしまい」
「そうよ。もう終わりにしましょうね。シェミ」
「トウカちゃんも終わりにして、いい加減こっちにいらっしゃい」
「「「!? なんで!?」」」
ぬぼ~っとしながら催促されるがままに次のお話を映し出そうとしたシオウだが、その前にヒノエとミラが止めに入ったので、映し出すのをやめた。
というか視線を向ける気はなかったのに、シェミとノアとトウカの三人の顔が一緒の方向に動くので、なんか僕の顔も一緒に動いてしまった。
四人一斉に視線を向けたのが可笑しかったのか、ヒノエさんとミラさんはなんだか笑い堪えている。
そんなに面白かったのかな?
「ふふっ・・こほん、お風呂に入って寝る時間です。丁度センタロウ達も帰ってきましたし、シオウさんもセンタロウ達と入ってきなさい」
「ユクラン(ミラの夫)も久しぶりにシオウ君とゆっくりお話したいって言っていたから相手してあげてね。今まで料理にかまけて会いに来なかったどうしようもない子ですけど」
「・・・・・・・・・ぅ」
「えぇ~、まだ見たかったのじゃ・・・・・なんという器量の狭い母さまなのじゃ」
「ノア姉さま。しかたないよ」
「トウカちゃん。今日はママとパパと一緒に入りましょうね」
「いや「じゃないとそれ(シオウ)と関わることは許しませんよ?」・・・・一緒に入る」
「おぉ、トウカも大変じゃのぉ」
「うん、同情する」
「・・・くぅ」
憐みの視線を二人から向けられたトウカは情けない声を上げながら、恥ずかしそうに顔を伏せる。
別に家族一緒のお風呂に入るくらい恥ずかしくもないと思うんだけど・・・・。
「さぁ、行きましょうか」
そう言うとノアとトウカは自分の母親にガッシリ手を握られて連れていかれた。
そしてシェミと僕は
「はい、シェミ」
「うん」
「はい、シオウ君」
「・・・・・・・」
「シオウ君?」
「シオウ。お手手繋ぐんだよ?」
「・・・・・・・ぅ」
ミラさんと手を繋ぎながら、並んでお風呂へと向かった。
前にはノアの家族とトウカの家族。
横にはシェミの家族。
家族がいっぱいで、とっても幸せそうだ・・・・・。




