第30話 警戒
無事プチコボルトを制圧することができ、その場は解散することとなった。
俺たちもゴコウさんの家に戻り、眠ることにする。
翌朝、プチコボルトの討伐報酬を受け取った後、職員に説教された。
何かいると分かった時点でギルドに報告しておくべきだったのだろう。
ただ、俺たちはレベル1冒険者。
実際に敵の姿を確認せずに報告に行ってギルドに動いてもらえたかどうか分からない。低レベル冒険者の戯言と処理されてた可能性も高い。
そのことをギルド職員もわかっているので説教自体は短かったのだが。
「にしても、なんでまたプチコボルトが入ってきたんだ?」
村の主戦力のゴコウさんがいなくなったことを敏感に察知したのが一番の理由だというのは俺にもわかる。
ただ、それだけでこんなに早く魔物が村に入ってくるのだろうか。
「この周辺の魔物の間引きが間に合ってないせいで、村の近くまでコボルトたちが近づいていたんだと思います。職員も愚痴をこぼしていました。あとあのチンピラ冒険者たちがこまめにコボルト狩りとかしてると思います?」
この村で唯一見かける冒険者を思い出してみるが、酒を飲んでいたり女に手を出していたりしているだけで、戦っているところはほとんど見たことがない。いや、ゴコウさんにボコられているところと、俺がボコられたことがあったか。
「ギルドはあのチンピラたちに、周辺の魔物を定期的に狩る依頼をしているらしいんですけどどうにもそれをやっていないみたいなんですよ」
弱いが倒しても収入の見込めないゴブリンやコボルトの討伐はなかなか引き受けるものがいない。新米冒険者にはちょうどいい魔物ではあるが、偏狭のこの村には該当する者がいない。
そう行った時ギルドがどうするかといえば、待遇をよくすることでランクの高い冒険者に引き受けてもらうのだという。
この村はそもそも冒険者の数がいないため自動的にチンピラたちになるのだが。
「たぶんお酒と宿を優遇してたんでしょうね。でもサボってたと」
「ダメダメだな」
「大体今回みたいに村に魔物が侵入した時のために冒険者ギルドの宿を貸し出してるはずなんですけど、結局最後まで起きずに寝てたみたいです」
いや、ほんとにダメじゃねえか。
だから昨日来た援軍が村人ばかりで冒険者がいなかったわけだ。
「あの冒険者たちにはペナルティと周辺の魔物を無報酬で討伐するよう厳命されることになるでしょうね」
まあ、あのチンピラたちがどうなろうとしったことではない。
「で、ほかにも何か言われてたんだろ?」
「ええ、魔物の討伐を私たちにも受けてほしいと依頼がありました。どうしても人手が足りないのでゴブリンだけでもとお願いされました」
「ほんとに人手がないんだな」
俺は先ほど更新したギルドカードを見てため息をつく。
レベル1からレベル3に上がっている。ステータスもそれなりに上がっていた。ただし、村人たちのレベルは大体10前後らしいからまだまだ低い。
ゴコウさんにしごかれている分だけ技術的には勝っているかもしれないし、肉体強化の魔法があるから余裕はあるだろう。
ただ職員たちは俺が肉体強化の魔法を使えることを知らないはず。だからこそ本当に猫の手も借りたい状況なのだろう。
アドのほうはもう少し上がってレベル4に上がっていたがそれでも低い。
「不安要素が多いな」
何の危険もなく魔物を狩ることなどできない。一歩街の外に出れば何が起こるか分からないのだ。弱い魔物に奇襲をかけられて怪我をすることだってあるだろうし、本来そこに生息していない高レベルの魔物がいるかもしれない。
そもそも冒険者は魔物を相手にする仕事だ。
危険だなんだといっていられない。
だが、どんな危険でも引き受けるわけがない。
「通常時のゴブリン討伐の依頼はどのくらいが適切なレベルなんだ?」
「3から8くらいと言われています。私は4ですしシロキさんも3ですから問題ないですよ」
「昨日のプチコボルトは?」
「レベル5以上あれば何とかなります。硬いですからいい武器を使ってないとそれなりに力がいります。逆に言えば攻撃さえ通ればなんとかなる魔物です。体当たり強力ですけど溜があるのでよけやすいですからやっぱり対処しやすい魔物ですね」
「ゴブリンがそんなに幅があるのはどうしてだ?」
「ゴブリンは場合によって武器や防具を使うということ、あと群れが大きくなると危険度が増します」
「断りたいな……。ゴコウさんが帰ってくるのを待つのが最善じゃね?」
「いやいや、みんな困ってるんですよ。少しでも力になるために頑張りましょうよ」
「よく考えてみろ。通常時で8くらい。今回は間引きがされてないとすると群れの規模はデカくなってるはずだろ」
「それはそうですけど……」
俺の言い分に、反論する材料を探して口を開こうとするが何も出てこないようだった。
けれど、顔を上げはっきりと俺に告げる。
「それでも……、それでも困っている人がいるなら私は何かしたいです。誰かが解決するのを待っているなんてできません」
決意に満ちた揺らがない瞳だった。
そんな目をできるアドをうらやましく思う。
きっと今の俺にはあんな目はできない。
「わかった。相棒の意見を尊重しよう」
「いいんですか?」
「何かあったら俺も全力でどうにかする。それが相棒ってもんだろ」
この小さな相棒を支えよう。
それくらいなら俺にもできるだろう。
相変わらず、シロキは主人公っぽくないです。




