第57話 恨み言を言わずにはいられない
12/7第56話のラスト部分を57話とのつながりのため少々修正。一応読まないでも大丈夫なはず。
そして今回の更新も短め。
side シロキ
ギルドとアドとが話している間は俺は蚊帳の外となる。
言葉がいまだ断片的にしか聞き取れないので、しょうがない。
「しかし、薬剤師ギルドが一か所。後二か所か……」
場所の分かっている薬剤師ギルドは他の冒険者たちに任せることになるだろう。
後の二か所の可能性を考えると気が滅入る。
単純にほかにも果物が持ち込まれていただけなら、木の魔物、トレントを探し出して倒せばいいだけだ。幸いこのトレントはそこまで強くはない。種から生まれたてだからか冒険者でもないソーシャさんも無事なのだ。街中に散らばってもアドがいれば早期発見によって大きな被害が出る前に何とかなるはずだ。
だがトレントが発生した原因が持ち込まれた果物じゃなかったら。
「シロキさん! 私たちはあっちです!」
「おう!」
アドは走りながらギルドでの打ち合わせをした内容を話す。
「ギルドに今いた冒険者たちが薬剤師ギルドに。ソーシャさんが他の冒険者を集めてからもう一か所へ行くそうです。私たちが一番遠い場所に行きます」
「何で俺たちが一番遠い場所なんだ?」
「ソーシャさんは匂いで追うつもりなので、すぐに匂いを追える近いほうを選んだみたいです」
「なるほど」
意図は分かった。
方角しかわかっていない現状ではそちらのほうが早いと判断したのだろう。遠ければ遠いほど、アドが指さした方角からズレる可能性が高いしな。
走っていくと次第に建物が減り、開けた場所に出る。
「町外れ? こんな人気のない場所にどうして?」
アドは疑問を挟みつつも目的地まで行き付いた。
「ここです!」
行き付いた先には岩塊が規則的に並んでいた。その岩塊の一部はきれいに削られ、文字が刻まれていた。読めはしないが雰囲気だけでどういった場所かわかる。
「墓地かよ……」
「ですね。でもここにさっきの魔物は見つかりませんね」
「木も枝も見えないな」
「でも近くにいるのは間違いないです。あ、あそこに人がいます。聞いてみましょう」
アドが示す先には確かに三つの人影があった。
「待て!」
その人影がなんであるか悟り、アドを制止する。
「何でですか? 魔物がいるんですからあの人たちが危ないんですよ!」
「なあ、あの木の魔物は果物の種から生まれたんだよな」
「たぶんそうですけど」
アドが一刻も早くという焦りを見せるが、近づく前に言わなくてはならない。
「もし毒で死んだ奴らが種ごと果物を食べていたのなら。……どうなると思う?」
俺の言葉を理解したアドの顔が引きつる。アドの顔がゆっくりと墓地にいる三つの影に向く。それが何か分かったアドは小さく悲鳴を上げる。
「あれ、腐って……」
「先にこっちに来ている日本人を恨まずにはいられないな。火葬を広めといてくれよ……」
火葬さえしていれば、ここに来る必要はなかったはずだ。
三つの影は人の形こそ保っていたが、纏っている服の隙間から見える肉は腐り、骨は欠けていた。代わりに失われた物を補うかのように根が張り巡っていた。
ゾンビ、いや動く死体、動かされる死体か。
「あと、あれだけしかないってこともないだろ。アドがどこにいるかわからないってことも考えると地面の下に同じようなのが間違いなくいるぞ」
こっちの世界にきて一番精神的に厳しい戦いになりそうだ。




