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第20話 日本酒の効能

お待たせしました。

 こちらの世界の朝は早い。というか、こちらの世界は日が沈んで、ほとんど時間を置かずに寝るので、早寝早起きだというだけだが。

 アドとゴコウさんはまだ寝ている。ゴコウさんも日本酒がきいた様で、いつもと違って起きる様子がない。

 うまいうまいと飲みすぎればそうなるのも当然だ。

 二人とも寝ているというのであれば、俺は畑を耕しに行くとしよう。


「なんで私を置いて勝手に畑に行っているんですか! 修行はどうしたんですか!」


 昼近くになって俺が戻るとアドはそんな風に叫び、頭を抱えていた。

 俺の行動に問題があったからというよりも、単なる二日酔いの頭痛によるものだろう。

 こちらの世界では酒に関しての法律は15歳かららしい。正直日本語が通じるアド一人の言葉ゆえに信じるのはどうかとも思うのだが、ほかに確認する方法がないので黙認している。

 個人的には二十歳になっていないアドにはお酒は飲ませたくはないのだが。

 しかし、修行はどうしたというが、起きなかったのはアドだ。すでに昼近いのに寝ている方が悪い。

「これも修行だよ。レベルを上げるだけじゃなくて基礎体力をつけるのも必要だろ。あと起きないお前が悪い」

「う、だってまだ頭痛いんですよ」

「なら、しばらく休んでろ。もう飲みすぎるなよ」

「そうします」

 飲むなとは言わないのは甘いのか、それとも酒を好きになってほしいだけか。俺自身判断がつけがたい。どちらかというと酒飲み仲間がほしいほうが強い気がする。

「しかし、なんでまた畑仕事に行くんですか……」

「畑仕事はいいぞ。訓練になるうえ金になる」

 本来稼げるものではないのだろうが、ゴコウさんの家にお世話になるぶん宿代はいらないし、危険もない。

「ポーターよりはましですね」

 レベルも上がらないうえ、素の筋力を鍛えることができないポーターよりはましなのだろう。

 危険を冒さない冒険者はどうかとも思うが、まだレベル1なのだからしょうがない。

「とりあえず、これから魔法の練習をするがアドはどうする?」

「もう少し休憩してます」

 集中力のない状況で魔法を使っても無駄に魔力を使うだけなので、その判断は正しい。

 アドは放っておいて、自分の鍛練に励むとする。

 火、雷、光、闇と魔力が切れるまで片っ端から使っていく。

 そして酒の魔法を使う。一瞬で1石分ほどの酒を目の前に作り出すことができる。1石とは180リットル。一般家庭の湯船のお湯より多いくらいだろうか。

「ほんとにすごいですね……。うらやましい」

 水の魔力に換算するとどれくらいになるのだろうか。水の魔力のない俺では計ることができない。火や雷の魔法を500くらいはいるんじゃないだろうか。

「酒だから扱いに困るけどな」

「困る?」

「酒じゃなくて水なら、戦闘や生活に使えるんだが、酒だからな」

「使えばいいじゃないですか。昨日だって料理に使ってたし、戦闘にだって水と同じように使えるじゃないですか」

「酒は潤いなんだよ」

「潤い?」

「酒は楽しく飲んで、気分よく過ごすためのものだ。まれにつらいことから逃げるためにも飲んだりもするけどな。人を破滅させるためでも健康を害するためでもない。ましてや傷つけたり殺すための物じゃない」

「そういうものですか」

「そういうもんだ」

 それが俺の矜持といったところか。

「水系の魔法は殺傷能力が低いですから、戦闘で使う人も少ないですしそれでもいいじゃないかと」

「むしろ日常で使う水魔法がうらやましい」

 こちらの世界では日常生活で使う水を自身の魔法で補うことが多い。魔力の適性があれば日常生活で使う水分すべて魔法で賄うこともある。ゴコウさんなんかがそうだ。

 ゴコウさん弱点なくね?

「酒だからな。飲めるが水分補給には向かないし、酒だからいくら出せても風呂に使うこともできないからな」

 水を多く使う風呂に使えれば便利だがそうはいかない。酒風呂とかあるが、あれは酒だけの風呂ではない。普通に沸かした風呂に五合ほど入れるだけだ。酒だけの風呂には入れたものじゃないだろう。

 ……一度は入ってみたいとも思うが。

 酒の魔法とは地味に使いにくいのだ。飲んだり料理に使うのには便利ではあるのだが。

「使えない魔法ですね」

 自分で言うならまだしも人に言われるとムカつくな。

 見返したくなる。何かほかに日本酒の使用方法はなかったか……。

 ああ、いい使い方があった。

 浮かしている酒に手を突っ込む。酒の中で手を動かしてみるが問題なく酒の塊は浮いている。

「アド手を突っ込んでみろ」

「え? お酒ですよね。臭くなるからいやですよ」

「日本酒をバカにするなよ。お肌にいいんだぞ。畑仕事をしている俺の手がつやつやぷにぷになのはこの酒のおかげだ」

「まじですか?」

「大マジだ。日本酒の力を舐めるな。化粧水にだって使えるんだぞ」

「いや、なめてはいないですけど。そんなにすごいんですか」

 胡散臭そうに手を突っ込む。

 小さな手だった。ただ、鍛錬のためか指に豆ができ表面が硬くなっていた。

「毎日続ければ、よくなるだろ」

「ほんとですかね悪くなったら恨みますよ」

 疑い深いやつだ。絶対に治して目にもの見せてやる。 

19話で作られたびしょなべは実際に作ってみました。

鶏肉豚肉日本酒白菜エノキ人参ネギと日本酒を使って見たところ、今一つ。そこにニンニクをすりおろして追加してよくなりました。エノキをシイタケにしたりするともっと良いかもしれません。

そのうち味を保ったレシピに変更するかもしれません。

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