第21話 遊んでいるわけではない
相変わらず短いです。
酒で肌をきれいにするのはひとまず置いておく。日本酒が万能であっても魔法の薬のようにさっくりきれいになるわけではない。
……あれ? こっちのゴコウさんの薬を使えば治るんじゃね?
気づいてはいけないことに気づいてしまった。
忘れよう。
気を取り直して魔法の練習を続けよう。
手を突っ込んだ酒の形を変えていく。
やはり酒を出すことよりも難しい。
こちらの世界の一般的な魔法使いにとっては、俺の通常の魔法のように魔力量がものをいうということだろう。
普通に魔法を使った場合、複数操作が最も集中力を使う。二つの小さな火球を作るよりも一つの巨大な火球を作るほうが圧倒的に楽である。
魔力の形を精密にすればするほど神経を削る。さらにそれを動かすとなると難易度が跳ね上がる。
ということで、複数かつ精密、さらには動くもの作れば一番の練習になる。
目の前にある酒を動かし俺とアドの前の二つに分割。
さらにその酒の形を変えていく。
「鳥?」
「鶏だな」
なぜ鶏なのか?
「一石二鳥だ」
ただのおやじギャグだよ。
「いや、確かに二羽ですけど意味違いますよね」
さすがにマイナーすぎる酒の単位はわからないようだが、ことわざも鳥の単位もわかるのはすごいな。アドはかなり日本語に堪能なんじゃないか?
まあ、わざわざおやじギャグを説明することもないが、そのうち酒の単位を教えてやろう。それで気づけばそれはそれだ。
しかし、結構リアルにできた。今にも羽ばたきそうな鶏だ。
せっかくなので鶏を羽ばたかせてやろう。魔力を操り羽を動かすが、
「ダメか」
羽がただの酒となって地面に落ちた。翼のない鶏が残る。
ゆっくりと形を変えたり動かすだけならともかく、激しく複雑な動きをさせようとしたため、形を維持することができなくなったようだ。
ゴコウさんに火球を飛ばした時は、複数に分割したものの動きも形も単純だったので維持できたのだが、今回は二匹だけとはいえ、鶏の形を維持したまま、全ての翼を羽ばたかせるという複雑な動きをさせようとしたため、崩れてしまった。
ただ浮かすだけならほとんど意識を割く必要もないんだがな。
攻撃魔法は単純な形をまっすぐ飛ばしてぶち当てるのが一番使いやすい。よく槍の形にして貫通力アップみたいなのがあるが、複雑になればなるほど形が崩れて無駄になる。単純に尖らせるくらいがいいのだろう。
数を増やそうと思えば、形もさらに単純なものにするしかない。
ゴコウさんに火球を飛ばしたのは完全に奇襲以外の何物でもなかったといえる。
やることなすことが空回りしている気がして、ため息が出る。
目の前にいる翼のない鶏を見つめる。
手羽先が食べたくなった。
しかし、こっちには胡椒がない。圧倒的に調味料が足りない。
塩だけとなると手の込んだものよりもシンプルなもののほうがおいしいかもしれない。翼のない鶏を観察して塩でおいしく調理できそうな部位を探してみる。むね肉、もも肉、ささみ、珍しいところでトサカなんかも食べれるらしいな。あとはどこが食べれると、観察していて気づく。卵を忘れて居た。
ゆで卵や卵焼きなら塩だけでも十分おいしく食べることができる。
食欲で行動を決めるのもなんだが、せっかくだから目の前の手羽なし鶏に卵でも産ませてみるのも面白いかもしれない。
産ませるといっても酒の魔法を分離するだけだが。
集中力を高め、酒の鶏に卵を産ませるべく、魔力を操作する。しかし魔力の操作に失敗する。妙にリアルに産ませようとしたのが、敗因だった。
俺の目の前に残る鶏の肛門はえぐれていた。
今度はぽんじりが食べたくなった。
塩で焼こう。
ああ、酒がすすむだろうな。
肉ばっかり食っているような気がする。
そして、なぜ俺は日本酒のステマをしているのか。




