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魔法使いになりました ~酒とケーキの魔法使い~  作者: 鯨七号
第三升 異世界都市スメント
82/93

第80話 サングリア(もどき)

 アドが出来上がったイチゴの漬け込み酒の蓋をしっかり閉める。

「これであとは保管して待つだけだな」

「どれくらいで完成するんですか?」

「そうだなぁ」

 おぼろげに覚えている知識では固い果物のほうが長くつける必要があった。

「リンゴは固いから三か月は必要だな。イチゴは柔らかいから一か月程度でいけるかな」

「リンゴはかなりかかりますね。もうちょっと早く飲めないんですか?」

 楽しみにしてもらえているのはうれしいが、おいしく飲めなければ本末転倒である。しっかりと味を染み出させればお酒の癖も抜けて、アドにも飲めるものが出来上がるだろう。

「ああ、でもそうだな。後でこれを飲んでみるのもありか」

「え”もしかして余ったこれを飲むんですか。私にはちょっときつそうです」

 匂いだけでも強いアルコール度数だと分かるので、酒が苦手なアドが拒否反応を示すのは当然だった。

「流石の俺もこれだけ強いお酒はそのまま飲めないな」

 漬け込む前に水で割ったように薄める必要がある。

「焼酎の飲み方は水割り、お湯割り、ソーダ割その他いろいろあるけど今回はアドにも飲みやすいようにこれを使う」

「それは!? ってさっきと同じイチゴじゃないですか」

 取り出したイチゴをサクッと四等分に切り酒に投入する。さらに余っていたレモンも追加する。今回は砂糖は使わない。

「よし。後は一晩置いておく。ワインに一晩果物を漬け込むサングリアというフレーバードワインがあるんだが、それの焼酎版だな。本当はもっといろいろ果物を入れると面白くなるだろうけど、一足先にイチゴの焼お酒を楽しむにはちょうどいいだろ」

「…………早く味わえるのはいいんですけど、だったら漬け込む必要はなかったんじゃないですか?」

「それを言っちゃあおしまいだろ。まあ、これは本来味を染み出させるんじゃなくて香りを移す程度だからな。仕上げにイチゴの果汁を足して完成の予定だ」

 それにしてもイチゴは便利だ。俺の作ったケーキの土台とは違ってよっぽど応用が利く。他の料理に使えないか考えておこう。

「さて、何にしても材料を使い切ったし、片付けるか」

「なんというか冒険者にあるまじき荷物が増えてきましたね」

 今回作ったお酒の瓶は結構大きい。

「空間収納に入れときゃ大丈夫だろ」

「普通劣化するから入れておけないんですけどね」

「アドの場合は大丈夫なんだろう? 乾燥するだけなら、蓋をしっかりしてれば問題ないんだろ?」

「そうですけど……。シロキさんの場合どうなっているのかわからないですけどね。この間入れていた麹もどうなっているのやら」

「一度試してみないことにはどうにもならないからなぁ」

 空間収納に個人差がある以上、しょうがないことだった。

 俺はサングリアを。アドは自分の作った酒をしまっていく。

 と、アドはイチゴのお酒を手に動きを止めた。

「シロキさん」

「どうした?」

「このお酒って他の人に飲んでもらってもいいですか?」

「全然かまわないぞ。もうその二つの酒は俺の手を離れてアドの物だからな。それで誰にあげるんだ?」

「クナイや手裏剣のお礼として、あの忍者の人に飲んでもらいたいと思います」

 丹精込めて作った果実酒というのは身近な人にふるまいたくなるものだ。きっとアドにとってあの忍者は近しい存在なのだろう。

「でもまずは明日のサングリアですね。楽しみです」

「そうだな。それで明日はギルドに行くのか?」

「いえ、明日は闘技場や商店を見て回りましょう。シロキさんも闘技場に興味はあるでしょう?」

「アドがいいならそうするか。……そんなにあの忍者の言う通りにするのはいやなのか?」

「後回しにしているだけです。明後日に行きましょう」

 本当にアドにとってあの忍者がどういった存在なのだろうか?

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