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魔法使いになりました ~酒とケーキの魔法使い~  作者: 鯨七号
第三升 異世界都市スメント
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第81話 闘技場と呼ばれている全く別の施設

最近おっさんが活躍する小説をよく見かけます。

同じおっさん系小説として頑張っていきたいと思います。うちのおっさんはあんまり活躍しませんけどね。

 翌朝早く闘技場とやらの入り口、赤く扉のない巨大な門の前に立っていた。

「どうしたんです?」

「……いろいろとな。ここがどういう闘技場っていうのがわかって、少し考えてた」

「何をですか?」

「酒を準備していてよかったなとか、アドの体調は悪くないかとかだな」

 俺の発言になんの脈略もないと思ってか、「なんですかそれ」そういって笑いながらアドは入り口の真ん中をくぐろうとする。

「ちょっと待て。入る前にいくつか話をしておかなきゃならん」

「はい?」

 他の人の邪魔にならないよう、アドと一緒に入り口から離れた場所に移動する。

「まず始めに言っておく。こっちの世界でどんな風にねじ曲がったのか知らないがここは本来闘技場じゃない」

「え? そうなんですか? 闘技場としか聞いてなかったですけど」

「忍者から聞いたのだとしたら、詳しく知らなかったんだろうな」

 あの忍者みたいな日本文化に触れて育っていない外人ならば知らなくても当然かもしれない。他の人間も妖怪もわざわざ異世界に文化を広めようとしていないからか、誤解を解こうとはしていないのだろう。

「ここは神社といって、神様を祀る場所だ」

「……宗教の施設だったんですね。でもなんで中に入ってもいないのにわかるんですか?」

「そりゃあ、入り口が鳥居だからな。柱をこういった形に組み合わせたこれを知らない日本人はいない」

「なるほど。そういうことなら私は無宗教ですし、入らないほうがいいってことですね」

「いや、日本の神様はおおらかだから問題ないだろ。大体神様への信教といっても『今年も無事にお米を作ることが出来ました』というような自然への感謝なんかが始まりだ。アドがそういったものをないがしろにしているなら入らないほうがいいだろうけど、そうじゃないだろ?」

「そういうことなら大丈夫そうですね」

「ただ、作法というものがないわけじゃないからそれをまず説明する必要がある」

「だから引き留めたんですね」

「ああ。入る前の注意の一つ目は歩く場所だな。真ん中は神さまが通る場所とされている。だから、人は真ん中を通らずに左側を歩くことになっているんだが……」

「見事にみんな右側を歩いてますね」

「逆もあるんだよ。伊勢神宮は右側もあるんだよ」

 ちなみに伊勢神宮は外宮と内宮があり、外宮が左。内宮が右である。

「あ、真ん中を歩いていく人もいますよ」

「…………参拝客が知らないだけか、それとも神様の格を持った妖怪だったのかもしれないな」

 話の腰を折られつつも、次の注意点に移ることにする。

「あとは鳥居をくぐる前に一揖いちゆうすること」

「イチユウ?」

「一礼をすることだな。そのあとに踏み出す足はそうだな左がいいかな」

「あいまいですねえ」

「所説あるからな。神社の中央から遠いほうの足からだとか、左上位のために左足から踏み出すべきだとかだな」

「中に入ったことがないシロキさんが左っていうことは後者が理由なわけですね」

 そういった左上位の考え方があるからこそ左側を歩くという事にもつながるわけなのだが、違うというのであればしょうがない。

「ああ、ちなみに左上位の左は神様から見て左な。俺たちの左足は下位にあたるわけだ」

 日本に残る言葉や文化はそれを色濃く残している。舞台の上手かみて下手しもてもそうであるし、ひな祭りのお内裏様|(天皇)も舞台から見て左側になる。

 もっとも外国では逆のことが多い。左遷という言葉は中国から入ってきた言葉であり、漢字であっても左上位の文化とは限らないのが難しいところだ。

「まあ入っていく参拝者は全然気にしていないようだからどっちでもいいだろうな。極端な話、神様や自然を敬う心があればいい。入るときの注意はこんなところか」

 中で喋ってはいけないということはないのだから歩きながら説明すればいいだろう。

 俺たちは鳥居に近づき一揖してから一歩踏み出した。

 その瞬間空気が引き締まったように感じた。

「なんというか不思議な雰囲気がしますね」

 アドも同じように感じたようだ。

「そうだな」

 日本でも鳥居は神域への入り口とされているが、この先は本当に神様の世界なのかもしれない。

 道中アドに作法を教え、手水舍てみずやで禊、御神前にて参拝を行った。

「なんかすごく緊張しました。けれど神様への感謝も気持ちいいものですね。って、闘技場に来たはずがなんでこうなってるんですか」

「そりゃあ、ここが闘技場じゃないからだよ。だけど人は様々なものを神様にお供えしてきた。お米お酒のような成果物だけじゃなくて踊りや祈祷なんかの形のない儀式もまた神様に捧げられた。そして戦いもまた同じように神様へのお供えとなる」

 視線の先に社務所らしき建物と闘技場の舞台が見えた。

 見覚えのある舞台だ。

「武器を持たず体一つで戦い、磨いた技を神様に披露する。『奉納相撲』それこそが闘技場の正体だ」

手水舍や参拝を一気に省略しております。

省略している大きな理由としては神社によって拝礼作法が違う場合があるからです。

伊勢神宮では二拝二拍手一拝。出雲大社では一拝祈念二拝四拍手一拝となっています。

事前に作法を確認して、神様へ失礼のないように参拝しましょう。


あれ? 異世界物のはずがなぜこんなことに。

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