第36話 帰還
6/8修正箇所
サブタイトルの数字を変更しました。
未記入のサブタイトルをつけました。
第16話で、この地域に弱い魔物が多いと言うアドの発言を、弱い魔物がいるという発言に変更しました。
「ゴブリンたちの素材の回収は一通り終わりましたけど、大丈夫ですかシロキさん?」
「おう、ダメなように見えるか?」
「見えます。さっきからピクリとも動かずに倒れてるじゃないですか」
アドの言う通り、俺は陸に打ち上げられた魚のように地面に倒れていた。
ゲロの海に倒れることだけは何とか避けたが、まともに動くこともできずにその近くに転がっていた。
くさい。が、それは置いておく。
ゴブリンたちは戻ってこないようなので、アドにはゴブリンたちの素材回収を頼んでいた。
ゴブリンたちがいるかもしれない場所に長居したくないという気持ちもあるが、俺自身全く動けない状態なのだ。アドにおぶされば、この場を離れることができるかもしれなかったが、揺さぶられて再びリバースすること間違いなしだった。
どうせ俺がこの場を動くことができないのであれば、素材を回収したほうが無駄がない。
もちろん、周囲への警戒がおろそかにならないように注意をしつつ、ではあるが。
アドの危険感知にも引っかからないようだが、今回のような感知できないケースもあるので警戒するににこしたことはなかった。
「よし、行くか」
立ち上がって体調を確認すると万全にはほど遠いものの、何とか村まで歩くこと位はできそうだった。
来た時よりも明らかにスローペースにはなるだろうが。
森を抜けて街道に出たころには日が暮れかかっていた。暗くなることで不安にもなるが、開けた場所に出たことによって魔物の心配もなくなった。
「しかし、なんでまたあんなに増えていたりしたんだ?」
「たぶん、『養殖』してたんだと思います」
「養殖?」
「ええ、意図的に変異種や進化種が発生しやすい状況を作る行為です」
「チンピラたちはゴブリン退治はしていたと言っていたな。実際はゴブリンの変異種以外を狩っていたのか」
「ゴブリンだけ狩るのは実入りが少ないですからね。素材にしろ魔石にしろ、変異種や進化種のほうが売却価格が上がるのでそれで一儲けしようとしていたんでしょうが……」
「?」
「そういった行為はギルドに許可なくやるのは禁止されてます」
「許可があればできるのか」
「そりゃあできますよ。いい素材があればいいものが作れる。村も潤いますから。ですがそれは進化してもどうにでもなると判断された場合に限ります」
「許可でているわけないわな」
ゴコウさんがいればどうにでもなっただろうが、ギルドがたった一人の老人の有無で左右されるような判断をしているとは思えない。
「怠けてるだけじゃなくて違法行為までやっているとは流石に予想できないか」
アドが変異種などに警戒心が薄かった理由もわかった。
まあ、なんにしても。
「早く寝てぇ」
村の明かりが近づくにつれ意識がどこかに削れていった。
☆
気が付くとゴコウさんの家のいつもの布団で目が覚めた。
窓の外からは強い光が差しているので、昼だろうか。
「ようやく目が覚めましたか」
「あー、俺はどこで倒れた?」
村に向かって歩いているところまでは覚えていたが、その後記憶がない。
「え? 冒険者ギルドで机に突っ伏してから一向に起きないんでずいぶん心配したんですよ」
とりあえず、ギルドまでは持っていたようだ。記憶はないが。
「村に戻る途中から全く記憶がない。覚えているのは養殖の話くらいか。そのあとのことを説明してもらえるか」
「いいですけど、ええっと。まず、ギルドに着くと、シロキさんはまっすぐに机に向かって歩いて行って突っ伏しました」
「で、記憶にないのかもしれないですけど、「あとのことは任せる」って言うんで、ギルドへの報告、討伐部位などを提出しました。すごい騒ぎになりましたよ。変異種進化種だけじゃなくてダンジョンゴブリンまで発生していて、しかもそれを討伐したなんて信じられないって」
「そりゃ、俺たち低レベルだったからな」
俺が逆の立場だとしてもレベル10にも満たないの初心者二人が、レベル30に近い魔物を倒したなんて信用しないだろう。
「信じられない。そんな馬鹿なことをいうな。証拠を出してみろ。さんざん言われました。出してやりましたとも、ダンジョンゴブリンの生首を」
「お金にならなない部位だって話なのに苦労して切り落としてたもんな」
「ええ、普通に説明したり、劣化しにくい魔石をもっていっても信用されそうにないので、持って帰ってきて正解でした。一発で黙りましたとも」
「そりゃよかった」
「本当に自分たちで倒したのか疑われてましたけど、事実私たちのレベルは上がっていますし、納得したようです」
「あー、例えばゴコウさんに手伝ってもらったとかそういう可能性を考えたのか」
「でしょうね。とはいえ、倒した事実があり、討伐部位も持って帰ったので報酬はいただけました。がっぽりですよ」
「がっぽりですか」
「しばらくは遊んで暮らせる金額でした。で、よろこんでシロキさんのほうを見てみたら全然反応がなくて、死んでるんじゃないかってくらい青い顔で……」
思い出したのかアドが暗い顔をしてた。
「しかも二日も寝てたんですよ」
「え、そんなに寝てたのか」
翌日の昼くらいかと思っていたが、さらに寝ていたとは。確かに翌日に目覚めなければ心配するわな。「すまん。心配かけた」
「ほんとですよ。次からはいつ起きるか言ってから寝て下さい」
「いや、無理だから」
本気で言っているわけではなく、軽口なのだろう。その証拠に口元が笑っていた。
何があったかは分かったし、俺の体調を確認する。
体を動かすと全身に痛みが走るがこれは筋肉痛だ。
いやだな。まじで筋肉痛は二日後に来るのか。年は取りたくないもんだ。
三十という年に嫌気がさすが、流石に若返ることができるわけないので受け入れるしかない。
とりあえず起きたからには、
「働かんとな」
ゴコウさんの店の薬品はともかく、牛の薬くらいは作らねば。
「いやいやいや、今日一日くらい働かないで寝ててください」
「でも」
「寝ててください!」
「はい」
有無を言わさぬ迫力で黙らされる。
女って強いな。
おばちゃんやおばあちゃんしか話す相手がいなかったから知らなかったわ。
いやおばちゃんたちも強いわ。むしろおばちゃんたちのほうが強い。
……将来ああ、ならなければいいけど。
記憶にあるおばちゃんたちのように成長したアドの姿を想像しかけてしまう。
うん。忘れよう。
アドに言われたようにもう少し横になって、記憶の彼方へと押しやるとしよう。
ブックマーク、評価、感想をもらえることをうれしく思います。
万人受けする作品ではないかと思いますが、楽しんでいただけたらと思っています。
次も一週間以内に投稿したいです。(できるとは言っていない)




